METsは? - 日本麻酔科学会

Report
循環器疾患患者の術前評価は?
島根大学麻酔科学教室
豊田浩作
症例
80歳 女性
診断:早期胃癌
予定術式:腹腔鏡補助下胃切除術
既往歴: 高血圧 以前検診で心不全といわれた
内服薬:β遮断薬、バイアスピリン
心血管リスクの術前評価は?
まずは問診で客観的評価を
80歳 女性
既往歴: 高血圧 以前検診で心不全といわれた
内服薬:β遮断薬、バイアスピリン
問診: 家の中は歩いている。階段は2階までなら。
掃除はぼちぼち。床拭きは息が切れる。
近所のスーパーには毎日行っています。
ゲートボールが好きだけど、ちょっと疲れます。
庭の手入れも大変。休み休みですわ。
METsは? NYHA は?
NYHA分類
( New York Heart Association)
I : 心疾患はあるが身体活動を制限する必要はない。
日常生活で疲労・動悸・呼吸困難・狭心症症状などを来さない。
II : 心疾患があり、軽度の身体活動制限が必要。安静時には無症状で
あるが、日常生活活動で疲労・動悸・呼吸困難・狭心症症状などが起きる。
III: 心疾患があり、中等度ないし高度の身体活動制限が必要。わずかな
日常生活活動でも疲労・動悸・呼吸困難・狭心症症状などが起きる。
IV: 心疾患があり、安静にしていても心不全症状や狭心症症状を呈する。
わずかな生活活動でも症状が増悪する。
METs
(Metabolic equivalents:運動強度)
安静にしている
食事や洗顔をする
家の中を歩く
階段を登れる
草むしりをする
ジョギング
キックボクシング
→
1 MET
1.5 METs
2 METs
3 METs
3 METs
6 METs
10 METs
METs
(Metabolic equivalents:運動強度)
1MET
4METs
10 METs以上
身の回りのことができる
食事、着衣、トイレが可能
室内歩行可能
平地を4km/h程度で1-2ブロック歩ける
拭き掃除、食器洗いなどの軽い家事ができる
階段や坂を登れる
平地を急ぎ足(6~7km/h)で歩ける
短い距離を走れる
床拭き、重い家具を動かす
ゴルフ、ボーリング、ダンスなどのレクリエーション
水泳、サッカー、スキーなどの激しいスポーツ
非心臓手術における心臓リスク管理のアルゴリズム
(Step1~4)
yes
Step1 緊急が必要な非心臓手術か?
手術へ (周術期の厳重な監視
術後リスクに対する処置)
No
Step2 重度心疾患があるか?
yes
ACC/AHAガイドラインに
沿った評価と治療
No
yes
Step3
低リスク手術
手術を考慮
予定手術へ
No
yes
Step4
症状がなく4METs以上の
運動耐容能あり
No あるいは不明
Step5に進む
予定手術へ
ACC/AHA guideline 2007より
非心臓手術における心臓リスク管理のアルゴリズム
(Step 5)
症状がなく4METs以上の
運動耐容能あり
Step5
No あるいは不明
3項目以上の
臨床的リスク因子
1-2項目の
臨床的リスク因子
臨床的リスク因子なし
予定手術へ
血管手術
中等度リスク手術
管理方針が変わる可能性が
ある場合は検査を考慮
血管手術
中等度リスク手術
心拍数をコントロールして手術、
あるいは管理方針が変わる可能性が
ある場合非侵襲検査を考慮
ACC/AHA guideline 2007より
患者側の心血管合併症リスク因子
重度心疾患 :
不安定もしくは重症の狭心症
最近に起きた心筋梗塞
非代償性心不全 (NYHAⅣ)
重度の不整脈
重度の弁膜症
臨床的リスク因子 : 虚血性心疾患の既往
代償性心不全 あるいは心不全の既往
脳血管障害の既往
糖尿病
腎不全
ACC/AHA guideline 2007より
手術の種類による
心血管合併症のリスク分類
高リスク手術
: 大動脈 もしくは他の大血管手術
末梢血管手術
中等度リスク手術 : 腹腔内・胸腔内手術、頸動脈内膜剥離術
頭頸部手術、整形外科手術、前立腺手術
低リスク手術
: 内視鏡手術、体表面手術、白内障手術
乳房手術、外来手術
ACC/AHA guideline 2007より
高血圧の重症度分類とリスク
(mmHg)
Ⅲ度高血圧
正常高値
血圧
Ⅰ度
高血圧
Ⅱ度
高血圧
Ⅲ度
高血圧
危険因子なし
付加リスク
なし
低リスク
中等度
リスク
高リスク
糖尿病以外の
危険因子あり
中等度
リスク
中等度
リスク
高リスク
高リスク
糖尿病
臓器障害
心血管病の
いずれか
高リスク
高リスク
高リスク
高リスク
180
Ⅱ度高血圧
収縮期血圧
160
Ⅰ度高血圧
140
正常高値血圧
130
正常血圧
120
至適血圧
80 85 90
拡張期血圧
100 110
(mmHg)
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」より
正常症例、高血圧症例の麻酔経過
高血圧症例は周術期の血圧変動が激しい
高血圧の脳血流自己調節能
正常血圧者(若年)
正常血圧者(老年)
(%)
100
正常
乏血
50
虚血
梗塞
脳卒中を伴う高血圧患者
高血圧患者
(重症、老年)
0
50
100
平均血圧(mmHg)
150
200
手術当日の降圧薬服用に関する推奨
降圧薬の種類
オペ当日朝の内服
継続による影響
βブロッカー
継続
心事象リスク軽減
Caブロッカー
継続
心事象リスク軽減
ACE阻害薬、ARB
中止
術中低血圧
利尿薬
中止
低カリウム血症、不整脈
Evidence-Based Practice of Anesthesiology 2nd Editionより
周術期βブロッカー投与と予後
心リスクのある非心臓手術患者に対し、βブロッカー(アテノロール)を
周術期投与し術後の生存率を追跡調査
プラセボ群
(n = 101)
アテノロール群
(n = 99)
P Value
6ヵ月生存率
92%
100%
0.001
1年生存率
86%
97%
0.005
2年生存率
79%
90%
0.019
N Engl J Med 335:1713-20, 1996
ただし、低リスク患者にβブロッカー投与を行うべきかは疑問
低血圧、徐脈、虚血性脳卒中のリスクが懸念される(POISEトライアル)
Lancet. 371:1839-47,2008
高血圧患者での術前血圧コントロール
• 高血圧症例は周術期の循環変動が大
→ 周術期心事象リスクが高い
• 術前血圧は可能な限り術前コントロールを
• 術当日の投薬は麻酔科と相談
→ 特にACE阻害薬、ARB投与例は要注意
(周術期低血圧を頻繁に起こすため)
心筋虚血:心筋酸素需給のアンバランス
酸素供給量低下
冠血流量↓
心拍数↑
冠灌流圧↓
冠血管抵抗↑
酸素運搬能↓
酸素飽和度↓
Hb濃度↓
PaO2 ↓
酸素消費量増加
心拍数↑
心収縮力(心筋張力)↑
前負荷↑
(静脈還流量↑ )
後負荷↑
(末梢血管抵抗↑ )
虚血性心疾患患者への
術前冠動脈再建術(PCI)は?
・状態の安定した非心臓手術予定患者への予防的な
術前冠動脈再建術は推奨されない
ECGに虚血性疾患を疑わせる所見あるが全身状態が安定している。
→多くの場合は術前冠血行再建の意義はなし
「手術を無事乗り越えるため」だけのPCIは不要
ACC/AHA guideline 2007より
DES: Drug Eluting Stent
(薬剤溶出性ステント)
従来のBMS( Bare Metal Stent)に
免疫抑制剤を塗りこんで
ステント内狭窄の発生率を減少
→ 遅発性ステント内血栓症を誘発する恐れあり、
長期間にわたり抗血小板薬内服が必要
チクロピジンンorクロピドグレルとバイアスピリン
(チクロピジンorクロピドグレルは最低1年)
術前PCI施行の際のフローチャート
バルーン血管形成術
(Baloon angioplasty)
<14日
>14日
ベアメタルステント
(BMS)
>30~45日
<30~45日
薬剤溶出性ステント
(DES)
<365日
予定手術あるいは
予定手術あるいは
非緊急手術は延期
非緊急手術は延期
>365日
アスピリン内服継続で
アスピリン内服継続で
手術施行へ
手術施行へ
ACC/AHA guideline 2007より
術前に虚血性心疾患のある
症例での推奨
• 術前PCIは、急性冠症候群と心不全症例が対象
→ 「手術を乗り切るための予防的PCI」は No!
• PCI施行症例は、手術時期を考慮する
→ 抗血小板薬休薬によるRisk- Benefit
抗血小板薬、抗凝固薬の休薬期間
(硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔施行予定症例)
一般名
商品名
不可逆的阻害作用
休止時期
チクロピジン
クロピドグレル
パナルジン
プラビックス
○
○
10~14日前
14日前
アスピリン
バファリン
○
7日前
イコサペント酸エチル
シロスタゾール
エパデール
プレタール
○
7日前
3日前
ジピリダモール
ペルサンチン
2日前
オザグレル
サルボクレラート
ベラプロスト
イフェンプロジル
トラピジル
ニセルゴリン
イプジラスト
PGE1
NSAIDs
キサンボン
アンプラーグ
ドルナー
セロクラール
ロコナール
サアミオン
ケタス
オパルモン
2日前
2日前
2日前
2日前
2日前
2日前
2日前
1日前
1日前
ワルファリン
ワーファリン
下記
ワルファリンは72時間以上前に中止してへパリンに切り替え、入室6時間前にへパリン中止して入室前に凝固系再検
術前に注意を要する不整脈と その原因となりやすい関連疾患
1. 心室性不整脈
多源性心室性期外収縮、Short-run型心室性期外収縮
R on T型心室性期外収縮
2. 心室性頻拍
3. 心房性不整脈
心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍
4. 房室ブロック
I度房室ブロック
II度房室ブロック(Wenckebach型、 MobitzII型)
III度(完全)房室ブロック
5. その他の不整脈
脚ブロック、 QT延長症候群、WPW症候群、 Brugada 症候群
洞不全症候群(Sick Sinus Syndrome)
・ 洞不全症候群、房室ブロック(特にMobitzII型、III度) ← 冠動脈疾患
・ 心室性期外性収縮(多源性、連発) ← 冠動脈疾患、陳旧性心筋梗塞
・ 心室期外収縮
← 心筋症、左室肥大や拡張(弁膜疾患)
・ 心房細動
← 左室拡張機能障害、弁膜疾患

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