アルコールと 薬物の代謝

Report
アルコールの薬理作用
-酒を飲むと眠れるか、
明るくなれるか、
酒と薬を飲むとどうなるか-
福岡市薬剤師会薬局七隈店
薬剤師 早田 佳生
アルコールの効用
酒は百薬の長
社会生活での効用
 冠婚葬祭や、歓送迎会の際、お酒を仲立ちにしてお互
いのコミュニケーションを図ることができる
 人間関係を円滑に維持するための、大きな役割を果た
している
精神的効用
 楽しい気持ちをさらに増加させる効果
 緊張感を和らげたり対人関係を促す効果
 ストレスを解消させる効果
身体的効用
適量なお酒を適正に
飲んでいる人は
お酒を全く飲まない人や
大量に飲む人に比べて
死亡率が低い
ただし、アルコールに
対する耐性、年齢、
健康状態によって異なる
ので、お酒を飲めば必ず
死亡率が下がるわけでは
ない!
Jカーブ効果
全死亡率:病気だけでなく、事故、
事件を含めたあらゆる原因による
死亡率。「全く飲まない」人を1とし
た場合の各飲酒量ごとの相対的
な死亡率をグラフにした。
(社)アルコール健康医学協会資料より
身体の中での
アルコールの変化
胃・腸
体内に入ったアルコールは
胃や小腸から吸収されます。
胃で約20%吸収
腸で約80%吸収
肝臓
吸収されたアルコールは主
に肝臓でアルコール脱水素
酵素(ADH)、およびアルデヒ
ド脱水素酵素(ALDH)による
代謝を受けて、最終的に二
酸化炭素と水に分解されて
体の外にでていきます
薬
アルコール
アルコールと
薬物の代謝
NADPH
チトクローム
P450
MEOS
ADH
NADP
アセトアルデヒド
代謝物
ALDH
アルコールの代謝(正常時)
水・二酸化炭素
薬物の代謝(正常時)
飲酒時にはアルコールが薬物
の代謝を阻害
尿中へ
お酒の1単位
•ビールは大びん1本(633ml)
•日本酒は1合(180ml)
•ウイスキーはダブル1杯(60ml)
•焼酎0.6合(110ml)
アルコール摂取量の基準
お酒の1単位
お酒の1単位を純アルコールに換算するとほぼ23g前後となります。
(社)アルコール健康医学協会資料より
酔いがさめるまでの時間
同量のアルコールを飲んでも、体重の重い人は、
血液も多いので血中アルコール濃度は低くなります
アルコールの処理能力も体重によって異なります。
(社)アルコール健康医学協会資料より
深夜まで飲んでいると、翌朝起床後まで体内に
アルコールが残り、二日酔いとなってしまいます
血中のアルコール濃度と酒量
血中濃度(%)
爽快期
(~0.05%)
ほろ酔い期
(0.05%~0.15%)
酩酊期
(0.15%~0.3%)
泥酔期
(0.3%~0.4%)
昏睡期
(0.4%~)
酒量
ビール大ビン(~1本)
日本酒(~1合)
ウイスキーシングル (~2杯)
ビール大ビン(1~3本)
日本酒(1~3合)
ウイスキーダブル (2~3杯)
ビール大ビン(3~6本)
日本酒(3~6合)
ウイスキーダブル (3~5杯)
ビール大ビン(7~10本)
日本酒(7合~1升)
ウイスキーボトル (1本)
ビール大ビン(10本以上)
日本酒(1升以上)
ウイスキーボトル(1本以上)
爽快期
(~0.05%)
症状
・爽やかな気分になる
・疲労感が回復する
・食欲が増える
・皮膚が赤くなる
・陽気になる
・判断力が少し鈍る
ビール大ビン(~1本)
日本酒(~1合)
ウイスキーシングル (~2杯)
脳への影響
網様体が麻痺すると、理性をつかさどる
大脳新皮質が低下し、抑えられていた
大脳辺縁系(本能や感情をつかさどる)
の活動が活発になる
(社)アルコール健康医学協会資料より
ほろ酔い期
(0.05%~0.15%)
症状
・ほろ酔い気分になる
・手の動きが活発になる
・視力、聴力が低下する
・判断力が低下する
・理性が失われる
・体温が上がる
・脈が速くなる
・気が大きくなる
・大声でがなりたてる
・おこりっぽくなる
・立てばふらつく
ビール大ビン(1~3本)
日本酒(1~3合)
ウイスキーダブル (2~3杯)
脳への影響
網様体が麻痺すると、
理性をつかさどる大脳新皮質が
低下し、抑えられていた大脳辺縁系
(本能や感情をつかさどる)の活動が
活発になる
(社)アルコール健康医学協会資料より
酩酊期
(0.15%~0.3%)
ビール大ビン(3~6本)
日本酒(3~6合)
ウイスキーダブル (3~5杯)
症状
脳への影響
・千鳥足になる
小脳まで麻痺が広がると、
・何度も同じ事を喋る 運動失調(千鳥足)状態にな
・呼吸が速くなる
る。
・吐き気、
おう吐が起きる
(社)アルコール健康医学協会資料より
泥酔期
(0.3%~0.4%)
症状
・まともに立てない
・意識が
はっきりしない
・言語が
めちゃくちゃになる
(ろれつが回らない)
ビール大ビン(7~10本)
日本酒(7合~1升)
ウイスキーボトル (1本)
脳への影響
海馬(記憶の中枢)が麻痺
すると、今やっていること、
起きていることを記憶できな
い(ブラックアウト)状態にな
る。
(社)アルコール健康医学協会資料より
昏睡期
(0.4%~)
症状
・ゆり動かしても
起きない
(意識不明)
・大小便失禁
・呼吸はゆっくりと
深い
・呼吸中枢の麻痺
(死亡)
ビール大ビン(10本以上)
日本酒(1升以上)
ウイスキーボトル(1本以上)
脳への影響
麻痺が脳全体に広がると、
呼吸中枢(延髄)も危ない
状態となり、死にいたる。
(社)アルコール健康医学協会資料より
日本人の約半分はお酒に弱い
アセト
アルデヒド
ALDH
分解する酵素
日本人の約40%の人が
ALDH2の働きが弱い
「低活性型」
①低濃度の時に働く
ALDH2
②高濃度にならないと
働かない ALDH1
お酒に弱い
日本人の約4%の人が
ALDH2の働きが全くない
「不活性型」
ALDH2
お酒が飲めない
(社)アルコール健康医学協会資料より
薬
アルコール
アルコールと
薬物の代謝
NADPH
チトクローム
P450
MEOS
ADH
NADP
アセトアルデヒド
代謝物
ALDH
アルコールの代謝(正常時)
水・二酸化炭素
薬物の代謝(正常時)
飲酒時にはアルコールが薬物
の代謝を阻害
尿中へ
お酒を飲んではいけない人
未成年(20才未満)
成長期の飲酒は、心の問題だけでなく、脳、肝、生殖器
などに大きなダメージを与える
未成年者の飲酒は法律で禁止されている
妊娠中・授乳中
少量のアルコールでも、おなかの赤ちゃんの発達が
さまたげられ、低体重児や早産の危険がある
授乳中のお母さんがアルコールを飲むと、お乳に出て
しまう
運転をする人
自分では酔っていないつもりでも、視力や反射神経が
低下している
法律にも違反する
お酒を飲んではいけない時
スポーツをする時
海岸でビールを飲んで泳ぐと、心臓マヒやバランス感覚
のマヒにより溺れることがある
飲酒後のスキーは、他人も危険に巻き込むことがある
入浴前
酔ってお風呂に入ると、心臓に負担がかかる
水深50センチでおぼれてしまうこともある
薬を飲んでいる時
薬とアルコールを一緒に飲むと、
薬の作用がなくなったり、逆に強く表れたりする
胃を荒らしたりする
ひどい場合には昏睡状態におちいることもある
薬
アルコール
アルコールと
薬物の代謝
NADPH
チトクローム
P450
MEOS
ADH
NADP
アセトアルデヒド
代謝物
ALDH
アルコールの代謝(正常時)
水・二酸化炭素
薬物の代謝(正常時)
飲酒時にはアルコールが薬物
の代謝を阻害
尿中へ
アルコールと薬の相互作用
大きく分けると3つあります
① アルコールと薬の作用が、重なり合って
薬の効果や副作用が、増強される場合
② アルコールが、薬の分解速度を変えて、
薬の効果に影響を与える場合
③ 薬が、アルコールの分解に影響を及ぼす
場合(②と逆の場合)
① アルコールと薬の作用が、重なり合って
薬の効果や副作用が、増強される場合
・睡眠薬
・抗不安薬
・抗うつ薬
・抗てんかん薬
・鎮痛薬
・抗ヒスタミン薬
・高血圧薬
立ち眩み、起立性低血圧
・糖尿病薬
低血糖となり意識消失
(低血糖昏睡)
眠気、精神運動機能低下、
前向性健忘(就寝前後の出来事を忘れる)、
意識障害、奇異行動、呼吸抑制
② アルコールが、薬の代謝(分解)速度を
変えて薬の効果に影響を与える場合
・抗うつ薬
精神の錯乱、幻覚、手の震え、食欲不振
・糖尿病薬
低血糖となり意識消失(低血糖昏睡)
・血液が固まるのを防ぐ薬
血が止まらなくなる、脳出血を起こす、
胃や腸からの出血が起こす、吐血や下血を起こす
③ 薬が、アルコールの代謝(分解)に
影響を及ぼす場合
・セフェム系の抗生物質
・糖尿病薬
アルコールの分解速度が落ち、体内に
アセトアルデヒドが増えるため、ジスルフィラム症候群
(頭痛、めまい、吐き気など)が現れる
・胃薬(H2ブロッカー)
血液中のアルコール濃度を上げてしまい、
酔いが強くなる
最後に
アルコールとは脳に作用する薬物の一つで、
安全域の狭い薬と考えられる
日本人の約半分はお酒に弱い
お酒は上手に飲めば「百薬の長」、
しかし飲み過ぎると「万病の元」
お酒を飲んではいけない時がある
アルコールと薬を一緒に飲むと様々な
危険がある
ご清聴ありがとうございました
お酒と胃酸分泌との関係
主なアルコール飲料とアルコール量
アルコール飲料の純アルコール量
ビール
清酒
ウイスキー
ブランデー
焼酎
(35度)
(ダブル60mL) (1合180mL)
ワイン
酒の種類
中ビン
缶
500mL 350mL
(1合180mL)
アルコール度数
5%
15%
43%
35%
12%
純アルコール量
20g 14g
22g
21g
50g
12g 72g
1杯
1本
120mL 750mL
注)清酒(アルコール度数15%)を1合(180mL)飲んだ場合、27mLの純アルコールを摂取
したことになる。アルコール重量(g)は比重(0.8)をかけて27mL×0.8=21.6g(約22g)と
なる。「健康日本21」 では、「適正飲酒」を1日平均1合 、「多量飲酒者」を毎日3合
以上(純アルコールとして約66g)としている
。(健康日本21資料より一部改変)

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