PPT 1.9MB - ヨーロッパ日本語教師会

Report
EAJS SECTION 10: Japanese Language Education:
AJE ヨーロッパ日本語教育シンポジウム
リュブリャナ大学( スロヴェニア)
2014年8月28日
複言語主義に見る言語教育の目的
西山教行(京都大学)
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講演の概要
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自己紹介
国民国家における言語教育
言語教育における目的
多言語主義とは
複言語主義とは
ヨーロッパのなかでの複言語主義
日本語教育への示唆
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講演の概要
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自己紹介
国民国家における言語教育
言語教育における目的
多言語主義とは
複言語主義とは
ヨーロッパのなかでの複言語主義
日本語教育への示唆
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自己紹介
• 学部・大学院において,フランス文学(19世紀,20世紀
詩)を専攻
• フランス語教授法への関心(フランス語非常勤講師)
– どのようにフランス語を教えるか(教授法)
• フランスでの専門研修を経て,フランス語教育学へ転
向(新潟大学)
– 言語政策への関心
– なぜフランス語を教えるか
– 歴史的な考察
• フランス語教育学から,言語教育学へと発展(京都大
学)
– なぜ言語を教えるか
– フランスから,ヨーロッパへの拡がり
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講演の概要
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自己紹介
国民国家における言語教育
言語教育における目的
多言語主義とは
複言語主義とは
ヨーロッパのなかでの複言語主義
日本語教育への示唆
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国民国家における言語教育
• 国民国家:一国家=一民族=一言語
– 実際は,ほぼすべての国家は多言語多民族
– 国民国家の幻想
• 学校は子どもの社会化を究極目的とする
– 社会が構想する市民を養成 (デュルケム)
– (フランス)共和国市民の創出
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国民国家における言語教育
• 言語による国民の創出
• 家庭での母語習得
– 社会化の第一段階
• 国語教育を通じて国民(「日本人」)を創出
• 国語による書記言語の獲得
– 統一された国語
– 支配者の言語規範を国民の規範とする
– 学校言語は教科教育の伝達装置という特殊性を含
む
– 少数者の排除
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国民国家における言語教育
• 歴史教育
– 統治の正統性
• 地理教育
– 誇るべき国土を表象する
• ナショナル・アイデンティティの構築
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国民国家における言語教育
• 外国語教育の位相
– 他者性の志向
– 異質性の承認
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国民国家における言語教育
• 学校は,多様性を促す装置ではない
– 国語,地理,歴史
• 多様性,異質性の排除
• むしろ均質化を促す装置
• 外国語教育を通じて,多様性へ開かれた装
置
• 二律背反にある学校という装置
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講演の概要
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自己紹介
国民国家における言語教育
言語教育における目的
多言語主義とは
複言語主義とは
ヨーロッパのなかでの複言語主義
日本語教育への示唆
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言語教育における目的
• マクロ(上から)
– 国際組織,国,県,地域
• 言語教育政策
• メソ(上から)
– 学校
• 教育方針(カリキュラム)
• ミクロ(上から)
– 教室
• 教育方針(カリキュラム)
• ナノ(下から)
– 個人(生徒)
• ニーズや要望
• 基礎学力?
• 職業能力?
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学習者のニーズや要望に応える?
• 言語教育の目的は学習者のニーズや要望に
応えること?
• 教育はサービス産業?
• 職業教育主義
• 学生消費者主義
13
職業教育主義
• 学校教育の目的を職業準備とする
• 19世紀末にアメリカで生まれた教育イデオロギー
• 現代の知識革命は,仕事の性質を変え,知
識と情報に結びついた職業へシフト
• 「よりハイレベルの」スキルの重要性を拡大
• 労働者は,生涯学習に取り組まねば ならな
い
• 日本ではバブル崩壊以降,大学が社内研修
を代行している?
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学生消費者主義
• 教育は一種のサービス業
• 学生は教育という商品を購入する消費者
• 教育に固有の価値を認めることなく,教育を経済
的価値に交換可能
• 教育機関は学生に迎合し,学生が有用と見なす
ものだけを提供する場
• 知識それ自体は道具化し,職業活動に従属する
• 職業活動に直接の関係のない科目を軽視する
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言語教育における目的
• マクロ(上から)
– 国際組織,国,県,地域
• 言語教育政策
• メソ(上から)
– 学校
• 教育方針(カリキュラム)
• ミクロ(上から)
– 教室
• 教育方針(カリキュラム)
• ナノ(下から)
– 個人(生徒)
• ニーズや要望
• 基礎学力?
• 職業能力?
16
民主主義国家における
学校教育の一般目的
• 優れた教育を与え,学習の成功をはかる
• 学習や知識の発達を進める
• 生徒の人格(アイデンティティ)形成に寄与す
る
• 民主的市民性の発達を促す
• 社会的包摂と結束性を高める
• 社会の発展に寄与する
• (Coste, p. 25)
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欧州評議会による教育目的
• ヨーロッパにおける多様な言語と文化の豊か
さは価値のある共通資源であり、保護され、
発展させるべきものである。また、その多様
性をコミュニケーションの障害物としての存在
から、相互の豊饒と相互理解を生む源へと転
換させるために、主たる教育上の努力が払わ
れ ね ば な ら な い 。 ( Conseil de l’Europe,
Recommandation n. (82) 18)
18
欧州評議会による教育目的
• 異なった母語を話すヨーロッパ人の間のコ
ミュニケーションと相互対話を容易にし、ヨー
ロッパ人の移動、相互理解と協力を推進し、
偏見と差別をなくすことは、ヨーロッパで使わ
れている現代語をよりよく知ることによっての
み 可 能 に な る 。 ( Conseil de l’Europe,
Recommandation n. (82) 18)
19
欧州評議会による教育目的
• 加盟国が現代語の学習と教育の領域で、国
家政策を展開・施行するに当たっては、ヨー
ロッパ全体というレベルでの一致を今まで以
上に目指して、政策の協調、協同が進展する
よ う に 図 ら れ た い 。 ( Conseil de l’Europe,
Recommandation n. (82) 18)
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欧州評議会閣僚委員会による外国語
教育の目的
• 実用目的:
– 外国語学習は、市民の私的および職業上の交流と
意見交換に役立つ
• 異文化間的目的:
– 外国語学習は、ヨーロッパ市民のあいだで偏見をなく
し、お互いへの関心と寛容の精神を育むのに貢献す
る
• 社会政策的目的:
– 外国語学習は、お互いの豊かさの源として言語的、
文化的多様性という豊かな遺産を保護し、持続させ
るのに役立つ(Neuner, 2002, 8-9)
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講演の概要
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自己紹介
国民国家における言語教育
言語教育における目的
多言語主義とは
複言語主義とは
ヨーロッパのなかでの複言語主義
日本語教育への示唆
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多言語主義multilinguismとは
• 多言語状態
– 複数の言語が社会に共存している状態
• 多言語主義
– 社会に複数の言語の共存を進める政策
• 多言語教育
– 複数の言語教育を実施する教育
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多言語主義の目的
• EU(欧州連合)の推進する政策
• 経済面
– 雇用の増大
– 多言語に対応するICTの開発
• 教育面
– 大言語のみならず小言語も学ぶ
– 民主的平等の推進
• 政治面
– 行政サービスの多言語化
– EU市民の平等な政治参加
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講演の概要
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自己紹介
国民国家における言語教育
言語教育における目的
多言語主義とは
複言語主義とは
ヨーロッパのなかでの複言語主義
日本語教育への示唆
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複言語主義plurilinguismeとは
• 欧州評議会がCEFRの中で規定した
– フランスでは1950年代に構想される
• biではない
– bilinguismeの表象する均衡性
• Interでもない
– interlangueの表象する中間性
• pluriの開く世界:多元的,複層的
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複言語主義plurilinguismeとは
•
•
•
•
複言語状態
複言語能力
複数言語教育
複言語主義教育
27
複言語状態
• 個人の中に複数の言語が複層的に混在している状
態
• 社会における多言語の共存との対比
• この場合の「言語」とは,文字化され,標準化されていると
は限らない
• 「言語変種」として,方言や文字化されていない言語も含
む
• 人間はすべて複言語話者
• モノリンガル(単一言語)話者は存在しない
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複言語能力
• 「さまざまなレベルで複数の言語を習得し,さ
まざまなレベルでの複数の文化体験をもつ行
為者が,この言語文化資本を1つのものとし
て運用する能力」(Coste, Moore, Zarate, 1997,
p. 12)
– 複数の言語文化に関わるが1つの能力
– 複層的,複合的,混成的,同質的ではない
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複数言語教育
• (ヨーロッパにおいては)英語だけでは不十分
• 言語文化の多様性の維持
– 生物的多様性との比較
• 民主主義の平等の原理
• 経済的平等
– 英語母語話者が圧倒的に優位
– 母語話者は機会費用(英語を学習せずに,他の
生産に振り向けていた時に発生する利益)が発
生する
30
複言語主義教育
• 言語学習そのものについての学習
– 学習の意義
• 複数言語学習の意義
• 自律学習の学習
– メタ言語学習は動機付けをたかめる
• 異文化間能力の育成
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複言語教育
• 複数言語の教育・学習
• 言語教育に関する教育・学習(複言語主義教
育)
• 多元的アプローチの導入
–
–
–
–
言語への目覚め
隣接言語の相互理解
統合型言語教育
異文化間教育
• 地域語による教育
• CLILL(内容言語統合型学習)
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plurilinguisme
Languages are not simply foreign, regional/
minority or immigrant. And as Cabete says, «
Conceito come PLS (Português Língua Segunda) ou
PLE(Português Língua Estrangeira) revelaram-se,
insufficientes ». What in important then is to
recognize speakers/hablantes que tengam actitud
de intercompréhension and that include and
involve all speakers, whether they are immigrants
or poweful elites. Only then will plurilinguisme
acquire its ultimate potential.
– (A diversidade linguística nas práticas e discursos de
educação e formação, 2014, p. 10)
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多元的アプローチのための参照枠
•
•
•
•
•
CARAP(多元的アプローチのための参照枠)
言語への目覚め
隣接言語の相互理解
統合型言語教育
異文化間教育
– 個別言語の学習ではない
– 個別言語の学習を容易にする
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CARAP
(多元的アプローチのため
の参照枠)
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言語への目覚め活動
• 複数の言語を同時に比較,考察させる
• 言語の機能を考える
• 言語の多様性や他者性への関心を抱かせる
• 複言語教育,異文化間教育により社会化を
進める
• あらゆる言語による社会的包摂をめざす
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隣接言語の相互理解
• 隣接言語の例
– フランス語,スペイン語,イタリア語
• 短い文章を理解する
• 言語を比較する
• 言語の機能を理解する
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統合型言語教育
•
•
•
•
複数の言語を関連づけながら学習を進める
既知の言語から未知の言語を関連づける
学習者の継承語から学校言語へ進む
1つの授業の中で複数の言語に触れる
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異文化間教育(intercultural)
• 個別文化に関する知識ではない
• 複数の文化間の出会いを取り扱う
• 外国語教師は本質的に,異文化間の状態に
ある
– 外国語と学習者の言語文化
• 学習者にステレオタイプへの目覚めを促す
• 学習者に言語文化体験への内省を促す
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異文化間能力(intercultural)とは
• 話し手が,自分の文化に帰属しない他の生き
方や考え方に気づき,理解し,解釈し,受容
することを可能にする知識,スキル,態度,行
動をまとめたもの。(Beacco et Byram, p.114)
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講演の概要
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自己紹介
国民国家における言語教育
言語教育における目的
多言語主義とは
複言語主義とは
ヨーロッパのなかでの複言語主義
日本語教育への示唆
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ヨーロッパのなかでの複言語主義
• 「ヨーロッパ」とは何か
• 「ヨーロッパ人」とは何か
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「ヨーロッパ」とは何か
•
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•
•
•
国民国家:一国家=一民族=一言語
ヨーロッパ=複数国家=複数の言語
国民国家を超える,超領域共同体
ヨーロッパ語は存在しない
英語を唯一の共通語とはしない
多(複)言語を共通語とする
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「ヨーロッパ人」とは何か
• 地理的限定,国境の制約をうけた国民ではな
い
• 多言語(複言語)をヨーロッパ人のアイデン
ティティとする
– ヨーロッパ人のアイデンティティ:母語+2言語を
話す
• 言語教育の目的は「ヨーロッパ市民」の創出
• 国民国家の論理を超える試み
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講演の概要
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自己紹介
国民国家における言語教育
言語教育における目的
多言語主義とは
複言語主義とは
ヨーロッパのなかでの複言語主義
日本語教育への示唆
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日本語教育への示唆
• 日本語教育は実用的か
– 学校教育の基盤?
– 日本文化への関心?
• 日本語教育は異文化間教育に役立つか
– 「内なる外国人」への目覚め?(福島2014)
• 日本語教育は社会政策的意義を持つか
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日本語教育への示唆
• 日本語教育を国民国家の論理から切り離す
– 「日本人を作り出す」日本語教育を超えて
• 学習者のニーズに限定しない教育観
– サービス業としての教育から,人間を養成する教育
へ
• 学習者の母語,習得した言語を考慮に入れた言
語教育
– 統合的な言語教育の可能性
• 日本語と他の言語の関連をはかる言語教育
– 複言語能力の育成
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参考文献
• Byram, M., Zarate, G. & Neuner, G. (1997), La compétence socioculturelle dans
l'apprentissage et l'enseignement des langues vivantes, Strasbourg : Conseil de l'Europe,
124 p.
• Beacco, J.-C. et M. Byram, (2007) De la diversité linguistique à l’éducation plurilingue :
guide pour l’élaboration des politiques linguistiques éducatives en Europe version
intégral.
• Beacco, J.-C.en collaboration avec M. Byram, M. Cavalli, D. Coste, M. Egli Cuenat, F.
Goullier & J. Panthier (2010), Guide pour le développement et la mise en oeuvre de
curriculums pour une éducation plurilingue et interculturelle, Strasbourg : Conseil de
l’Europe, 110 p.
• Coste, D., Moore, D.e, Zarate, G. (1997), Compétence plurilingue et pluriculturelle,
Strasbourg : Conseil de l’Europe, 70 p.
• Coste D. (sous la direction) (2014), Les langues au cœur de l’éducation, Bruxelles : EME,
285 p.
• Neuner, G. (2002) Les politiques à adopter à l'égard de l'anglais, Conseil de l'Europe.
• 福島青史(2014)「「グローバル市民」の「ことば」の教育とは-接続可能な社会と媒体
としての個人-」『「グローバル人材」再考:言語と教育から日本の国際化を考える』くろ
しお出版(近刊)
• 西山教行(2014)「私事化する教育と言語教育の可能性:グローバル人材に欠けるもの
は何か 」『「グローバル人材」再考:言語と教育から日本の国際化を考える』くろしお出
版(近刊)
• 大木 充(2014)「グローバル人材育成政策と大学人の良識」『「グローバル人材」再考:
言語と教育から日本の国際化を考える』くろしお出版(近刊)
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ご清聴ありがとうございました
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