国連グローバル・コンパクト

Report
サプライチェーンの
持続可能性
継続的改善のための実践的ガイド
国連グローバル・コンパクト
ii サプライチェーンの持続可能性
2000年に開始した国連グローバル・コンパクトは、企業が持続可能性と責任ある行動にコミットするための
政策の基盤となるものであり、実践的な枠組みとなるものである。国連グローバル・コンパクトは、マルチ・ス
テークホルダーによるリーダーシップ・イニシアティブとして、企業の業務と戦略を、人権、労働、環境及び腐
敗防止の分野で国際的に認められた10原則に一致させることで、より幅広い国連の目標をサポートする行
動を起こすことを促そうとするものである。国連グローバル・コンパクトは、135カ国以上において8,000団体
以上の署名者を得た、世界最大の自発的な企業の責任イニシアティブである。
http://www.unglobalcompact.org
1992年以来、CSRのリーダーであるBSR(Business for Social Responsibility)は、コンサルティング、研究及び
異なる分野間における協働を通じて、持続可能なビジネス戦略を開発するために、250以上の加盟企業の
世界的なネットワークと協働している。BSRは、アジア、ヨーロッパと北アメリカに6つのオフィスを有しており、
グローバル企業を公正で持続可能な世界の構築に向けて導くために、環境、人権、経済発展とガバナンス
及びアカウンタビリティ(説明責任)についての専門知識を駆使して取り組んでいる。http://www.bsr.org
断り書き
この出版物にある企業の事例は、学習を目的としており、個々の企業を推薦するものではない。
著作権
この出版物の内容は著作権で保護されている。
国連グローバル・コンパクトは、教育的な目的のためにこの内容の普及を奨励する。
この出版物の内容は、国連グローバル・コンパクトとBSRに明瞭に帰属するものであり、非営利目的に限
定されるのであれば、事前の許可なしで自由に使っても構わない。
Ⓒ 2010、国連グローバル・コンパクト・オフィスとBSR
このガイドは、コディ・シスコ(Cody Sisco) 、ブライズ・チョーン(Blythe Chorn)とペーデル・マイケル・プルーザ
ン-ヨーゲンセン(Peder Michael Pruzan-Jorgensen)が、セシリー・ハルトマン(Cecilie Hultmann) 、国連グロー
バル・コンパクト・オフィスのスタッフ、BSRスタッフと5ページのリストにある国連グローバル・コンパクト諮問グ
ループメンバーからの重要な編集上の意見を得て執筆したものである。
デザイナー:メガン・ラーソン(Megan Larson)
グローバル・コンパクト・オフィスとBSRは、このガイダンスの作成のための下記の組織による多大な支援に
対して感謝する。
【邦訳注】
本邦訳は、国連グローバル・コンパクト・オフィスの許可を得て環境経営学会サプライチェーン・マネジメント
研究委員会が作成したものである。原文(英文)をできる限り正確に訳したが、日本語として理解しやすいよう
意訳したところもある。このため、本ガイドを適用するに当たっては、原文を参照していただきたい。
環境経営学会サプライチェーン・マネジメント研究委員会
邦訳者:宮崎正浩(第1章、第8章)、岡本享二(第2章)、後藤敏彦(第3章)、坂本有希(第4章)、籾井まり(第5
章)、九里徳泰(第6章)、宮本武(第7章)、
上記全員と、川村雅彦、鶴田佳史、菱山隆二、松田陽子、村上亘で全文レビューを行った。
1
目次
序文
ジョージ・ケル、国連グローバル・コンパクト・オフィス エグゼクティブ・ディレクター
アロン・クレイマー、 BSR 理事長兼CEO
2
要約
サプライチェーンの持続可能性への実践的なステップ
5
第1章 序章
7
第2章 サプライチェーンの持続可能性に取り組むにあたって
ビジネスとして取り組むことの意義を明らかにすること
外部景観を理解すること
ビジョンを確立すること
13
第3章 サプライチェーンにおける持続可能性の期待事項を明確にすること
行動規範の概要
行動規範を採用若しくは規定すること
行動規範を使用すること
21
第4章 適用範囲を決める
サプライチェーンのマッピング
サプライチェーンの細分化
25
第5章 サプライヤーとの関係構築
コミュニケーションの方法選択
モニタリングと監査
是正とサプライヤーのキャパシティ・ビルディング
33
第6章 役割と責任の決定
組織内部での連携
ガバナンスと監督:経営幹部によるリーダーシップと取締役会
ビジネス・マネジャー間の部門横断的調整
調達専門担当者による実行
43
第7章 産業界の協働とマルチ・ステークホルダー・パートナーシッップ
産業界の協働の意味するところ
産業界における協働に関する機会とリスク
マルチ・ステークホルダーとのパートナーシッップ
51
第8章 目標設定・パフォーマンス監視・情報発信
目標設定のプロセス
影響に関する目標
サプライヤーのパフォーマンスに関する目標
内部のパフォーマンスに関する目標
測定のプロセスと実施
進展を伝えて報告すること
59
謝辞
64
2 サプライチェーンの持続可能性
序文
責任あるビジネス行動へのコミットメントをバリューチェーン(子会社からサプライ
ヤー)へ拡大する企業が益々増えてきている。そうするのは、サプライチェーンに潜ん
でいる固有の社会的・環境的リスクとガバナンスの課題のためだけでなく、サプライ
チェーンの持続可能性がもたらす多くの報酬があるためである。実際のところ、持続
可能なサプライチェーン・マネジメントは、企業と社会のための価値と成功を強力に推
進する。サプライチェーン・マネジメントは、良好なビジネス行動を世界中に普及させ
ることを通して、より広く受け入れられる市場(inclusive market)形成に貢献し、国連の
使命の精神に従って持続可能な開発(sustainable development)を進めるための非常
に大きな潜在力を持っている。
今日、世界中の国連グローバル・コンパクトの参加者は、10原則をサプライチェーン
に適用することによってリーダーシップを発揮している。しかし、グローバル・コンパク
トの4分野(人権、労働、環境、腐敗防止)のすべてを包含するサプライチェーン・プロ
グラムを作成することは、多くの企業にとっては気が遠くなるような課題である。
「サプライチェーンの持続可能性:継続的改善のための実践ガイド」は、BSRとの協
働で作成したものであり、国連グローバル・コンパクトの価値と原則に基づき持続可
能なサプライチェーン・プログラムをいかに作成するかについて実際的なガイドを提供
することによって、企業がこれらの課題を克服することを手助けするものである。この
ガイドは、多数の企業のグッド・プラクティスを特徴づけており、企業が継続的なパ
フォーマンスの改善をもたらす行動の優先事項を決定する際に役立つ。
我々は、この出版物によって、より多くの企業がより持続可能なサプライチェーンに
向けて取り組みを始めることを奨励し、それによって目に見える永続的な便益があら
ゆる場所における企業、環境及び社会にもたらされることを期待している。
ジョージ・ケル(Georg Kell)
国連グローバル・コンパクト・オフィス
エグゼクティブ・ディレクター
3
グローバル・コンパクトの10原則が10周年を迎え、原則を現実のものとするために
は21世紀における地球規模のビジネスを定義するともいえるサプライチェーンにお
ける協働が必要であることが、これまで以上に明らかとなった。多くの企業が環境と
社会に与える最大の影響は、そのサプライチェーンにおいて起きており、それらの
ネットワークがこの25年間で規模と複雑さを増していくにつれ、 企業が人権を促進し、
労働環境を改善し、環境を保護し、倫理的なビジネス行動を支援する機会もまた増
えている。購入者とサプライヤーが協働することで、企業行動の基本となる基準が
遵守されるだけではなく、ビジネスが世界中の社会や環境に与える影響を改善する
ことができる。
BSRは、企業が地球規模のサプライチェーンに国連グローバル・コンパクトの10原
則を適用することを奨励した記念の日に、このガイドを作成できたことを誇りに思う。
BSRは、ガイド作成において広範なサプライチェーンを通じて公正な労働条件と良好
な環境保全行動を統合する方法に関する幅広い知見を提供した。加盟企業及びそ
のサプライチェーンの地球規模でのネットワークとの協働のもと、我々は世界30か
国以上で、多くの産業分野におけるサプライチェーンに、環境・社会・ガバナンスの
原則を組み込むべく作業した。世界中の国連グローバル・コンパクトの署名者の広
範なネットワークに参加することは、グローバル・コンパクトの影響力を高める大きな
機会となっている。
我々はこのガイドが、以下によって、すべての産業、地域と細分化した市場におい
て公正で持続可能な労働条件を高めるためのきっかけとしての役割を果たすことを
希望する。
・ 持続可能性を中小企業において浸透させること
・重要な社会環境課題に関し、開発途上国の企業とのよりよい関係を生み出すこと
・良好に機能する市場の重要な柱として、良好なガバナンスと企業倫理を支援する
こと
このガイドは、企業がサプライチェーンの持続可能性への取り組みを開始し、それ
を進めるのを支援することを目的としているが、持続可能性の影響を広め、共同して
行動するためにも用いられることを願う。BSRは、グローバル・コンパクトと協働でき
たことを大変誇りに思い、また、グローバル・コンパクトのビジョンがより現実のもの
となるよう、今後もグローバル・コンパクトと世界中の署名企業を支援していく所存で
ある。
アーロン・クラマー(Aron Cramer)
BSR
理事長兼CEO
4 サプライチェーンの持続可能性
サプライチェーンの持続可能性に関する
国連グローバル・コンパクト諮問グループ
グローバル・コンパクト・オフィスは、グローバル・コンパクトの参加者とステークホルダーによる諮問グループ
を設置した。諮問グループの役割は、サプライチェーンの持続可能性の問題に関する全体的な戦略とグロー
バル・コンパクト・オフィスが行った作業に対し、意見を提出し、作成された指針の内容が堅牢で、ビジネスの
ニーズを考慮したものとなるようにすることである。
グローバル・コンパクトの理事会メンバーである、マッズ・オブリーセン氏が諮問グループの議長を務めた。こ
のガイド作成作業への支援を惜しまなかったオブリーセン氏と諮問グループのすべてのメンバー(下記)に対し、
感謝の意を表したい。
■Mr. Michael Wilhelmer, Manager, Global Procurement Services, ArcelorMittal (Luxembourg)
■Mr. Cody Sisco, Manager, Advisory Services, Business for Social Responsibility (Global)
■Mr. Gustavo Perez Berlanga, Senior Vice President - CSR and Toks University, Cafeterias Toks S.A.
de C.V, (Mexico)
■Mr. Juan Antonio Espinosa, Procurement Director, Planning & Control, CEMEX (Mexico)
■Mr. Brian Glazebrook, Senior Manager - Value Chain Social Responsibility, Cisco Systems (USA)
■Dr. Bente Pretlove, Corporate Advisor - CSR & Sustainable Development, Det Norske Veritas (Norway)
■Ms. Vimal L Kumar, Head - Corporate Responsibility, DiGi Telecommunications Sdn Bhd (Malaysia)
■Ms. Tammy Rodriguez, Director of Corporate Responsibility, Esquel Group of Companies (China)
■Ms. Monique Oxender, Global Manager - Supply Chain Sustainability, Ford Motor Company (USA)
■Ms. Isabel Garro Hernandez, Executive Director, Global Compact Local Network Spain (Spain)
■Ms. Claudine Musitelli, Director, Global Social Compliance Program (GSCP) (Global)
■Mr. Paolo Pompilio, Diretor de Relacoes Corporativas e RSA, Grupo Pao de Acucar - Companhia
Brasileira de Distribuicao (Brazil)
■Ms. Zoe McMahon, Supply Chain Social and Environmental Responsibility Manager, Hewlett-Pack
ard (USA)
■Mr. Brian Larnerd, Senior Manager Corporate Social Responsibility & Chief Executive for the
Americas Office, Hitachi, Ltd. (Japan)
■ Dr. In-mo Cheong, General Manager Environment Strategy Planning, Huyndai Motor Company
(Republic of Korea)
■Mr. Greg Priest, Head of IWAY Compliance and Monitoring, IKEA (Sweden)
■Mr. Javier Chercoles Blazquez, CSR Global Director, Inditex, Industrias de Diseno Textil, S.A. (Spain)
■Mr. Sandeep Dadlani, Vice President - Retail, CPG & Logistics, Infosys Technologies Ltd (India)
■Ms. Trude Andersen, Head of CSR, Innovation Norway (Norway)
■Mr. Robert Jenkins, CEO, Integrated Contract and Supply Solutions - ISCS (United Arab Emirates)
■Mr. Jan-Willem Scheijgrond, Senior Director - Health, Safety and Environment, Koninklijke Philips
Electronics N.V. (Netherlands)
■Ms. Beroz Gazdar, Vice President - Infrastructure Development Sector, Mahindra & Mahindra
Limited (India)
■Ms. Hilary Parsons, Public Affairs Manager, Supply Chain, Nestle S.A. (Switzerland)
■Mr. Mika Kiiskinen, Senior Manager, Social & Ethical Issues Management, Nokia Corporation (Finland)
■ Dr. Marcia Balisciano Director, Corporate Responsibility, Reed Elsevier Group plc (UK)
■Ms. Eileen Kaufman, Executive Director, Social Accountability International (SAI) (Global)
■Ms. Rachelle Jackson Director, Research & Development, STR Responsible Sourcing (USA)
■Mr. Koichi Kaneda, Senior Manager, CSR and Corporate Branding, Takeda Pharmaceutical Company
Limited (Japan)
■Mr. Anant Nadkarni, Vice President - Group Corporate Sustainability, Tata Council for Community
Initiatives (TCCI) (India)
■Mr. Stein Hansen, Senior Vice President, Business Assurance, Telenor Group (Norway)
■Mr. Alexander Seidler, Director, UBS AG (Switzerland)
■Mr. Willem-Jan Laan, Director Global External Affairs, Unilever (UK)
■ Dr. Gerhard Pratorius, Head of Coordination CSR and Sustainability, Volkswagen AG (Germany)
5
要約:
サプライチェーンの持続可能性への実践的なステップ
サプライチェーンの持続可能性は、企業の責
任の重要な構成要素として益々認識されるよう
になっている。サプライチェーンの社会的・環境
的・経済的な影響を管理し、腐敗を防止すること
は、正しいことであると同時に、経営上理にかな
う事である。しかし、サプライチェーンは、常に進
化し続ける市場と様々な関係性で構成されるも
のである。この複雑な領域をうまく切り抜けるた
め、我々は、サプライチェーンの持続可能性に
向けて作業するための基礎として国連グローバ
ル・コンパクトの原則を用いつつ、基礎となる定
義や、企業が前進のために講じうる実践的なス
テップを提供する。
サプライチェーンの持続可能性とは何
か?
サプライチェーンの持続可能性とは、製品と
サービスのライフサイクルを通じて、環境的・社
会的・経済的影響を管理することであり、良好な
ガバナンスの実行を奨励することである。サプラ
イチェーンの持続可能性の目的は、製品とサー
ビスの市場化に関与するすべてのステークホル
ダーにとっての長期的な環境的・社会的・経済
的の価値を創造し、保護し、高めることである。
国連グローバル・コンパクトの原則をサプライ
チェーンの関係性に統合することによって、企業
は企業としての持続可能性を高め、より広い持
続可能な開発の目的を促進することができる。
なぜ、サプライチェーンの持続可能性が
重要なのか?
企業がサプライチェーンの持続可能性の探求
を始めるには、数多くの理由がある。そのうちで
第一のものは、法規制のコンプライアンスを確
実にし、持続可能なビジネス行動のための国際
的な原則を遵守し、かつそれを支持することで
ある。加えて、企業は、社会が期待し、そうする
ことがビジネスに便益をもたらすものであること
から、益々より良好な社会的・経済的・環境的影
響をもたらす行動をとるようになってきている。
サプライチェーンを通じて、環境的・社会的・経
済的パフォーマンスと良好なガバナンスを管理
し改善を追求することにより、企業は自らの利益、
ステークホルダーの利益、そして大きくは社会の
利益のために行動する。
このガイドが対
象にしているのは、
大きな購買活動を
行っており、その
サプライチェーン・
マネジメントの戦
略と行動に持続可
能性を統合する方
法を学びたいと考
えている企業であ
る。
企業はどのようなステップを取ることができるのか?
このガイドは、企業がサプライチェーンの持続可能性を達成するために実施することができる実践的なステップの概要を
説明し、行動を促すための実例を紹介するものである。以下に要約した推奨ステップは、グローバル・コンパクト・マネジメ
ントモデルに基づいている。このモデルは、戦略と業務においてグローバル・コンパクトを主流化するための継続的改善の
柔軟な枠組みである。
下記と本ガイド全体を通じて説明するステップは、非線形なものである。むしろ、これらはより持続可能なサプライチェー
ンを実現するために企業が取りうる補完的な行動を表している。さらに、サプライチェーンの持続可能性のマネジメントを成
功させるためには3つの原則―ガバナンス、透明性、エンゲージメント(関係構築)があり、これらはモデルのすべてのス
テップにおいて不可欠である。
コミット
評価
コミュ
ニケー
ション
定義
測定
実施
コミットする
定義と実施
外部環境とビジネスを成り立た
せている最も重要な要素を理解
することによってビジネスとして
取り組む意義(business case)を明
らかにする(第2章)
サプライチェーンの持続可能性
のためのビジョンと目的を確立す
る(第2章)
サプライチェーンにおける持続
可能性に関する期待事項を確立
する(第3章)
パフォーマンスの改善のために
サプライヤーに期待事項を伝達
し、交流する(第5章)。
連携を確実にし、内部でフォ
ローアップする(第6章)。
協働とパートナーシップを組む
(第7章)
評価する
ビジネスの優先順位と影響に
基づく取り組みの範囲を決定す
る(第4章)。
測定とコミュニケーション
目標に照らしてパフォーマンス
を監視し、透明性を確保し、進展
を報告する(第8章)
6 サプライチェーンの持続可能性
7
第1章
序章
このガイドは、サプライチェーンの持続可
能性に関して未経験の企業と経験がある企
業の双方を対象に、サプライチェーンを通し
てグローバル・コンパクトの原則を適用し、
持続可能性をビジネスの戦略に統合するこ
とを支援するためのものである。
サプライチェーンの持続可能性の定
義
今日のグローバル化した経済では、業務
をアウトソーシングすることは、責任やリス
クが外部に移転されることを意味せず、製
品が販売された段階で企業の責任が終わ
ることもまた意味しない。リーディング・カン
パニーは、その製品・サービスがライフサイ
クルを通じて果たす役割を理解している。サ
プライチェーンの持続可能性マネジメントは、
ビジネスの継続性を確保し、事業費を管理
し、ブランドの誠実さを維持するための鍵と
なる。これは、グローバル・コンパクトの原
則を実施するための、一つの重要な側面で
ある。
本ガイドにおける定義
「持続可能性」の定義は様々である。この
ガイドにおいては、グローバル・コンパクトの
10原則で対象となっているように、環境、社
会(人権と労働)と企業のガバナンスの課題
に対処するビジネスの役割を包含するもの
と定義する。
「サプライチェーンの持続可能性」とは、
製品とサービスのライフサイクル全体を通じ
ての、環境、社会と経済の影響を管理する
ことであり、良好なガバナンスの実行を奨励
することである。
サプライチェーンの持続可能性の目的は、
製品とサービスを市場に出すことに関わる
すべてのステークホルダーのために長期の
環境的・社会的・経済的な価値を創出し、保
護し、高めることである。サプライチェーンの
持続可能性を通じ、企業はそのビジネスの
長期の存続を可能とし、 社会における地位
を確保することができる。
環境的・社会的・経済的な影響は、
サプライチェーンの各段階を通じて存在する。1
輸送
リサイクル
原料の投入
採取
使用の終了
廃棄
使 用
1
製 造
環 境
流 通
BSR(Business for Social Responsibility)から引用
特定の製品のライフ
サイクルのすべての
段階において、環境
と人々に対し、社会
的・環境的な影響又
は外部性が存在する。
さらに、組織のガバ
ナンスとステークホ
ルダーに対するアカ
ウンタビリティは、
サプライチェーン全
体を通じたすべての
段階において重要で
ある。
このガイドは、製品の流
通業者や消費者または
最終処分問題ではなく、
上流のビジネス相手、す
なわち、サプライヤーと
の関係に焦点を当てる。
サプライチェーンの下流
での影響の焦点は、国
連グローバル・コンパク
ト・オフィスによって将来
検討される予定である。
さらに、このガイドは、
企業が何を購入するか
ではなく、企業が誰から
購入するのか、どのよう
に製品を調達するのか
という問題に焦点を当て
る。何を購入するかは、
これも、国連グローバ
ル・コンパクト・オフィス
の将来の検討課題であ
ろう。
8 サプライチェーンの持続可能性
サプライチェーンの持続可能性と国連グローバル・コンパクトについて
グローバル・コンパクトは、参加者に10原則に基づきサプライヤーとの関係を構築し、グローバル・コンパ
クトに対するコミットメントの一部として持続可能な開発の目的を進め、それによって、地球規模のビジネス
コミュニティ全体に良き企業市民としての行動を広めることを奨励している。下の表に示すように、10原則
は、サプライチェーンにおける持続可能性に密接に結びついている。
グローバル・コンパクトの10原則とサプライチェーンの持続可能性
10原則
人権
原則1:企業は国際的に宣言さ
れている人権の擁護を支持し、
尊重する。
原則2:人権侵害に加担しない。
労働
原則3:組合結成の自由と団体交
渉の権利を実効あるものにする。
原則4:あらゆる形態の強制労働
を排除する。
原則5:児童労働を実効的に廃止
する。
原則6:雇用と職業に関する差別
を撤廃する。
サプライチェーンの持続可能性との関係
企業は人権を尊重する責任がある。基本となる責任は、
他人の権利を侵害しないことである。加えて、企業は人権
の実現を支援し促進する段階的措置を講じることができ、
またそうすることにはビジネス上の理由がある。
事務所、工場、農場などや鉱業などの自然資源を採取
する現場の労働条件は、特に開発途上国では、しばしば
国際的な基準や国内の規制の要求基準よりも顕著に低く
なっており、深刻な人権侵害に至る場合がある。企業は、
サプライチェーンの中で、雇用の自由選択権、児童の労
働からの解放、差別からの解放、組織と団体交渉の自由
を含め、国際的な労働基準を維持するよう努力すべきで
ある。
更に、労働者はしばしば、過剰な労働時間、雇用者によ
る待遇の低下や移動の禁止など、上記以外の労働者の
権利の侵害に苦しむ。人権侵害に加担しないためには、
企業は、サプライチェーンによって影響を受ける労働者や
その他の人々の権利(移動の自由、非人間的な扱いから
の自由、同一職務同一賃金を受け取る権利、休息と気ば
らしをする権利を含む)が侵害されることがないよう努力
すべきである。また、安全で健康な労働条件の下で働くと
いうすべての人が有している権利も非常に重要である。
企業は、広範囲での人権(例えば、性の平等や教育や
健康へのアクセス)を促進するために、単独であるいは
パートナーとの協働で人権(労働条件を含むが、それ以
上の)問題の解決を、始めることもできる。
9
環境
原則7:環境問題の予防的な
アプローチを支持する。
原則8:環境に関して一層の責
任を担うためのイニシアチブを
とる。
原則9:環境にやさしい技術の
開発と普及を促進する。
腐敗防止
原則10:強要と贈収賄を含む
あらゆる形態の腐敗を防止す
るために取り組む。
サプライチェーンからの環境影響は、特に環境規
制が緩く、価格の圧力が顕著で、自然資源が豊富
な(又は豊富と見られている)地域では、しばしば深
刻である。このような影響には、有害廃棄物、水質
汚染、生物多様性の損失、森林減少、生態系への
長期の損害、有害な大気排出物、多量の温室効果
ガスの排出やエネルギー使用が含まれる。企業は、
予防的アプローチを適用し、より大きな環境面の責
任とクリーンテクノロジーの利用を促進することに
よって、サプライヤーと協力し、環境影響を改善す
べきである。
サプライヤーに存在する顕著な腐敗のリスクとし
ては、不正な調達と政府が関わる汚職行為に関与
するサプライヤーが挙げられる。このような不正行
為の直接的なコストは、製品の品質を含めかなり
のものであるが、しばしば、法的責任や企業の評
判への損害などの問題に対処するために使われる
管理者の時間や経営資源に関連する間接的なコ
ストの方が膨大である。有意義な腐敗防止プログ
ラムを通じてサプライチェーンに関わっていく企業
は、製品の品質を改善し、不正とそれに関連するコ
ストを削減し、誠実なビジネス行動によって評判を
高め、ビジネス環境を改善し、将来の成長のため
のより持続可能なプラットホームを創出することが
できるのである。
サプライチェーンにおける持続可能な発展の影響について
現在進行中であるビジネス上の関係によって、すべての企業は従業員、サプライ
ヤーと政府への支払を通じて直接的な経済上の影響を与えている。さらに、サプライ
チェーンを通して、またそれを超えたところで、資金の流れによって間接的にも経済的
な影響を与えている。サプライチェーンを経済的により包含するものとする企業は、例
えば、雇用を創出し、所得を増加させることによって、さらに経済的発展を支援するこ
とができる。経済発展は、社会経済的な発展と環境へ二次的な影響を与えることから、
持続可能性の非常に重要な一側面である。
10 サプライチェーンの持続可能性
国連グローバル・コンパクト:持続可能なサプライチェー
ンに関する資料
サプライチェーンの持続可能性:オンラインでの評価と学習ツール
顧客が、包括的なサプライチェーン・アプローチの実施の進捗を測定し、
ギャップを評価し、課題と成功を共有するための双方向のツール。BSR
(Business for Social Responsibility)との協働で策定された。
サプライチェーンの持続可能性ウェブサイト
企業がより持続可能なサプライチェーンを構築することを支援するた
めのイニシアティブ、資源や、ツールに関する情報を提供し、企業の実
施例を記載する。
http://supply-chain.unglobalcompact.org
企業のサプライチェーンにおける人権の促進のための市民社会との協
働
企業が人権を促進するためにどのようにサプライヤー、政府及び市民
社会と協働できるかに関するグッド・プラクティスのノート
責任ある環境管理に関する資料
サプライチェーンの管理実施のための戦略とガイドを含む、環境マネ
ジメントと持続可能性のための戦略的な政策枠組み
サプライチェーン中にある腐敗を防止する:顧客とサプライヤーのため
のガイド
腐敗を防止するための、顧客とサプライヤーのための実践的なガイド
とツール。これは、国連グローバル・コンパクトの第10回「原則ワーキン
ググループ」の成果である。
すべての資料は以下のリンクからアクセスすることができる:
www.unglobalcompact.org/Issues/supply_chain
11
このガイドの使い方
このガイドに記述されている包括的アプロー
チにより、サプライチェーンの持続可能性に
関する重要課題および検討事項をグローバ
ル・コンパクトの10原則に即した形で特定す
る助けとなる。
このガイドは、企業の責任とサプライマネ
ジメントの優先課題と実践について、監視と
インプットをする立場にある個人向けに作成
されている 。ここに記載したアプローチは、
サプライチェーンの持続可能性に詳しくない
企業、経験を有している企業どちらにも適用
可能である。先進的な実例は「新しい兆し」と
いうタイトルでボックスに明示している。
第2章では、サプライチェーンの持続可能
性を目指す事業上の理由の論拠を探索する
ことから始める。また、外部環境への理解と、
サプライチェーンの持続可能性に関する企
業独自のビジョン確立の重要性を検討する。
第3章では、グローバル・コンパクトの10原
則とその他の認識された国際規格で構築さ
れるサプライヤーの行動規範の設計や、そ
の規範の利用方法に関して助言を提供する。
第4章では、サプライチェーン持続可能性
プログラムの適用範囲を決定する重要な要
素と、サプライヤーの細分化、リスクアセスメ
ント、優先順位付けなどのツールを説明する。
第5章では、サプライチェーンの持続可能
性についてサプライヤーとの関係を構築す
るためのオプションについて説明する。それ
には、サプライヤーとコミュニケーションを取
り、パフォーマンスをモニタリングし、サプラ
イヤーのキャパシティー・ビルディングを行い、
同時にサプライヤーの持続可能性マネジメ
ントシステムを構築するリーダーシップ活動
のためのアプローチを含む。
第6章と第7章では、サプライチェーンの持
続可能性のための内部の責任とパフォーマ
ンス管理に関する実践的なガイドを提供する。
ここでは、内部の調整と役員と調達専門担
当者の望ましい役割に関する概念を概観す
る。加えて、ここでは、目標設定と、自社の
サプライチェーンの持続可能性の期待事項
に応じる際の内部とサプライヤーのパフォー
マンスを監視するための測定基準に関する
勧告を提供する。また、対外的な報告の重
要性についても考察する。
第8章では、どうすれば、産業界の協働と
マルチ・ステークホルダーのパートナーシッ
プがサプライチェーンの持続可能性プログラ
ムの影響を拡大させることができるか、また、
それに伴うチャンスとリスクは何か、につい
て説明する。
サプライチェーンの持続可能性については
依然として学ぶことが多くある。我々は、サ
プライチェーンの持続可能性のツールの利
用可能性と調整を継続的に改善することを
目指しており、このガイドやその他の資料の
内容に関する意見を歓迎する。
国連グローバル・コンパ
クトとBSRとの、サプライ
チェーンの持続可能性に
関するパートナーシップ
グローバル・コンパクトとBSRは、企
業がサプライチェーンのプログラムと
業務において10原則を実施する際の
戦略的なガイダンス文書を開発する
ために、共同プロジェクトを開始した。
このガイドのほかに、グローバル・コ
ンパクトとBSRは、企業が自らのサプ
ライチェーンの持続可能性の現状レ
ベルを決定し、包括的なアプローチ
の実施において、いかに長期的な進
展を図るかを学ぶための、オンライン
での自己評価と学習ツールを開発す
る予定である。学習ツールは、よりイ
ンターアクティブなフォーマットになっ
ているが、その内容はこのガイドをそ
のまま反映したものである。
このツールとガイドは2010年6月の
グローバル・コンパクトのリーダー・サ
ミットにて好評を得た。
「企業は、しばしば物事を前に
進めるためのイニシアティブを
取っている。ビジネスとして取
り組む意義(business case)にの
みに焦点を当てることは、企業
が社会の発展のために生み出し
ている価値を過小評価すること
となる。」
マッズ・オブリーセン(Mads Ovlisen)
国連グローバル・コンパクト
サプライチェーンの持続可能性に関する諮問グループ議長
13
第2章 サプライチェーンの持続可能性に
取り組むにあたって
サプライチェーンの持続可能性プログラ
ム開発のための最初のステップは、行動
を起こすためにビジネスとして取り組む意
義(business case)を評価し、外部環境を理
解することである。これらの取り組みは自
社にとって最優先のサプライチェーンの
課題を確認し、リスクと機会を評価し、内
部の支持を得るための助けになる。
ビジネスとして取り組むことの意義
を明らかにすること
サプライチェーンにおいて社会的・環境
的影響を改善する活動を実施する理由
は多数ある。 多くの企業では持続可能性
の問題に対処する際、その企業の価値
観と企業文化を推進力として取り組んで
いる。これらの企業にとって、サプライ
チェーンの持続可能性を求めることは正
しい行動であり、また、社会開発(social
development)と環境保護の推進力にな
るという事実は、内部の支持とコミットメン
トを誘発する助けとなる。
多くの企業がサプライチェーンの持続可
能性のためのビジネス推進力を特定して
いる。個々の企業がビジネスとして取り組
む意義は、業界事情、サプライチェーンの
フットプリント、ステークホルダーの期待
事項、ビジネス戦略、組織の文化等を含
めた様々な課題に左右される。多様なビ
ジネス推進力に応じるサプライチェーンの
持続可能性マネジメントを実施することに
よって、ビジネスの価値を最高にまで高
めることができる。
サプライチェーンの持続可能性のため
の最も一般的なビジネス推進力は以下の
図に示されている。
サプライチェーンの持続可能性のためにビジネスとして取り
組む意義を明らかにすること2
サプライチェーンの持続可能性
のためのビジネス推進力
事業リスクの
マネジメント
環境的・社会的・
経済的影響に起因
する事業の中断を
最小限に止める
会社の評判やブラ
ンドを保護する
効率性の実現
原料、エネルギー、
輸送コストの削減
労働生産性の改善
サプライチェーン
全般の効率性の実
現
持続可能な
製品の開発
進化し続ける、顧
客やビジネス・
パートナーの要求
事項に対応する
変化するマーケッ
トに対応する
ガバナンス、マネジメント、透明性
2
BSRから引用
14 サプライチェーンの持続可能性
サプライチェーン
の持続可能性を
通じてビジネスの
目的を達成するこ
と
リスクマネジメント
の例:サプライ
ヤーと協働し、マ
ネジメントの実行
における最低限の
基準(最少雇用年
齢、従業員との契
約、健康と安全基
準など)を保証す
る。
操業の効率性の
例:業務に負の影
響を与えることなく
コストを削減する
(例:実施可能であ
れば飛行機ではな
く船で製品を輸送
する)。
持続可能な製品
の例:社会や環境
の影響を明瞭に考
慮した原料(例:ラ
イフサイクルを通
じて温室効果ガス
の排出が比較的
少ない生物由来の
プラスチック)を調
達する。
リスクをマネジメントすること
企業は、サプライヤーが国連グローバ
ル・コンパクトの原則の全エリアをカバーす
る有効なコンプライアンス・プログラムと確
かなマネジメントシステムを持っているかを
確認することによって、サプライヤーの人
権、労働、環境、ガバナンスの実行に関連
して生じる可能性があるサプライチェーン
の中断や遅延から自身を守ることができる。
主力資材(inputs)について単一の供給源
しか持たない企業であれば、リスクマネジ
メントは、継続的資材確保のために極めて
重要である。
顧客や投資家の期待事項によって、企業
は益々責任あるサプライチェーン・マネジメ
ントを行うようになってきている。社会問題
と環境問題にウエイトを置くマネジメントは、
企業の評判リスクに対処するのに役立つ。
最後に、企業はサプライチェーンの持続
可能性に取り組むことで、サプライヤーが
今後更に強化されるであろう環境規制や、
拡大される製造物責任法に適応し、将来
負う可能性のある賠償責任を軽減すること
もできる。
例:オーストラリアの銀行であるウエスト
パック社(Westpac)は、広告キャンペーン
やスポンサーシップを通して、社会とのエン
ゲージメント、環境保護及び持続可能性と
企業のブランドをリンクさせてきた。ウエス
トパック社は企業の社会的・倫理的・環境
的影響の多くは、自身の活動にあると同じ
くらい、サプライチェーンにも存在し、サプラ
イチェーンの持続可能性のマネジメントは
企業の評判とブランド価値を守る上で重要
であると認識している。調達管理に関連す
るリスクには、ネガティブな報道、企業の評
判の損傷、顧客に対する実質的な損失が
含まれる。ウエストパック社は明確なサプ
ライチェーン・マネジメントの実施を通して、
慎重にこれらのリスクを管理している。
効率性を実現すること
サプライチェーンの効率性を実現すること
に焦点を置くことによって、自社の調達コス
トの削減が可能になるとともに、エネル
ギー、水、天然及び化学資材の使用など
のサプライチェーンの環境フットプリントを
削減したり、同時に労働者の健康、モチ
ベーションや生産性の改善もできる。その
便益には次のものを含む:
強固な労働慣行、安全衛生対策。 それら
は結果として、より良好なコスト効率性と生
産性の向上をもたらす。
天然資源の管理、その採取、ロジスティ
クス、製造を含めたサプライチェーンの基
本的なプロセスの理解を深める。それはよ
りよき資源のマネジメントと責任ある資源
管理を可能にする。
必要な資源投入の削減とコスト低減を実
現する、より効率的に設計されたプロセス
やシステム。
生産性、効率性へのイニシアティブは、
サプライチェーンの様々な段階と、主要な
社会的・環境的影響とコスト要因を完全に
理解することから始まる。強力なコミュニ
ケーション能力を持ち、ビジネス推進力及
び持続可能性トレンドを深く理解し、改善の
ためのアセスメントや優先順位を共有する
ことを通じて問題の根本原因に対処すれ
ば、企業は必要な改善を推進し、ひいては
利益を得ることができる。
持続可能な製品を開発すること
持続可能性の問題に関するサプライヤー
との協力によって製品開発を推進すること
ができる。このようなイニシアティブに率先
して取り組む企業は、既存の製品に新たな
特質、性能を加えたり、更には全く新しい
製品を生みだしてきた。例えば、持続可能
な製品は、従来の製品と比べて環境負荷
が低減されたり、製品回収や廃棄方法が
改善されることも考えられる。 更に、製品
の持続可能性は、製品を差別化する要因
となり、結果として販売が増大する可能性
がある。
例:フィンランドの壁紙会社であるアールス
トローム・オスナブリュック社(Ahlstrom
Osnabruck)社は、英国の大半の顧客が
FSC基準の製品を購入するコミットメントを
宣言した後、1990年代後半に自社製品を
FSC(森林管理評議会)の基準に従って開発
することに踏み切った。2010年までにアー
ルストローム・オスナブリュック社の全パル
プ・サプライヤーはFSCまたはPEFC
(Programme for the Endorsement of Forest
Certification)基準によって認証された。同
社は FSC のCoC認証(加工・流通過程管理
認証)を受けた 12の工場を持つことで、持
続可能な森林の認証製品を求める市場の
需要増加に対応できるようになった。
「企業の購買力は社会にプラスとな
る変化をもたらすユニークな推進力
となり得る。企業は、この力を使い、
自社のサプライチェーンを包括的成
長(inclusive growth)の達成手段にしな
ければならない。インドのような開
発途上の経済では、労働者の大半が、
サプライチェーンの末端の往々にし
て組織化されていない分野で雇われ
ている。もし、企業の良好でクリー
ンなビジネス行動の恩恵がこれらの
労働者に及ぶようになれば、彼らの
生活のみならず国の福祉にも大きな
影響を及ぼすだろう。」
アナンダ・マヒンドラ(Anand Mahindra)
マヒンドラ&マヒンドラ社
副会長・業務執行取締役
16 サプライチェーンの持続可能性
について知る努力が大切である。
外部環境を理解すること
ビジネスの推進力を確認すること以上に、
同業他社の取り組み、ステークホルダー
の期待事項、パートナーシップを組むチャ
ンス(第8章で更に詳しく述べる)等、サプ
ライチェーンの持続可能性の外部環境を
理解することが重要である。
同業他社のベンチマーキング
自社の同業他社はすでにサプライチェー
ンの持続可能性に取り組んでいるかも知
れない。自社の同業他社をベンチマーキ
ングすることによって企業のサプライ
チェーンの持続可能性プログラムの設計
に組み込むべきアイデアを得ると共にビジ
ネスの価値の理解をより洗練化すること
ができるであろう。同業他社の以下の点
・サプライチェーンの持続可能性のために
ビジネスとして取り組むことの意義
・人権、労働、環境とガバナンスのリスク・
機会・影響の理解と、その結果としてのサ
プライチェーン中の焦点
・サプライチェーンの持続可能性を管理す
るための内部機構
・行動規範と、それに含まれる事項
・行動規範の活用方法
・サプライヤーとのエンゲージメントのため
の手法とプログラム
・プログラムの成功を評価するための測定
基準
・報告の仕方
自社は関連するベンチマークと比較してどうか?
「2009年サプライチェーンの持続可能性に関するグローバル・コンパクト調査結果」のハイライト
2009年に国連グローバル・コンパクトが行った署
名団体を対象とする調査の中に、サプライチェーン
の持続可能性の実行に関する質問も含まれていた。
様々な規模、地域、産業からの1,000社以上の回答
が寄せられた。
回答者の83%がサプライヤーをグローバル・コン
パクトの原則に従わせることを考えており、従業員5
万人以上の企業の46%がサプライヤーはグローバ
ル・コンパクトの原則に従うべきと強く考えると回答
している。しかしながら、5万人以下の企業では、約
30%が同原則に従うべきと強く考えていると回答し
た。
サプライヤーを同原則に従わせることを全く考え
ないとした17%の回答者は、その理由として、能力
がないこと(28%)、優先事項でないこと(28%)、原
則を調達行動に統合するための知識がないこと
(25%)を挙げた。
新しいサプライチェーン・パートナーの選択に当
たって、グローバル・コンパクトへの加盟を考慮する
としている企業のうち、45%は公開情報に依存し、
37%は自己査定質問表を基にし、37%は他社の情
報をレビューし、32%は自社のスタッフによる現地
監査報告に頼っている。
グローバル・コンパクトへの参加を検討している
企業では、サプライチェーン・パートナーを選定する
場合の現状のサプライチェーン・パートナーの評価
は、36%が自社の従業員の監査によって実施し、
35%が自己評価アンケートへの回答によって実施
し、32%が通常のビジネスのレビューの時に企業
責任パフォーマンスのアセスメントを行っている。
最大規模の企業(従業員5万人以上)においては、
サプライチェーン・パートナーが改善し、グローバ
ル・コンパクトの原則を遵守するようになるために、
特定の問題についてのトレーニング(31%)、能力
別グループ編成、目標の設定と見直しの支援
(26%)、改善プランのレビューと講評(26%)、コン
サルタントや市民社会団体などの第三者のエキス
パートの紹介(24%)などの様々な支援活動をして
いると回答した。しかしながら、より小規模な企業は、
この質問に対してノーアクションをトップに挙げてい
た。
全企業の52%、そして最大規模の企業の84%は、
企業責任の期待事項を関連の文書に明記している
(例えば、契約書、提案書、注文書)。
全社の43%、最大規模の企業の72%は、企業責
任についてのトレーニングを彼らの調達スタッフに
している。
しかしながら、13%の企業がビジネスと企業責任
に関する基準とのバランスを取る購買決定を行って
おり、15%がビジネスと企業責任の基準を満たして
いるサプライヤーに報いている。
17
産業界においては、共同の行動規範(第
3章を参照)を採用し、例えば、監査やト
レーニングを行う際の協力等、協働による
サプライヤーのエンゲージメントの側面に
取り組んでいるものもある。同業他社に対
するベンチマーキングを行うと、これらの協
働アプローチや産業イニシティブ(8章にて
詳述)を把握することができ、サプライ
チェーンの持続可能性を一から構築する
必要はなくなる。
最後に、サプライヤー自身はしばしば
グッド・プラクティスの例を提供し、彼らの
要望を顧客に伝えることができる。
ステークホルダーの期待事項を理解
すること
企業は、国と地方自治体、労働者と経営
者の団体、NGO、アドボカシーと活動家の
団体、学術界と専門家、地域社会グルー
プ、サプライヤーなどのステークホルダー
の期待事項を理解することに投資すべき
である。
さらに、企業は顧客や投資家からの意見
収集により恩恵を受けることもできる。顧客
や投資家の要望はサプライチェーンの持
続可能性プログラムにおいて主たる推進
力となる。また、顧客や投資家といったス
テークホルダーの見識を利用して、企業へ
のリターンを最大化できるプログラムを形
成することができる。
プログラム設計のプロセスの早い時期か
ら、また、定期的にステークホルダーに関
わってもらうことにより、企業は、持続的な
サプライチェーン・マネジメントに関連する
基準や手法を特定することができる。ス
テークホルダーの中には種々の行動規範
やサプライヤー認証について知識がある
だけではなく、その開発に関わっている者
もいる。例えば、宝石のためのキンバリー・
プロセス(Kimberly Process)、木材と紙製
品のためのFSC(森林管理評議会)認証、
産業をまたがった責任ある労働慣行のた
めのSA8000がある。彼らは、様々な選択肢
の信頼性を評価し、どれが自社のプログラ
ムにとって意味のある情報であるかを特定
するために役に立つ。
サプライチェーンにおける高まるリスクと好
機。顧客や従業員から活動家やNGOまで、
ステークホルダーは、しばしばサプライ
チェーンの新しい環境・社会・経済の課題
を最初に特定する者である。ステークホル
ダーと初期の段階から定期的に関わりを
持つ企業は、活動家達のキャンペーン行
動等で知らされる前に、これらの課題に対
して事前(proactive)の行動をとり、またス
テークホルダーと協働するチャンスを得る。
ステークホールダーとのエンゲージメントを
通じて早期に課題を認識することによって、
企業は同業他社に比べて、早期のリー
ダーシップを取ることができる。詳細は、第
8章のマルチ・ステークホルダーとの協働を
参照すること
例:行動規範を策定する時、ウエストパック
社(Westpac)は地域のコミュニティ協議会、
サプライヤー、NGOに相談した。同社は、
豪保全財団、豪消費者協会、豪社会保障
評議会、金融部門連合、人権・機会均等委
員会などの様々な組織からのフィードバッ
クを得た。ウエストパック社はこれらのグ
ループから寄せられた課題を傾聴し、これ
に返答した。更に同社は「持続可能なサプ
ライチェーン・マネジメント(SSCM)政策検討
委員会」を設立し、その中で内外のステー
クホルダーのSSCMへの見解を聞き、その
プロセスを進展させることができた。
持続可能サプライ
チェーンにおけるス
テークホルダーとして
の出資者と顧客の重
要性
顧客と投資者は企業
に対して、サプライ
チェーンにおける影響
を理解し管理するよう
期待を増大させている。
投資者は、企業がサ
プライチェーンに影響
を及ぼす主たるリスク
を認識し、 緩和策を講
じていることを確認した
いと望んでいる。加え
て、企業がサプライ
チェーンの持続可能性
からいかに価値を引き
出しているかに興味を
持っている。
消費者とビジネス顧
客は企業がサプライ
チェーンをもっと厳密に
管理することを奨励し
ている。特にある顧客
はもっと持続可能な製
品を求めているし、一
方で、ビジネス顧客は
サプライヤー選択の基
準としてサプライチェー
ンの持続可能性を含め
るかもしれない。
18 サプライチェーンの持続可能性
ビジョンを確立すること
自社のサプライチェーンの持続可能性プ
ログラムのための明確なビジョンと目的を
持つことは、自社の戦略に方向性を与え、
自社のコミットメントを明確にする。ビジョン
はプログラムの成功を評価し、また、継続
して改善するべきエリアを特定する上で有
用な判断基準となる。
企業のビジョンや目的の策定が自社の
トップによって支持されることは、重要なこ
とである。このことはプログラムを成功させ
る上で絶対に欠かせない要因である。さら
に、企業のリーダー達の支持を確実にする
ために、サプライチェーンに関わる全ての
部門の上級マネジャー、取締役がビジョン
策定のプロセスで相談を受け、意見を言え
ることが重要である。企業はいかにサプラ
イマネジメント機能の様々な部門からの代
表者をビジョン策定に参加させるかを考え
るべきである。すなわち、調達と業務、企業
責任、設計、マーケティング、ロジスティク
ス、品質管理、コンプライアンス、法務、人
材と環境、健康と安全などの各機能は、
夫々サプライチェーンの持続可能性プログ
ラム実施時において果たすべき役目があ
るため、上記のビジョン策定に参加するこ
とが重要である。小規模企業にとっては
リーダーが持続可能なサプライチェーンの
ビジョンに賛成していることが同じくらい重
要である。
このプロセスの結果はビジョンとコミットメ
ントの宣言であるべきである。この宣言を
作成する時、いかなる動機で企業は持続
可能なサプライチェーン・マネジメントに投
資するかを考えなければならない。以下の
ような動機が考えられる。
•顧客の要望と関心
•自社の企業ブランドや評判に影響を及ぼ
すサプライチェーンの業務に対するNGOや
活動家の苦情
•サプライチェーンのリスクをどのように管
理しているかを知るための、投資家による
調査
•ビジネス遂行の妨げとなる、規則や基準
の不遵守
•需要の増大と天然資源の供給減の結果
であるコスト上昇
•同じ産業界で持続可能なサプライチェー
ン・プログラムを策定している同業社の圧
力
•持続可能性について力を注ぎ実行する企
業文化
•業務の長期に亘る持続可能性を確実にす
るために、環境と社会のマクロ問題に対応
したビジネスの関心
具体的な目的や、企業の業績に響く潜在
的な障壁やリスク事象を明らかにすること
も重要である。企業はサプライチェーン・プ
ログラムを通して何を達成したいと望んで
いるのか? 自社がそれに向かって努力し
たい長期の業績は何か? 持続的なサプ
ライチェーンは自社のビジネス戦略をいか
にサポートするか? 目的には、戦略的ビ
ジネス目標(例えば、企業にとっての長期
に亘る価値を創造すること)、業務上のビ
ジネスの目標(例えば、無駄なエネルギー
や材料を節約すること)、自社の評判を改
善する目標(例えば、自社に対するステー
クホルダーの意見を変えたいと願うこと)、
コンプライアンスを基礎とした目標(例えば、
全ての適用される法規、規則を遵守した活
動を行うこと)など、様々なものがある。
企業は、自社のビジネスの動機と目的に
基づいて、何をプログラムの長期的な成功
と考えるかを反映したビジョン宣言を作るこ
とができる。自社のビジョン宣言の例を次
ページに示した。企業が課題を認識し、理
解し、経験を得るにつれて、ビジョンを見直
すことが必要となるかもしれない。
例:アルゼンチンに拠点を置く食品、菓子
製造業のグルポ・アルコア社(Grupo
Arcor)は、顧客、信用機関、政府、ビジネ
ス会議所等から同社のサプライチェーンと
持続可能性について益々増加する要請や
質問に直面した。その結果、同社は自社の
CSR方針をサプライヤーとの関係に統合す
るというビジョンに基づき、「サプライヤー社
会的責任プログラム」を立ち上げた。その
具体的な目的は以下の通りである:
同社のCSR行動とサプライヤー契約方針
にサプライヤーを適合させること。
持続可能性に基づく同社の生産及びマ
ネジメントのプロセスにおいて、最小限の
共通基準を保障すること。
通常は競合的なマーケットから排除され
てしまう、生産活動をしている脆弱なグ
ループの経済的包含を積極的に行いなが
ら、グルポ・アルコア社のサプライ源を増や
し、向上させること。
このプログラムには3つの主たる戦略が
ある。それは、現実認識とトレーニング、サ
プライヤー採用方針へのCSRの段階的組
込み、具体的な責任ある購買プロジェクト
である。
サプライチェーンの持続可能性ビジョン宣言
ロレアル( L’Oreal )
「私たちは、信頼及び相互利益を基礎として、顧客及びサプラ
イヤーと強力かつ永続的関係を築くことを約束する。私たちは、
誠実にビジネスを遂行する、私たちは、業務を遂行している国
の法律を尊重し、良好なガバナンス慣行を遵守する。(中略)
私たちは、自然環境に与える影響に注意する。(中略)私たち
は、人権を尊重する。私たちは、児童労働や強制労働を終わら
せたいと願う。(中略)私たちは、私たちの価値観と倫理的な
コミットメントを共有する良きビジネス・パートナーを積極的
に求め、大切にする。」
ノキア (Nokia)
「ノキアにおいて私たちはリスクを予想し、企業の価値を立証
し、私たちのガバナンスを高め、従業員満足度を増大させ、私
たちがビジネスを行っている環境やコミュニティに配慮するこ
とに力を尽くす。私たちは、サプライヤー・ネットワークの企
業群が私たちと同様な倫理観に基づくビジネス手法を採用し、
この分野だけでなく同時に彼ら自身のサプライヤーの教育と監
督においても進歩と達成を実証することを期待する。
私たちの目的は、環境、倫理、健康、安全問題と労働慣行が、
別々の付加的な問題ではなく、サプライヤーの選択と関係の発
展も含めた私たちのすべての調達プロセスに組み込まれたもの
とすることである。」
20 サプライチェーンの持続可能性
21
第3章 サプライチェーンにおける持続可能性につい
ての期待事項を明確にすること
サプライチェーンの持続可能性に対する自
社のビションを確立するにあたり、次の重要な
ステップは、期待事項を、サプライヤーと従業
員に方向性を示す明確なガイドラインに変換
することである。最小限、サプライヤーが国内
法令を遵守し、環境的、社会的損害を避ける
ため事前の対策をとることを期待するべきで
ある。3
行動規範の概要
行動規範は、顧客とサプライヤーの両者に
対し期待事項を明確にし、マネジメントする上
できわめて重要である。行動規範は持続可能
性に関する共有の基盤を確立し、それに基づ
き、調達専門担当者や、サプライヤー、その
他のプレイヤーが、行動規範に基づいた決定
をすることができる。
多くの企業にとって、サプライヤー行動規範
は企業価値宣言の自然な延長で、新しい要求
事項というよりは既存の期待事項の確認とみ
なされるものである。
行動規範を開発するとき、参照、参考にすべ
き一連の国際標準がある。これらは、後半で
概説する。
強するものであるかどうか、を検討すべきであ
る。そして、企業が自身の行動規範を規定す
ることが必要であると意思決定したとしても、
依然として共通の行動規範は役に立つスター
ト・ポイントでありえる。
業界での包括的な共通の行動規範がない
か、あるいは、あったとしても自社がそのサプ
ライチェーンにとって適切でないと考える場合、
サプライチェーン・マネジメントに適用されるい
くつかの参照すべき原則や取り組みがある。
行動規範の社会的要素については、企業は
国連人権宣言と、ILO(国際労働機関)の中核
的条約と勧告を参照すべきであり、これらは、
労働、雇用、社会保障、社会政策と人権に関
する広範な共通の期待事項を明確にしている。
業界によって最も関連する環境課題は異な
る。そこで、行動規範でカバーする最も重要な
課題が何かについて明確にするため、対話と
協働がきわめて重要になる。用語の更新と解
釈が必要かどうかを決定するために、定期的
に行動規範の内容を見直すことも、重要であ
る。
行動規範を採用若しくは規定すること
グローバル・コンパクトの諸原則は、行動規
範を包括的たらしめるのに必要な各分野の要
点を述べている。多くの企業は、第2章で記述
される外部環境レビューで、同業他社がすで
に共通の行動規範を構築したことを知るであ
ろう。共通の行動規範は、サプライヤーが遵
守すべき基準の数を減らすことで、サプライ
ヤーの負担を最小限にすることを意図して作
成されている。同じく、サプライヤーを共同監
査するプロセスを合理化して、企業自身の行
動規範作成に必要な労力を減らすことも意図
している。
しかし、共通の行動規範は、グローバル・コ
ンパクトのすべての課題分野に対処していな
いか、自社の特定の関心に合致しないかもし
れない、というリスクがある。企業は、これらの
共通の標準のうちのどれか1つの採用が執行
経営陣の全面的支持を受けるか、企業が作
成する特有の行動規範に代わる、若しくは増
保護・尊重・救済:ビジネスと人権の枠組み、人権と多国籍企業等の企業の問題に関する特別代表報告、
ジョン・ラギー、2008年4月7日
3
22 サプライチェーンの持続可能性
行動規範の開発における鍵となるステップ
は、以下を含む:
1. サプライヤーを含むステークホルダーと
協議する。
2.国際法を軽視することを避け、複数の買
い手をもつサプライヤーにとって矛盾する
期待事項とならないよう、新しい基準を発
明することより、むしろ既存の国際行動規
範に期待事項の基礎を置く。
3. 部門横断的なチーム、特に調達専門担
当者と協議する。
4.サプライヤーがこれらの期待を自身のサ
プライ基盤に伝える、という規定を検討す
る。
例 : 製品が益々オンラインで配信されよう
になっているが、印刷出版はまだリード・エ
ルゼビア社(Reed Elsevier)の事業の重要な
一部であり、同社は大量の紙を購入してい
る。リード・エルゼビア社の課題は、自社が
使う紙の持続可能性をよりよく理解すること
であった。
リード・エルゼビア社が自身の行動のた
めに設定した倫理基準にサプライヤーが合
致することを確かなものとするために、同社
は、「リード・エルゼビア(RE)社会的責任サ
プライヤー(SRS)プログラム」を2003年に開
始した。同社の基本理念は「リード・エルゼ
ビア・サプライヤー行動規範」であり、それ
はグローバル・コンパクトの10原則を取り入
れている。サプライヤーは、署名と、彼らの
職場に行動規範を目立つように設置するよ
う依頼される。それはまた、サプライヤーが
下請け業者に対して、サプライヤー行動規
範を支持するコミットメントを書面で行うこと
により、彼ら自身のサプライチェーンにベス
ト・プラクティスを広めるのに役立つ。
リード・エルゼビア社はまた、年次アン
ケート調査も開始した。サプライヤーに行動
規範のすべての要素と10原則について彼
らのパフォーマンスを答えるよう質問してい
る。鍵となる環境課題(例、工場標準、森林
認証、リサイクル内容、漂白、資源使用削
減の取り組み)に関してだけでなく、彼らが
どのように、児童労働と強制労働を使わな
いこと、職場差別を排除すること、結成の自
由を進めることを確実とするか、などについ
て質している。
サプライヤー行動規範の文面と採用に関する
課題と参照事項
グローバル・コンパクト原則と関連する政策分野の例
グローバル・コンパクト原則と関連する政策分野の例
人権と労働
1. 強制労働
2. 児童労働
3. 勤務時間
4. 適切な賃金
5. 人道的な扱い
6. 差別しないこと
7. 結成の自由と団体交渉権
8. 職場の安全
9. 緊急災害時の対応
10. 業務上の傷害・疾病
11. 火災の予防
12. 職場の衛生
13. 身体的負荷のかかる作業
14. 機械装置の安全
環境
15. 有毒物質と化学物質
16. 原材料使用
17. リサイクル容易性及び使用済み商
品
18. 温室効果ガス排出
19. エネルギー利用
20. 水利用、廃水処理
21. 大気汚染
22. 生物多様性
腐敗防止
23. 利益相反
24. 贈物、食事、接待
25. 贈収賄と割戻金
26. 会計と業務記録
27. 情報の保護
28. 不祥事報告
参考資料参考資料
国連グローバル・コンパクト**
世界人権宣言
保護・尊重・救済 : ビジネスと人権の
ための枠組み
ILOの国際労働基準
ILOの安全衛生に関する行動規範
OECD多国籍企業ガイドライン
環境と開発に関するリオ宣言
国連腐敗防止条約
ISO14001
SA8000
OHSAS18001
**行動規範のモデルとなる文例を含め、サプライチェーンにおける腐敗防止に関する詳細については、グローバル・コンパクトの出版
物『サプライチェーンでの腐敗を防止する: 顧客とサプライヤーのためのガイド』を参照のこと。
23
例:リーバイ・ストラウス社(Levi Strauss & Co)
は、グローバル調達・運営ガイドラインを確立
した最初の多国籍企業であった。それは、ど
こで事業をおこなおうとも、責任ある商習慣
に対する企業のコミットメントを概説している。
ガイドラインは、2つのパーツを含んでいる:
(1) 国評価ガイドライン。それは特定の国でビ
ジネスを行うことに伴う潜在的問題を評価す
ることに役立つ。 (2) 取引条件規定。それは、
自社の企業価値と整合した職場標準と商習
慣に従うビジネス・パートナーを確定するの
に役立つ。
情報通信技術産業のリーディング・カンパ
ニー40社以上の業界組織である電子業界
CSRアライアンス(EICC)は、共通のサプライ
チェーン行動規範を確立し、それは、顧客の
期待事項に関する統一された声を提供し、サ
プライヤーと顧客の両者に対してサプライ
チェーン条件の管理を合理化し、変化しつつ
ある社会的・環境的な状況の両者に焦点を
当てている。EICCの各加盟企業は、行動規範
を採用し、サプライチェーンでそれを実行する
ことに取り組んでいる。
グルローバル・ソーシャル・コンプライアンス・
プログラムは、サプライチェーンの持続可能
性行動規範と手法を調和させようとする世界
的な産業横断的なプラットホームである。
行動規範を使用すること
サプライチェーンの持続可能性に関する自
社の目標に合致するために、行動規範は、
内部及び外部の期待事項を設定するための
基礎として、また、サプライヤーと他のステー
クホルダーとの活動及び契約の枠組みとして
用いられるべきである。
新しい行動規範は、記述されたその基準の
認識を向上するために自社全体を通して共
有される必要がある。調達専門担当者は、行
動規範を既存及び新規のサプライヤーに伝
達し、コンプライアンスと継続的改善を確実
にするためサプライヤーとどのように協働し
ようとしているかを説明するため、行動規範
の要素を熟知する必要があろう。可能性があ
るメカニズムには、企業内のウェブサイト、特
に新しいスタッフのための定期的な研修、行
動規範の重要性を強固なものにするための
経営陣からの日常的なコミュニケーションな
どがある。また、自社の構造の規模の大きさ
と複雑さ次第であるが、どのように行動規範
がスタッフによって実施されるべきかについ
て説明するために、内部の方針と手順を確
立することが役立つ場合がある。
企業は、しばしばサプライヤーに行動規範
を通知するために以下のような様々な方法を
とる。
特別な、1回限りのコミュニケーション。コ
ミュニケーションが自社の上級レベル経営層
(例えばCEOまたはCPO(チーフ調達オフィ
サー))からの場合、この方法はしばしば最も
効果的である。
サプライヤーと最初の接点で行動規範を盛
り込む。ウェブサイトに行動規範を掲示する
ことによって、また、提案・見積り依頼の要求
にそれを入れることにより、サプライヤーとの
新しい関係の最初の段階で企業は行動規範
を盛り込ませている。これは、潜在的サプラ
イヤーに対し、持続可能性が企業との彼らと
の関係で果たす重要性の認識を向上させる
ことに役立つ。
サプライヤーとの契約に行動規範を統合す
る。多くの企業は行動規範をサプライヤーと
の契約、若しくは注文書に統合している。そ
れは、サプライヤーに対して行動規範で提示
している期待事項を遵守することを契約書の
中で約束するということを依頼することによる。
定期的な業務会議での行動規範の見直し。
行動規範の導入を既定のビジネス・プロセス
に関連づけることと、調達専門担当者に情報
を提示させることは、ビジネスと持続可能性
パフォーマンスの関係の強さを示すことにな
ろう。また、将来、契約と評価プロセスの一環
としてサプライチェーンの持続可能性担当者
とサプライヤーとの間に交流があるならば、
それらの担当者を業務会議に参加させること
は役に立つことがあろう。
例:ノルウェーの通信サービスの世界的な提
供者であるテレノール社(Telenor)は、サプラ
イヤーとの責任あるビジネス行動に関する協
定を通して、その行動規範を実施している。
これらの協定は、サプライヤーが行動規範に
コミットするだけでなく、不遵守に対する監視
と制裁も許すことを要求している。また、テレ
ノール社は、そのサプライヤーに対し自社の
行動規範の要求事項を次につなげる(カス
ケードしていく)ことを要求して、サプライ
チェーンでのどんな段階でも監視する権利を
留保している。
24 サプライチェーンの持続可能性
25
第4章
適用範囲を決める
持続可能なサプライチェーン・プログラム
の次のステップは、適用範囲を決めること
である。サプライチェーンにおける持続可能
性に取り組み始めたばかりの企業は、サプ
ライチェーン全体を関わらせることを求める、
またはそうであるべきと感じることが多い。
しかしながら、多くの企業のサプライチェー
ンの規模や広がり、効果的な参加に必要と
される資源を考えると、それは非現実的で
ある。
従って、多くの企業は「カギとなる」、言い
かえれば「戦略的」なサプライヤーにプログ
ラム作りの焦点を当てる選択をする。その
サプライヤーとは企業が直接取引をしてい
る相手で、かつ、生産に不可欠な取扱高の
高い貢献度を持っている相手である場合が
多い。
加えて、自社のサプライチェーンの中で特
に「重要度が高い」部分があるだろう。たと
え自社の業務から何段階か離れているとし
ても、リスクレベルが高いために速やかな
注意が必要とされるサプライヤーである。
例えば、電子機器メーカーは、社会的対立
によって影響を受けている、または人権侵
害が起きている地域で生産されている鉱物
資源に焦点を当て始めている。
プログラムの適用範囲を決める目的は、
自社のどのサプライヤーにどの程度関与す
べきかを特定するためである。その際、留
意すべきことは、企業経営がより洗練され、
サプライチェーンの持続可能性を効率的に
管理する能力が増すにつれて、プログラム
の範囲も変化することである。
例:フォード社(Ford Motor Company)は、67段階先のサプライヤーではあるが、製鋼
用の銑鉄の生産における強制労働に対し
て取り組むことを優先することとした。
テレノール・グループ(Telenor Group)は責
任あるサプライチェーン・プログラム策定に
おいて、当初からサプライチェーンのいかな
る段階も除外しなかった。さらに、テレノー
ルは、顧客を除き、契約関係にあるパート
ナーすべてを「サプライヤー」と定義づけた。
サプライチェーンのリスク評価と実際の取り
組みの中での優先順位付けによって、業務
レベルでの実際の範囲決めが行われた。
一次サプライヤーとの関係の先をみることの重要性
二次サプライヤーとは、自社の一次サプライヤーへ供給するサプライヤーと定義され
る。自社が直接、調達をするわけではないが、その生産する製品・サービスの原材料や
部品を供給する相手である。
例えば、情報技術セクターでは、電子機器の部品となる鉱物を供給する鉱山企業は
二次サプライヤーである。同じように、金融サービスセクターでは、データセンターを運
営するために利用するサービスを提供するコンピュータのハードウェア製造業は、二次
サプライヤーである。
直接の交流と影響力が足りないため、二次サプライヤーを自社のサプライチェーン・
プログラムの中に含めるかどうか、どうやって含めていけばいいのか、多くの企業が四
苦八苦している。
しかし、持続可能性に取り組む際の最も重要な課題を二次サプライヤーが抱えている
ということが、多くの企業や業界で明らかになってきている。サプライチェーン全体をマッ
ピングすることで、持続可能性に関わる課題がどこで起きうるかということを把握してお
くことをお勧めする。そして自社のビジネスに対する重要性や社会への将来的な影響
度を評価し、自社のサプライチェーンの持続可能性プログラムの適用範囲に含めるか
どうか、含めるとすればどのように含めるかを決めることになる。
26 サプライチェーンの持続可能性
食品会社のサプライ
チェーンにおけるリスク
事象の例
児童労働:
サプライチェーン上の
農場における児童労働
の疑惑。
労働時間・賃金:
食品加工工場の労働
者が低賃金や超過労
働に対する賃金不払い
などに対してストライキ
を行う。
腐敗:
サプライヤーの管理
者が、収入やロイヤリ
ティを不正使用する。
食品の安全性:
加工工場で適切な洗
浄が行われなかったこ
とで製品に有害物質等
が混じる。
先住民:
先住民の生命や生計
にとって不可侵または
不可欠な土地において
農業が行われる。
公害:
加工工場が排水処理
を適切に行わず、地域
の規制を遵守していな
い。
*このリストは例として
挙げたもので、包括的
なもとは意図していな
い。
サプライチェーンのマッピング
サプライチェーンにおける持続可能性を
管理するための適切な適用範囲の設定を
理解するためには、まずは自社のサプラ
イチェーンを明確にする必要がある。サプ
ライチェーン・マップをつくると、製品・サー
ビスの原材料生産から市場までの工程に
関わる組織・個人のカギとなる活動を描く
ことができる。一般的な製品のサプライ
チェーンを以下に示す。
もちろん、個々の製品・サービスのサプ
ライチェーンは異なる。サプライチェーン・
マッピングは、製品・サービスカテゴリごと
に行うべきである。接客業や運輸交通な
どのサービス産業の場合、自社のサービ
スの様々な段階を考え、カギとなる資産
(運輸業の場合の船舶など)やサービスを
補助する製品(接客業における食品など)
に焦点を当てる。
(マッピングを)始めるポイントとして最も
重要な製品・サービスのカテゴリに目を向
けることを勧める。調達契約、自社の売上
原価のデータや類似の一次情報を見直し
てみることで、そのような製品・サービスが
特定できる。例えば、自動車レンタルサー
ビス企業の主要な資産は保有する車両や
予約等を管理するためのコンピュータ・シ
ステムである。これらのカテゴリはマップピ
ングされる必要がある。
サプライチェーンをマッピングするに
は:
• マップピングする主な製品・サービスを
特定する。自社が調達する製品・サービス
の最大カテゴリや事業経営にとって不可
欠なカテゴリを考える。
•製品・サービスカテゴリごとに、原材料や
情報の流れを追う。一次サプライヤーだ
けでなく、原材料や元のサプライヤーまで
さかのぼること。思い込みをしてはいけな
い。実際の関係や取引を理解するよう努
めよう。時には、仲介業者や卸売業者が
カギとなる役割を持っていることもある。
•サプライチェーンの各段階における人権、
労働、環境、腐敗等の課題について情報
収集する。これらの課題に関連したポテン
シャルリスクと機会がどこにあるか?これ
らの課題を特定するために、政府だけで
なく、同業者、サプライヤー、業界団体、
市民社会団体、活動家等と議論すること
は有効である。
小売業の視点からの
一般的なサプライチェーンの段階
サプライチェーン
原料
製造/
加工
包装
運輸/
保管
小売
消費者
の使用
/最終
「私たちは、益々資源を意識する、
資源制約の大きい世界に生きてい
る。私たちは現世代が利用可能な
資源の範囲内で生きるべきであり、
未来世代のための資源を借りては
ならない。持続可能な明日を築く
ためには、現在のサプライチェー
ンを持続可能なものにする必要が
ある。サプライチェーンにおける
持続可能性を高めることはすべて
の組織・ステークホルダーに対し
てリスクを軽減し、利益を増やす
ことになると固く信じている。」
クリス・ゴパラクリシュナン
(Kris Gopalakrishnan)
インフォシス(Infosys)
最高経営責任者兼共同創始者
28 サプライチェーンの持続可能性
サプライチェーンの細分化
自らのサプライチェーンを理解するようにな
ると、持続可能性を高めるために、サプライ
ヤーを細分化し、どのように経営資源をつぎ
込めばいいかを決める段階に入る。
細分化によってサプライチェーンの中で最
も重要な要素に焦点を当てることができるよ
うになる。妥当な細分化によって、常に存在
するリスクと、自社のビジネスと社会に対し
て否定的な影響を与えうる、対処を要する特
定のリスクの間のバランスをとることができ
る。
サプライチェーン細分化を考える際のいくつ
かの基準を挙げる。
社会へのリスク:自社のサプライチェーン
において、人権、労働、環境、倫理に関する
最大のリスクはどこにあるか?
ビジネス・リスク:ビジネスを行い、サプライ
チェーンの持続可能性達成のためのビジョ
ンを満たすための能力に影響を与えうる、自
社のサプライチェーンにおけるリスクは?
経済開発へのリスク:行動規範やモニタリ
ング、監査の取り組みの導入において中小
企業(SMEs)を除外することのリスクは?
サプライチェーンの持続可能性リ
スクのマッピング
リ
ス
ク
発
生
の
可
能
性
ビジネス・リスクも社会リスクも以下の要素
に影響を受ける:
 取扱高:自社にとって直接・間接を問わず、
最も高い取扱高を持ち、最も影響力を行使
できる可能性のあるサプライヤーか?
国:サプライヤーがどの国で操業している
のか? そして脆弱な法規制の枠組みや腐
敗度の高さなどから、どの国のリスクが高い
と判断できるのか?
カテゴリ:製品・加工のサプライヤーも含め
てどのサプライヤーが自社にとって最も重要
か?
段階:自社と直接に取引をするサプライ
ヤーか、二次サプライヤーか?
取引の性質:サプライチェーンにおける条
件に関する透明性やアカウンタビリティが取
引によって左右されるか?例えば、請負業
者が雇用する労働者、ブローカー、代理店、
仲買業者などは知識、認識、影響力におい
てギャップが生まれる可能性が高い。
サプライチェーンでのリスクのマッピングに
は大きく2段階ある:
1.リスク事象を特定する。例えば、サプライ
チェーンのある工場での低賃金支払などの
出来事は自社のビジネスにとってリスクを起
こしうる。法律に反しているだけでなく、持続
可能なサプライチェーンの達成や事業目的
に影響を与えるような、内部発生若しくは外
部発生両方の出来事が特定されなくてはな
らない。リスクには、事業継続、規制、評判、
市場による受け入れ、顧客による要求事項
などが含まれる。外部のステークホルダーは、
その他の社会的・環境的・経済的・ガバナン
ス上のリスクを特定してくれる可能性がある。
そのようなリスクについては自社にとっての
影響度合いを評価する必要がある。
2.リスク事象の可能性と影響度の評価。リス
ク事象はその発生可能性と影響度について
分析する必要がある。自社のサプライチェー
ンの持続可能性プログラムの中でどのよう
に管理されるべきかを決めることにつながる。
左図に示されているように、「発生可能性」
と「結果の重要度」の2つの軸で構成される
格子状の図にリスク事象を落とし込むことが
有益だと多くの企業は考えている。リスクを
リスクによる影響/重要度
29
ランク付けするのに、別の項目やインプット
を追加することも可能である。例えば、リス
クに関する認識はステークホルダーによっ
て異なるが、自社が優先順位づけをする際
にこのような認識を考慮に入れることは考
えられる。
最後に、自社のサプライチェーンの細分
化を効率的に行うためにこれらの分析を活
用するには、サプライヤーの種類ごとにリ
スクを解釈する必要がある。例えば、ある
IT企業は最も高いリスクは製造に使われて
いる原料の鉱物であるとするかもしれない。
したがって、同社は、サプライチェーン・プ
ログラムにもとづいてサプライチェーンの持
続可能性プログラムに焦点を当てようとす
るだろう。一方で、ある医薬品企業は品質
や患者の安全性が危険にさらされる可能
性から、製品の輸送段階に最も高いリスク
があるとするかもしれない。この企業は、ビ
ジネス倫理、労働、事業継続に関する課題
に対処するために、ロジスティクスのサプラ
イヤーと協働することになる。ロジスティク
スや運輸・交通における温室効果ガス排出
や包装廃棄物、環境マネジメントなどのリ
スクは多くの産業にとって共通の課題だが、
事業規模によって必要とされる取り組みは
異なるだろう。
例:サプライヤー・マッピングを通して、メキ
シコの建築物資材企業であるセメックス社
(CEMEX)は、サプライチェーンに対する支
出の80%がサプライヤーの20%に行って
いることに気付いた。サプライチェーン全体
の規模の大きさとサプライヤーの変化に及
ぼしうる影響力から、セメックス社は20%に
注力することで効率的に持続可能性を向
上させ、ビジネス価値を実現できると判断
した。
ルクセンブルクに拠点を持つ鉱山会社であ
るアルセロール・ミッタル社(Arcelor Mittal)
は、鉄鉱石などの原材料から加工度の高
い下流の製品・サービスまで500億米ドル
のサプライチェーンをもつ。サプライチェー
ンのカテゴリごとに持続可能性に関わるリ
スクと機会をマッピングするために、机上
調査だけでなく内部専門家、調達チーム等
からのインプットを活用した。同社は、リス
クをマッピングする手法は、しっかりとして
いると同時にシンプルであり、組織の核心
部分であるリスクマネジメントアプローチと
整合性がないと、対処すべきカギとなる優
先事項を具体化できないと確信した。調達
カテゴリごとに2×2のマトリックス(影響度
×発生可能性)を作成することとし、内部
の幅広い作業グループから参加者を募っ
たワークショップを開催し、課題とともに機
会について議論を行った。リスクマップを最
新の状態に保つためには定期的にこのプ
ロセスを繰り返す必要があるだろう。
30 サプライチェーンの持続可能性
例:サプライチェーンにおける環境・健康・安
全影響に対処するために、インドの企業グ
ループであるマヒンドラ&マヒンドラ社
(Mahindra &Mahindra Limited)は、サプライ
ヤーと自社の知識やベスト・プラクティスを共
有するプログラムを始めた。すべてのサプラ
イヤーに詳細なアンケート票が配布された。
このアンケートにより、サプライチェーンにお
ける現在の工程や無責任は廃棄物処理な
ど環境面での課題のレベルを理解する基礎
となった。サプライヤーが次のように分類さ
れた。
A. EMS/OHSAS認証なしで、有害な工程、危
険な業務を行っているサプライヤー
B. EMS/OHSAS認証ありで、有害な工程、危
険な業務を行っているサプライヤー
C. EMS/OHSAS認証はないが、有害な工程、
危険な業務を行っていないサプライヤー
D. EMS/OHSAS認証ありで、有害な工程、危
険な業務を行っていないサプライヤー
同社の改善プログラムを継続するに当たり、
A及びBに分類されたサプライヤーへの対処
が優先された。
例:日本の技術ハードウェア機器企業であるエプソン社では、サプライヤーを下記のコント
ロールレベルで組織化した。サプライヤーは、同社のCSRに関する取り組みへの影響度と
製造を維持する能力によって5つのレベルに分類される。
サプライヤーのコントロールレベル
コントロール
レベル
ガイドライン
レベル 1
CSR及びコンプライアンスへの影響は低い、製造への影
響はなし
レベル 2
CSR及びコンプライアンスへの影響はある程度あり、製造
への影響はなし
レベル 3
CSR及びコンプライアンスへの影響はある程度あり、製造
への影響は間接的
レベル 4
CSR及びコンプライアンスへの影響はある程度あり、製造
への直接の影響がある。代替サプライヤーがいる
レベル 5
CSR及びコンプライアンスへの影響はある程度あり、製造
への直接の影響がある。代替サプライヤーがいないため、
製造を維持するのに問題がある
32 サプライチェーンの持続可能性
33
第5章
サプライヤーとの関係構築
サプライヤーとの関係構築(エンゲージメン
ト)における究極の目標は、持続可能性の問
題についての共通認識を構築し、サプライ
ヤー自身が持続可能性についてのビジョン・
戦略・パフォーマンスについて当事者意識を
持つようにし、サプライヤーと優先事項を共
有してより密接に協力できるようにすることで
ある。
企業がサプライチェーンにおける持続可能
性を改善するために利用できる手段は様々
存在している。この章で紹介するメカニズム
は、サプライヤーの意識を向上させるととも
に、サプライヤーが改善点への障害を乗り越
えられるようにするために、企業がサプライ
ヤーに対する期待事項を定め、継続してサプ
ライヤーのモニタリングを行い、彼らと協力す
ることを通して、持続可能性を彼らの事業に
組み込み推進していくことを推奨することに
フォーカスしている。
下記の図は、広範囲にわたる業界の企業
がサプライチェーンの持続可能性に関してサ
プライヤーと関係を構築する場合に用いる各
ツールを示している。各ツールには、特定の
目的があり、サプライヤーとの関係構築ツー
ルは、どれをどの範囲で使用すべきかを決
定するために、戦略的プロセスを採用するこ
とが重要である。
持続可能性に関する
サプライヤーとの関係構築ツール4
深い
エンゲージメント
パートナー
シップ
持続可能性に関する
パフォーマンスが低い根
本原因に対処するためサプラ
イヤーの当事者意識を高める
是正と
キャパシティ・ビルディング
広い
エンゲージ
メント
パフォーマンスが低い問題に対処するよう
サプライヤーへ依頼する。
訓練、経営資源を提供し、持続可能性の
マネジメントとパフォーマンスの改善を支援する。
監視と監査
サプライヤーに対し持続可能性の
パフォーマンスの自己評価を依頼する。
期待を設定すること
自社の持続可能性に関する期待をサプライヤーへ伝える。
行動規範を含めた期待を契約に含める。
4
BSRから引用
34 サプライチェーンの持続可能性
コミュニケーションの方法選択
サプライチェーンにおける持続可能性を向
上させる最初のステップは、自社が持続可能
性のパフォーマンスに対して何を期待するの
かについての意識を高めることである。(第3
章に記載されているように)多くの企業はそ
のために自社の行動規範を利用している。
そのうえ、さらに以下のような2つのコミュニ
ケーションの方式がある:
すでに存在している顧客-サプライヤー
間のコミュニケーションを利用すること
どの企業でも、サプライヤーとコミュニケー
ションを取るために、ある程度のプロセスや
方法をすでに持っているものである。こうした
プロセスや方法には、非常に基本的なもの
から非常に洗練されたものまで、様々なアプ
ローチがある。しばしば、こうしたコミュニケー
ションは、調達専門担当者が主導しており、
サプライヤーとの関係の事業面にフォーカス
している。
共通の考え方を構築し、中核をなすメッ
セージを強化し、フィードバックの機会を提供
するため、企業は定期的に自らが持続可能
性に関して期待するところ、そしてそれに関
する対話を、こうした通常のコミュニケーショ
ンに取り込む方法を検討すべきである。この
アプローチではサプライヤーも、自社の要求
(例えば、仕様を命じる短いリードタイムまた
は多くの変化)が原因で起こる制約や緊張関
係といった問題について話し合うことができ
る、対話のプラットホームを提供するという利
点がある。話し合いの場に必要な関係者を
揃えることは、ビジネスと持続可能性両方の
要求事項を満たす方法を特定するのに役立
つ。
持続可能性をサプライチェーンに関す
る話し合いの場で議題に加えること
新しい兆し
サプライヤーの話し合いの場に参加して、
自らの業界において持続可能性の面で何が
期待されているのかを説明することで、自社
の課題と優先事項を共有する組織をより特
定しやすくなる。こうした議論にはサプライ
ヤーの他、同僚、パートナー、政策立案者、
その他の幅広い範囲におけるステークホル
ダーを含むことができ、それによって自社の
優先事項と持続可能性についての詳細を共
有することができ、そして、他者のアプローチ
についても学ぶことができる。こうした話し合
いの場は、自社のプログラムに関するフィー
ドバックを得て改善点を特定するため、また、
共通対応を必要とする組織的な課題を解決
するのに必要な支持を形成するために重要
な機会である。
例:日本の画像技術会社である富士ゼロック
ス社は、2006年に倫理調達プログラムの実
施を開始した。これは、顧客からの需要に答
え、同社の製造施設における環境・労働問
題のマネジメントに関連して顧客が抱える懸
念に対応し、サプライヤーが同社の求める基
準を遵守していない場合に被る製造上及び
ブランド形成上のリスクを最小化し、さらに、
製品と製造品質を改善するために行われた。
自社のプログラム実施の第一歩として、富士
ゼロックス社は2006年に自社の主要なサプ
ライヤー9社の取締役と、「倫理的調達研究
セッション」を行った。研究セッションには、中
国広東省の深圳における、5日間の会議が
含まれており、この会議には約50名が参加。
サプライヤーの取締役、深圳地域の彼らの
工場長と、深圳富士ゼロックス社の取締役を
含んでいた。このサプライヤーの研究グルー
プは、同社の倫理調達プログラムの発動を
成功させるために、決定的に重要な意味を
持つものであった。
強い持続可能性パフォーマンスへのインセンティブを作り出すこと
サプライチェーンの持続可能性へ
の取り組みを始める多くの企業は、
持続可能性問題に関するサプライ
ヤーのパフォーマンスがかんばしくな
い場合にその問題を解決することに
集中している。しかし、しばしば、サプ
ライヤーは否定的な結果より、パ
フォーマンスを良くするというインセン
ティブによって、より動機づけされる。
自社のサプライチェーン持続可能
性プログラムが進化するにつれ、企
業は一貫した強いパフォーマンスの
ための明確なベンチマークと報酬を
確立することを考えるべきである。
インセンティブは、以下を含む。
監査の実施回数を減らす
優先サプライヤー・プログラムを確
立すること
取引を増やすこと
認知し、褒賞を提供すること
買い手/サプライヤーに関する戦略
的企画会議へ彼らの参加を許すこと
持続可能性改善のためにコストを
共有すること
キャパシティ・ビルディング(能力構
築)を支援すること
例:マヒンドラ&マヒンドラ社
(Mahindra & Mahindra Limited)は、
自動車と農機具製造会社である。農
機具セクターは、グローバル・レポー
ティング・イニシアティブ(GRI)ガイドラ
インによって定義される持続可能性
の面で進展を示しているサプライ
ヤーのため、年間持続可能性賞を設
けている。これまで、17社のサプライ
ヤーがGRIガイドラインやステークホ
ルダーとの関係構築などのツールに
ついてのトレーニングを受けている。
35
アメリカ合衆国に拠点を置く食物と飲料企
業であるコカ・コーラ社(The Coca-Cola
Company)は、2009年に、ビジネス成長計
画における重要な要素として持続可能性
を根付かせる必要性について話し合うため
に、全世界の主要サプライヤーをアトラン
タに集め、コカコーラ社の上層部経営者が
会合に参加した。会議の間に、会長兼CE
Oは、サプライチェーンの進化に関する彼
の考えを全体と共有した。それには、安い
経費、速度、効率とカスタム化というものは、
単に今日の市場で競争するための入り口
に立つために支払う対価でしかなく、持続
可能性がいかに消費者及び顧客の差別化
のために重要であるかについての説明が
含まれていた。トップダウン指令を課すより
はむしろ、同社は長期にわたる相互の成
功を確実にするために、サプライチェーン
における持続可能性の改善に関するサプ
ライヤーの戦略的な助言を求めた。サミッ
トの後で、コカ・コーラ社は、サプライヤー
からほぼ200の提案を受け取ったが、それ
に含まれていたのは持続可能な包装、ロ
ジスティクス、持続可能な農業、水資源管
理とポートフォリオの革新に関する考えや
戦略であった。コカ・コーラ社は、参加した
32社のサプライヤーと、個々の行動計画と
集団での行動計画を展開している。
モニタリングと監査
モニタリング・システムは、サプライヤー
が、自社が用意した行動規範と期待事項
に従っているかどうかに関する情報を提供
するものである。モニタリング・システムは、
ベースラインとなる測定値を確立して、最
小限の期待事項と比較して最近と現在の
パフォーマンスを評価することに効果的で
ある。しかし、モニタリングに関してコンプラ
イアンス・ベースのアプローチを取ることは、
経費、サプライヤーの生産活動の混乱、集
められる情報の正確さに対する疑念と労
働者の安全性への潜在的リスクに対する
懸念を生み出す結果となっている。信頼で
きる情報を集め、コンプライアンス監査の
結果に過度に頼らないようにするためには、
どのようなアプローチを採用するか、さらに、
そのアプローチをどのサプライヤーに適用
するか、慎重に考えるべきである。
サプライヤー自己評価
多くの企業は、新しいサプライヤーを選
ぶ際の最初のスクリーニング作業として、
または、どのサプライヤーがより緊密なモ
ニタリングを必要とするかを特定するため
のリスクアセスメントの一部として、サプラ
イヤーに対して自らの持続可能性に関す
るパフォーマンスの自己評価を行うよう奨
励している。自己評価は顧客に有用な情
報を提供することができ、そのうえサプライ
ヤーが顧客の期待事項を理解する手助け
となる。多くの企業はまた、比較的短い時
間内でかつ低いコストでサプライヤーの大
部分をカバーするためには、監査よりも自
己評価がいいスタート地点であるという結
果を得ている。
しかしながら、信頼できる自己評価は、信
頼、サプライヤーの自らの組織の異なる部
署から情報を収集する能力、さらにサプラ
イヤーが何を求められどう情報が使われる
のかを理解するための明確なコミュニケー
ションにかかっている。例えば、二重帳簿
の問題は時として、パフォーマンスが低い
と即刻取引を失うかもしれないというサプラ
イヤーの懸念が原因である。
例:コンピュータ大手企業のヒューレット・
パッカード社(HP)は、電子業界CSRアライ
アンス(EICC)のメンバーである。同社は、
ハイリスクと特定したサプライヤーには、潜
在的な社会・環境責任上のパフォーマンス
リスクを特定するために、コンピュータ画面
上の自己評価アンケートに記入することを
要請している。HPは自己評価の結果を審
査し、フィードバックをサプライヤーに提供
する。これを受けたサプライヤーは、必要
に応じて改善計画を作成し実行することに
なっている。サプライヤーの自己評価は、
HPのリスク評価の手助けとなるだけでなく、
HPのサプライヤーが、HPの行動規範を遵
守するとはどういうことを意味するのかに
ついてのHPの期待事項をよりよく知るのに
役立つことが証明されている。
36 サプライチェーンの持続可能性
コンプライアンス監査は、自社の方針と期
待事項に対するサプライヤーのパフォーマン
スを現場で審査することである。下の図に示
されるように、監査は一般的にいくつかの要
素を含む。監査には、サプライヤーの持続
可能性のマネジメントシステムの有効性につ
いての情報を集める、マネジメントシステム
の審査を含むこともできる。特定の業界には
いくつかの監査プロトコルがすでにあり、こ
れを利用することができる。例えば、グロー
バル・ソーシャル・コンプライアンス・プログラ
ム(Global Social Compliance Programme )は
企業が自らのシステムとして採用あるいは
ベンチマークとして使用することのできる参
照用ツールの中に、監査プロセスのベスト・
プラクティスを集めている。
監査は、自社のスタッフが、または、第三
者の監査会社が行うことができる。外部監査
員をいつ、なぜ、どう招請するかは、自らの
サプライチェーンのリスクマネジメントの全体
的な目的に合わせて決めることが望ましい。
外部監査員、内部の監査員は、それぞれ明
らかな利点を提供し、標準的な「正しい方
法」というものはない。実際、一部の企業は、
両方を利用している。
外部監査員に頼るべきか、あるいは内部
で監査能力を開発し維持すべきかどうかを
決める際、自らの方針に照らしてパフォーマ
ンスを評価するのにどんなタイプやレベルの
専門技術(例えば環境か健康と安全専門技
術)が必要か、またそれらがどの地域に存在
し、キャパシティがあるかどうかについて考
えなくてはならない。また、個々の資格も重
要で、監査結果の統合性と品質に影響を及
ぼす。相当な監査の要求事項がある企業に
とって、内部対外部投資の費用、実現可能
性と効果を慎重に考慮することは重要であ
る。また、サプライヤーが監査に対してどの
監査の要素
管理者インタビュー:
マネジメントシステム、
支払われた賃金、労
働時間等に関する
議論。
施設実地調査:
明らかな不遵守を見
つけるための設備の
視覚的点検。
サプライヤー
監査
労働者インタビュー:
労働条件に関し従業
員の代表サンプルで。
記録レビュー:
従業員ファイル、タイム
カード、健康と安全記録、
その他をチェックする。
ような見方をして、どのような影響を受ける
か、彼らが自社の事業にとってどれくらい重
要か、そして、自社がプロセスと結果につい
てどれくらいのコントロールをする必要があ
るかを考えなければならない。
効果的な監査は、以下を含む様々な
要因によって決定される:
工場、労働者、コミュニティに関する訪問
前の準備と知識
労働者からの信頼を得るために、経営陣
から距離を取ること(独立していること)
審査のすべての部分において、インタ
ビューには無作為に労働者を選ぶこと
労働者と、彼らが快適で安全だと感じる時
間と場所で、非公式な会話をすること
工場の状況の理解を確実にするのに十分
な情報を集めること
情報を文書化し、労働者の信頼性を評価
すること
他の情報源を使って労働者から得た情報
を確認すること
常に、労働者についての守秘性と安全を
保護する必要性を意識すること
例:フランスの化粧品企業であるロレアル社
(L’Oreal)はサプライヤーに対して「倫理コミッ
トメント文書」に署名し監査を受けることに同
意するよう要請している。「リスクのある」国
における原料、包装、現場保安、掃除サービ
ス、社員食堂のサプライヤーや販促品のサ
プライヤーだけでなく、すべての二次サプラ
イヤーは、どこで操業しているかに関わらず、
監査を受ける。他のサプライヤーは、必要に
応じて、ケース・バイ・ケースで監査を受ける。
監査はSA8000規格に基づいて、その土地の
言語で独立した専門の第三者監査員によっ
て行われる。実際の日付の予告なしで、監
査は予め同意された30日間の間に行われる。
監査には、工場、ワークショップ、事務所、現
場の宿泊設備への訪問と、従業員との個々
のインタビューを含む。最初の監査の費用
はロレアルがすべて支払い、さらに、最終報
告書はロレアルとサプライヤーとに平行して
送られる。
シューズ・衣類メーカーであるナイキ社
(Nike)は、過去10年にわたり、契約工場に
対して自社の行動規範のコンプライアンスを
推奨するために、多くのツールの使用を試し
てきた。同社のモニタリング・プログラムの主
要構成要素の1つは、そのマネジメント監査
検証(MAV)ツールである。これは、労働時
37
間、賃金、福利厚生、苦情システム、組合
結成の自由という5つの重要な分野におけ
るパフォーマンスを監査するために作られ
た労働評価ツールである。監査は工場の
労働者管理システムと実行にフォーカスし
たもので、ナイキ社のコンプライアンス・ス
タッフによって行われる。
日本の製薬会社である武田薬品工業は、
製薬サプライチェーンの完全性を確実にす
るために、パートナー候補のリスクアセスメ
ントを含むサプライヤー資格・モニタリン
グ・プロセスを実行した。これは、ビジネス
のパフォーマンスだけでなく品質保証、EHS
と安全性の視点から行われている。このプ
ロセスは、原料の新しいサプライヤー、契
約メーカーとロジスティクス・サービス・プロ
バイダに適用される。そのうえ、武田薬品
工業は原料のサプライヤー、契約メーカー、
パッケージ業者、ロジスティクス・センターと
ディーラーを対象に定期的な監査を行う。
武田薬品工業の社員によるモニタリングと
監査は、時々は外部監査員のサポートを
得ることで補われている。武田薬品工業の
設定する規則と期待事項を遵守しているか
どうかは、アンケート、施設視察、方針の
チェック、標準操業手順、記録とインタ
ビューによってチェックされる。特定したリ
スク事象が現実になる可能性とその程度
が審査され、是正と予防のための行動を
監視する。
是正とサプライヤーのキャパシティ・
ビルディング
サプライチェーンの持続可能性は、進化
中の考え方である。そして、それは継続的
な改善を定義し動機付けるアプローチが重
要であることを意味する。このアプローチ
は、サプライヤーのマネジメント能力に投
資をすること、さらに遵守していない場合の
是正方法の両方を含むべきである。
是正には、次のような活動を含むこ
とができる:
サプライヤーと協力し、明確に定義した
理にかなった時間枠内でコンプライアンス
を達成するために是正行動計画をつくる。
遵守していないサプライヤーとの定期的
なコミュニケーションを通して、改善を推奨
する。
基準と期待事項のレベルを徐々に上げ
るために、ロードマップを定める。
「許容度ゼロ」である問題に関する深刻
な欠点が、度重なる通知にもかかわらず是
正されない場合に、サプライヤーとの関係
を終了する。企業は、許容度ゼロとする問
題を特定し、前もって自らの選択と遵守し
ない場合の処置を、サプライヤーに説明す
べきである。企業は、是正のためのプロセ
スと、継続して遵守をしない場合いつの時
点で関係の終了となるのかを、前もって説
明すべきである。
是正の要求事項をサプライヤーに非常に
明確に伝えること、さらに、遵守しない場合、
あるいは継続的なパフォーマンスの不良に
は、確立された時間枠と処置を設けること
は、重要である。
例:オランダの電子機器会社であるフィリッ
プス社(Philips)は、以下の5本の柱をもとに
作り上げられるサプライヤー持続可能性関
係プログラムを実行した:要求事項を設定
すること;理解と合意を構築すること;EICC
チェックリストを使用した監査によって、リス
クがあると特定したサプライヤーをモニタリ
ングすること;問題の解決のためにサプラ
イヤーと協働すること;さらにステークホル
ダーを関与させること、である。監査の間に
違反が見つかった場合、30日以内に是正
行動計画(CAP)について合意する。フィリッ
プス社は、必須の措置、マイルストーン、責
任を規定し、CAPの定義と計画の進展の監
視においてサプライヤーと協働している。
フィリップス社のサプライヤー持続可能性
担当者は、毎月のフォローを行い、必要に
応じて責任調達部長に必要事項をあげる
ことができる。
英国のダイヤモンド会社であるデビアス社
(De Beers)は、ダイヤモンドの供給経路全
体を通して社会、雇用、事業、健康、安全、
環境の問題を解決するための、ベスト・プ
ラクティス原則(BPP)保証プログラムを開
始した。デビアスは原則に照らして宝石
メーカーと小売業者のパフォーマンスを評
価し、重大な違反があった場合、メーカー
は問題を解決するためにCAPの提出が義
務付けられている。CAPがきちんと継続的
に実行されていることを確実にするために、
証拠がオンラインで提出されるか、第三者
監査員が現場を再度訪問することになって
いる。CAPプロセスは、継続的な改善と、問
題となる分野において持続可能な解決策
モニタリング・プロセ
スに参加する労働
者を保護すること
モニタリング・プロセ
スに参加する労働者は、
報復から保護されるべ
きである。
労働者は自由に発言
することができ、彼らが
提供する情報は特定
の個人によるものだと
特定されないという保
証を与えられるべきで
ある。
労働者は、可能な場
合、自国語でコミュニ
ケーションする手段を
提供されるべきである。
38 サプライチェーンの持続可能性
が実行されていることを確実にするための仕
組みを提供する。デビアス社は、CAPプロセ
スにおいて相談を受け付け、問題をより効率
よく解決できるよう過去の経験に基づきアド
バイス、ベスト・プラクティス、及び情報を提
供している。さらに、業界に共通の、また、地
域に特有の問題点を話し合い協力しあうた
めと、共通の問題に対して持続可能な解決
策を見出すために、メーカー達自身が発起
人となり、メーカー委員会が結成されている。
食品飲料会社であるネスレ・インド社(Nestle
India)は、品質問題と食品安全性問題を克
服し、より広範囲で柔軟な供給ベースを作り
出すため、さらに輸入への依存を減らすこと
によってコスト削減を成し遂げるため、2005
年にサプライヤー開発の専門部署を設立し
た。同社は、トレーニング・プログラムを通し
て、また、安全性と品質の問題に対処し、サ
プライヤーのマネジメントシステムと製品を
改善するために技術支援をサプライヤーに
提供することで、サプライヤーとの協働に投
資している。これらのサプライヤー開発への
取り組みの結果、ネスレ・インドは以前に輸
入した12の原料について現地ソースを確保
し、10件について単独のサプライヤーに依
存するのを避け、ネスレの仕様を満たすこと
ができる70以上の新しいインドのサプライ
ヤーを発掘し、5,100万米ドルを節約すること
ができた。2009年内に、ネスレはバングラデ
シュ、ブラジル、インドネシア、イラン、マレー
シア、ロシアと南アフリカでも同じイニシア
ティブを実行している。
サプライヤーの
キャパシティ・ビルディングの機会
学習とキャパシティ・
ビルディングを監査
プロセスに統合する
不遵守の主な領域に
おいてサプライヤー
または労働者の
トレーニングを
提供する
サプライヤー
キャパシィ・
ビルディング
サプライヤーが独自
にアクセスし、利用で
きるツールの提供
サプライヤーの
学習ネットワークを
作成または支援する
是正への取り組みは、サプライヤーのマネ
ジメント能力を構築する努力と組み合わせた
場合に、最も高い成功を収めている。キャパ
シティ・ビルディングは、サプライヤーの従業
員のためのトレーニングから、労働者のため
のホットラインと資源ネットワークの確立まで、
様々な取り組みを含む。例えば、様々な実
践的ワークショップ、トレーニング、工場にお
けるコンサルテーションを通して、国際労働
機関(ILO)の工場改善プログラム(FIP)は、
工場の競争力強化、労働条件の改善、さら
に、管理者と労働者の間の協働とコミュニ
ケーションの強化を手助けする。
例:HP社は、EICC行動規範がサプライヤー
工場で管理者だけでなく労働者にも周知さ
れることを確実にするために、地元の労働者
トレーニングを行うNGOの支援を得て、サプ
ライヤー2社と労働者トレーニングのパイロッ
ト・プロジェクトを完了した。トレーニングは
4,000人以上の労働者に対して行われ、労働
者が自らの労働権を理解する手助けとなる
とともに、彼らに自らの労働環境に関する懸
念について伝えるコミュニケーション・チャン
ネルを提供した。
トレーニングは、以下の項目を対象とした:
労働権に関する意識を向上させる
労働者ホットラインを確立して、従業員に
ホットラインの管理の仕方を教える
労働者代表委員会への個別対応指示に
よって労働問題を解決する
コミュニケーション・プログラムを編成する
ためのカウンセリングのスキルと技術
このパイロット・プロジェクトは、上級マネ
ジャーが労働者の要求や不平を理解するの
に、労働者のフィードバックがどのように役
立つかを表しているとして、NGOの称賛を受
けた。HPはパイロット・プロジェクトを他の工
場にも適応させ、2010年に類似したプログラ
ムを引き続き実行する予定である。
BSRの中国トレーニング・イニシアティブ(CTI)
では、100万人以上の労働者を雇用している
工場のマネジャーに対して実践的学習の機
会を与え、労働条件を改善するためのマネ
ジャーの能力とコミットメントを強化するため
のツールを開発した。CTIは、買い手とメー
カーにとって経営資源の働きをし、企業責任
と持続可能性に関する課題に取り組み、買
い手の期待事項に応えられるようにするた
めのスキル、ツール、経営資源を用いて、買
い手の期待とサプライヤーのニーズとを橋
渡ししている。
「持続可能なサプライチェーンに
よって、我々は、製品・サービスを生
産し、顧客に提供する際に生じるリス
クを減らすことができ、その結果、
我々の事業は利益を得ることができ
る。また、サプライヤーとのより緊密
な関係を発展させる機会を得ること
ができ、企業にとって長期的な利益
となる。」
エリク・エングストローム(Erik Engstrom)
リード・エルゼビア 経営最高責任者
40 サプライチェーンの持続可能性
例:リーバイ・ストラウス社(Levi Strauss &
Co)は、自社のエンゲージメント規定(TOE)を
実行するのに役立ついくつかのトレーニング
を開発している。これには、工場、監査役と、
工場における労働条件に関心のある外部の
ステークホルダーの参考資料としての詳細
なTOEガイドブックを含む。
二次サプライヤーとの関係を構築すること
先に述べたように、企業は時として、サプラ
イチェーンにおいて一次またはそれ以上離
れたサプライヤーにかなりのリスクが存在し
ていることを発見する時がある。例えば、食
品会社・農業会社は、彼らが直接はめった
に買わない農場において、児童労働という
深刻な問題に直面した。電子機器産業は、
製品に使われる鉱物のために、紛争地域に
おける採鉱という問題を抱えている。
二次サプライヤーと関係を構築することに
は、前述の課題に加え、サプライチェーンに
おける透明性の欠如や企業の力不足などを
含む、その他の複雑な問題が付随してくる。
これらの障害を克服するために、企業は以
下を含むいくつかの戦略を進めている:
業界における協働への参加。他の企業と
協働することによって、自らの二次サプライ
ヤーに対する影響力を大きくするために、力
を結集することができる。サプライヤーとの
関係構築に必要なコストや経営資源を共有
することもできる。
新しい兆し
公共政策への参加。多くの企業はまた、自
らの力の欠如を、持続可能性問題の法的な
規制による是正を求めることで克服しようと
する。
サプライチェーンの最適化。個々の企業は
また、より小規模なサプライヤーを一つにま
とめ、仲介者を減らすことによって、サプライ
チェーンを短くするための処置を取ることも
できる。これによって、小規模なサプライ
ヤーが得る収益を増やすこともできる。
例:カカオのサプライチェーンに関してネスレ
社の発表しているビジョンは、カカオ農家が
収益性のある農場を運営でき、環境を尊重
し、クオリティ・オブ・ライフが保たれ、農家の
子供達が教育を受けカカオ栽培をきちんとし
た職業として見るようになる手助けをするこ
とである。しかし、多くの場合、ネスレ社はサ
プライチェーンにおいて農家から5層以上離
れたところにいる。カカオ農園における児童
労働の課題を解決すべく、ネスレ社は他企
業、世界カカオ財団、国際カカオイニシアティ
ブとともに、コートジボアールとガーナの政府
を巻き込んで、産業界が支援する認証プロ
グラムを設立した。このプログラムは、カカオ
農園における児童労働のための基準に照ら
し合わせた規定とモニタリングに加え、農業
経営の実態の改善と、農家にカカオの収益
がより多く行くようにするためのサプライ
チェーンの簡素化、さらにコミュニティ開発支
援のためのトレーニングを提供している。
サプライヤーにグローバル・コンパクトへの参加を促すこと
企業は、自社のサプライヤーが彼ら
自身で持続可能性を追求するように
奨励すべきである。その1つの方法と
して、グローバル・コンパクトと世界中
にあるローカル・ネットワークに参加
するのを奨励することが挙げられる。
グローバル・コンパクトへの参加は、
サプライヤーが持続可能性問題に真
剣に取り組んでいる証しである。
例:フランスの電気部品・電気機器企
業であるシュナイダー・エレクトリック
社(Schneider Electric)は、2005年以
降、自社のサプライヤーと下請企業
に対し、グローバル・コンパクトに参
加するよう要請している。グローバ
ル・コンパクトへの参加は、シュナイ
ダー社の主要サプライヤーになるた
めの条件の一つとなっている。シュナ
イダー社は、2010年内に自社の調達
の60%をグローバル・コンパクトを支
持するサプライヤーから行うようにす
るという目標を設定した。2009年の終
わりには、調達の33%がグローバル・
コンパクトに署名したサプライヤーか
らのものとなっており、シュナイダー
社のサプライヤーのうちの1,153社が
グローバル・コンパクトに署名してい
た。同社の調達部は、これらの関連
事項に関してサプライヤーからの協
力をより得られるようにグローバル・
コンパクト原則についてトレーニング
を受けてきていた。さらに、同社はど
のサプライヤーが進捗状況報告
(COP)を怠ったためにグローバル・コ
ンパクトのリストから外される危険性
があるかを注意深くモニタリングする。
41
新しい兆し
持続可能性マネジメントシステムとパフォーマンスの監査から透明性確
保へ移行する
サプライヤーとの関係構築における究極の目標は、サ
プライヤーが持続可能性に関して当事者意識を持つよ
うにすることである。これは、サプライヤーが自らのミッ
ション、戦略、そして、意思決定に、責任ある労働・環境
条件への投資の価値、影響及び収益を統合した時に起
こるものである。
自社のサプライチェーンにおけるリスクと課題を理解
するために、モニタリングと是正は必要不可欠であるが、
モニタリングによって達成できることには限界もある。モ
ニタリングは、問題の根本にある原因を特定するため、
または改善のための将来的な期待事項を確立する、あ
るいは現れつつある問題に対して注意を共有するため
には、効果的なツールではない。これらの点は多くの場
合、競争的優位やその他の事業価値を生み出す源であ
る。
企業とサプライヤーは、どちらも、サプライヤーが持続
可能性問題に対して当事者意識を持つことを可能にす
るのに同等の役割を担っている。
具体的には、企業は以下のようにすべきである:
関連する事業情報をサプライヤーと共有する。
長期の関係を築く。
持続可能性のためのインセンティブをつくる。
持続可能性マネジメントシステムの改善を期待する。
透明性を奨励し、報酬を与える。
自社の事業習慣が、サプライヤーが持続可能性に関
する期待事項に応える能力にいかに影響を与える可能
性があるかに対して敏感になる。
上記同様に、サプライヤーは以下のようにすべきであ
る:
執行役個人のコミットメントを示す。
持続可能性を戦略的計画と評価に統合する。
継続的改善を示す。
CSRに関する課題と進展を能動的に企業に伝える。
サプライチェーンにおける持続可能性のリーディング・
カンパニーは、持続可能性マネジメントシステムを開発
することでサプライヤーの持続可能性問題に対する当
事者意識を構築しようとしている。一部の企業は、認識
を向上させるために持続可能性マネジメントシステムの
評価を監査手順に組み込み始めている;また、その他
の企業の中には持続可能性マネジメントシステムの設
計についてサプライヤーにトレーニングやコンサルティ
ングを提供しているところもある。そしてさらに、一部の
企業は、インセンティブを増やし監査を減らすことで、持
続可能性マネジメントシステム開発に対して継続的な改
善アプローチを強調する改善の階段を設けている。
例:マヒンドラ&マヒンドラ社(Mahindra and Mahindra
Limited)は、いくつかの地域でマネジメント能力を向上さ
せるために、選ばれたサプライヤーと協働している。同
社の農機具セクターは、品質問題に対処するサプライ
ヤーの能力を構築する補助的措置として、マヒンドラ黄
色ベルト(MYB)事業パートナートレーニング・プログラム
を確立した。このトレーニング・プログラムは、2日のト
レーニング、学習目的が達成されたことを確かめるテス
ト、そして、学習したことを実際に適用するための、サプ
ライヤーが選びマヒンドラの認めるフォローアップ・プロ
ジェクトを含む。
フランスの通信企業であるアルカテル-ルーセント社
(Alcatel-Lucent)は、広範囲に使用でき、サプライヤーの
CSRマネジメントシステムのパフォーマンスを批判的に分
析できる評価アプローチを開発した。その意図は、従来
の監査方法を越え、より肯定的なアプローチを開発する
ことであった。同社は内部の経営資源をより戦略的なサ
プライヤー開発活動に集中させる一方で、2008年にエコ
ヴァディス社(EcoVadis)とパートナー協定を結び、サプ
ライヤーのCSRマネジメントシステムのより深い評価を可
能にするためにウェブベースの協働プラットフォームを
開発した。評価は、国連グローバル・コンパクト、GRIガイ
ドラインやISO 26000ガイドラインの草案を含む国際的な
ツールをベースとしており、150の製品カテゴリのために
カスタマイズされた21のCSR指標を含んでいた。サプライ
ヤースコアカードは、(i)サプライヤーの自己申告した情
報、(ii)文書監査、(iii)複数のステークホルダーによる
「360度監視」を含むいくつかのインプットを組み合わせ
たものである。2009年には300のサプライヤー評価が行
われ、半分以上は改善計画または現場での監査などの
付加的アクションを伴う結果となった。評価は、持続可
能性をどんな風に考えるべきかということ、さらに、弱点
を改善するために提案された行動に関して、サプライ
ヤーとの実りの多い議論を引き起こした。
42 サプライチェーンの持続可能性
43
第6章
役割と責任の決定
サプライチェーンの持続可能性に関する
戦略は、サプライチェーンに影響を与える
事業戦略と一体化され、密接に連携される
ものでなければならない。
組織内部での連携
多くの企業におけるサプライチェーンの
持続可能性にとって最も解決の困難な課
題のひとつは、調達専門担当者の業務上
の目的と、持続可能性の目的やグローバ
ル・コンパクトへのコミットメントとの間に解
消困難な葛藤が存在するということである。
この葛藤は、サプライチェーンの持続可能
性と調達管理を担当する社員との間での
異なった目標として現れてくる。
内部連携が十分でないときには、サプラ
イヤーによるサプライチェーンの持続可能
性に関するパフォーマンスに対してマイナ
スの効果をもたらしかねない。例えば、最
終段階において供給量を変更することは、
もしサプライヤーがタイトになってしまった
予定に合わせるために作業者に時間外労
働の増加を強いることになると、労働条件
を悪化させるような著しい時間的圧力をか
ける結果となる。
サプライチェーンの持続可能性プログラ
ムの実施を成功させるためには、下図に示
すような3段階の内部的責任が必要となっ
てくるのである。
ガバナンスと監督: 経営幹部による
リーダーシップと取締役会
経営幹部や取締役会のコミットメント、監
督、支援は、サプライチェーンの持続可能
性に正しい基調と方向性を与えるためにと
ても重要なものである。経営幹部は、サプ
ライチェーンの持続可能性に関する企業の
ビジョンとそれに対する取り組みに関して、
具体的なマイルストーンと達成度評価基準
を示すことにより明確な意思を示す必要が
ある。経営幹部による文書上あるいは会話
によるコミュニケーションは、ビジネス・マネ
ジャーと調達専門担当者の持つ優先課題
をこれらのマイルストーンと一元化させ、事
業を進める上で持続可能性が重要である
ことを強調する助けとなるであろう。経営幹
部や取締役会は、サプライチェーンの持続
可能性の目標に関する進捗についても定
期的に確認する必要がある。この経営幹
部による監督は、企業全体の従業員の責
任意識を強固にするであろう。さらに、経営
幹部は、企業内のサプライチェーンの持続
可能性に関する優先事項、成功例、残され
た課題に関して、企業内部における定期的
な情報更新を行う必要がある。
サプライチェーンの持続可能性の内部的責任の要素
経営者のリーダーシップ:
コミットメント、監督、支援
調達専門担当者:
プログラムの実行
ビジネス・マネジャー
(各事業部門の管理者):
部門横断的な調整
44 サプライチェーンの持続可能性
また、経営幹部は、調達専門担当者が
サプライヤーと適切なコミュニケーション
を保てるように、必要に応じてサポートを
すべきである。サプライヤー側の経営幹
部は同等の役職相互での交流を歓迎す
るであろうし、自社の最高幹部による関
与は、自社においてサプライチェーンの
持続可能性の問題が深刻にとらえられて
いることを証明する助けとなるであろう。
第3章で議論されているように、経営幹部
たちは行動規範の伝達という役割を担っ
ているのである。さらに、彼らは、高いパ
フォーマンスを上げるための刺激を与え
る役割として、サプライヤーとのミーティン
グに出席するということもできる(第5章参
照)。
例:HP社のサプライチェーンにおける社会的責任と環境責任(SER)のガバナンスシステムにおい
ては、HP社におけるあらゆる関連事業と関連業務に関して、報告と責任が明確化されている。そ
して、HPにおけるすべての事業部門が、サプライチェーン担当役員会を通してサプライチェーン
SERプログラムに賛助し支援している。この担当役員会は毎月開催されており、HP執行役員会に
直接結果報告がなされている。
HP執行役員会
(CEOと全てのHPの業務部門長)
サプライチェーン担当役員会
(HPの全業務部門のサプライチェーン上級副社長)
サプライチェーンSERプログラム
(サプライチェーン担当役員会の
支援のもと)
業務とその実施の支援
・社会・環境責任部門担当者連絡
会(担当者はサプライチェーン担
当役員会により指名)
・調達協議会
・サプライヤー関係管理マネ
ジャー
監査チームメンバーは以下から:
・グローバル調達サービス部門
・環境・安全・衛生部門
調達協議会
(HPの全業務部門からの調達に関
するリーダー)
サプライヤー関係マネジャー
サプライヤー企業
ステイクホルダー・
アドバイザリー
評議会
「ネスレ社(Nestle)は、社会と株主とに対する
価値を生み出したときに初めて、長期にわた
る事業の成功を達成できると信じている。私
たちは、これをCSV(Creating Shared Value; 共益
の創造) と呼んでいる。私たちは、自らのバ
リューチェーン(価値連鎖)を分析した結果、
社会と共同して価値を最適なものとする可能
性が最も高いのは、水、農村開発、栄養摂取
といった領域であると確信した。我々は、供
給の大元となる54万人に上る農業従事者と緊
密に活動することによって、彼らの生産性向
上や、貧困からの脱出の一助となることがで
きるのである。そのかわりに、彼らからさら
に良質な最終産物を得ることになり、これが
消費者の利益、究極的には私たちの事業の利
益にも結びついていくのである。私たちは、
他の企業もこの取り組みを取り入れることを
推薦するとともに、この新しいガイドがベス
ト・プラクティスの普及に役立つことを望む
ものである。」
ピーター・ブラベック・レッツマット
(Peter Brabeck–Letmathe)
ネスレSA
取締役会会長
46 サプライチェーンの持続可能性
規定されていることが重要となる。こうした
目標は、動機と努力の結果によって後押し
されるべきものなのである。
また、持続可能なサプライチェーンを担当
する社員は、企業全体を通じて機能してい
る戦略企画プロセスに対して、必要な情報
を提供する必要がある。この持続可能性を
企業における意思決定に根付かせるため
には、サプライチェーンでの影響を及ぼすそ
れぞれのチームに対して、持続可能性に関
する専門的知識を定着させるか、若しくはそ
れを利用可能な状態にしておく必要がある。
ビジネス・マネジャー間の部門横断的
調整
企業内部における異なる部門からの競合
する期待事項は、サプライチェーンの持続
可能性にマイナスの影響を与えることがあ
る。この持続可能性の持つ目的を堅持し、
サプライヤーがその期待に応えられるよう
にするためには、広い範囲における種々な
部門間の連携が必要となる。調達専門担当
者、製品企画、事業開発、ロジスティクス、
マーケティング、販売といったすべての分野
がサプライチェーンの持続可能性にインパ
クトを与えるのである。下図に示されている
ように、企業はどのようにしたら部門を超え
た部門代表者の連携をとることができるか
を考えなくてはいけない。こうすることによっ
て、このインパクトの内容を正しく把握する
とともに、これが企業事業の意思決定にお
けるどの部分で生じてくるかを明確にできる
のである。
それぞれが責任を負い、経営幹部によっ
て設定されたビジョンとマイルストーンを実
行に移し、その目的を果たすためには、企
業内における個々の役割と責任が明確に
例:南アメリカ全土において農業関連産業
をビジネス展開しているロス・グロボ・グ
ループ(Grupo Los Grobo)では、CEOが先頭
に立ち、調達部門と外部委託部門の管理層
によって組織されたサプライチェーン委員会
が設置された。それ以外の委員会参加者と
しては、同社の各地域においてサプライ
ヤー(商品生産サービスの外部委託、ロジ
スティクス、農産物提供、その他)と戦略的
関係を持っている指名代表者たちが含まれ
る。この委員会は、戦略計画の企画を通し
機能横断的な持続可能性の統合5
調達管理
調達管理
設計
設計
開発
開発
生産
生産
ロジスティ
クス
マーケティ
ング
販売
ロジスティ
クス
マーケティ
ング
販売
持続可能性
分断された構造
5
BSRから引用
統合された構造
47
て、個々の目的と目標を確立し、設定する責
任を負っている。これらの目標はチェックを
受け、必要であれば毎年設定される。結果
は分析され、新たな戦略計画が策定される。
戦略計画に組み込まれた最近の手段のひと
つとして、UNIDO(国際連合工業開発機関)
の「サプライヤー開拓プラットフォーム」の利
用がある。この委員会では、5千件を上回る
中小のサプライヤ―と相互協力を進めてい
る。
調達専門担当者による実行
自社の構造によっては、サプライヤーと最
も直接的な接触のある社内グループの社員
(このガイドを通じて「調達専門担当者」とし
て参照)は、サプライチェーンの持続可能性
に関する期待事項をサプライヤーに伝えて、
サプライヤーが自社の期待事項に沿えるよ
う維持する役割において、最も責任を負うこ
とになるであろう。
調達専門担当者は、サプライチェーンの持
続可能性に変化をもたらすという意味で、三
種類の主要な手段を持っている。
1. 持続可能性に関して相対的に高い能力と
実務慣行を持つ新規サプライヤーを選択す
ること。
2. 期待事項を設定しそれを高め、パフォーマ
ンスの継続的改良を確かなものにするため
に既存のサプライヤーに働きかけること。
3. 購買を集約したり、取扱品目やサービス
項目を段階的に縮小させるなどして、調達の
決定に関して、持続可能性の考慮事項を統
合すること。
サプライヤーの選択
サプライヤー選択に当たってのデュー・ディ
リジェンスのプロセスにおいて、企業は、商
業的な基準に、社会的・環境的なマネジメン
トとそのパフォーマンスの基準を加えること
ができる。これによって、調達専門担当者は、
サプライヤーの評価においてその全体像を
把握することができ、持続可能性に伴うリス
クを自社に持ち込んでしまうようなサプライ
ヤーとの関係を避けることができる場合もあ
る。標準的な方法は、方針と行動に関する
基本情報を引き出すような、サプライヤーの
自己評価に関する質問に対する回答を調査
するものであり(第5章において詳説)、これ
は、さらに監視調査が必要なサプライヤーの
優先順位付けを行うためのリスク評価として
使用することができる。
継続的改善に関する既存のサプライヤーと
の関係を構築すること
既存サプライヤーも、自社の持続可能性に
関する期待事項に応じる必要があるだろう。
対象となるサプライヤーの持続可能性マネ
ジメントシステムの状況にもよるが、そのサ
プライヤーは、パフォーマンス改善には時間
のかかる従業員や組織への投資が必要か
もしれない。調達専門担当者は、下記事項
を基本として、既存サプライヤーとともに、サ
プライチェーンの持続可能性に関する継続
的な改善に取り組まなければならない。
・ 双方向の透明性。企業としては、持続可
能性のパフォーマンスに影響を与える情報
に関して、オープンにかつ誠実に共有するこ
とをサプライヤーに求めるべきである。その
代わりに、企業はサプライヤーに対する方
針や業務の変更を前もって伝えるだけでなく、
サプライヤーへ期待事項と指導内容(ガイダ
ンス)を明確に示しておく必要がある。
・ 実現可能なスケジュール。企業は、何が
最小限の要求事項であるか(例えば、法令コ
ンプライアンス)、最低条件を超える改善の
ための現実的なスケジュールは何かを注意
深く検討すべきである。
・継続的改善。企業は、サプライヤーとともに、
持続可能性のための経営的優位性に向け
て取り組むことができ、同時にこの場合にお
ける優位性の意味を十分に定義付けしてお
くべきである。さらに、企業が必要な経営資
源を提供することによって、サプライヤーが
対応に必要な経営的能力を向上させること
を支援することもできる。
・パートナーシップ。 企業は、サプライヤー
との双方の意思決定者の間でオープンなコ
ミュニケーションを取ることにコミットするべき
である。これにより顧客である企業は役割や
責任を明確にし、相互に納得できる目標を
作りそれを達成するためにサプライヤーと協
働することができる。
例:アメリカのシューズメーカーであるティン
バーランド社(Timberland)は、サプライヤーと
の取引に関して、コンプライアンスを基本とし
た取り組みから従業員を中心とした協働的
な取り組みへと変えていった。つまり、この
企業では、サプライヤーの工場オーナーに
対し違反事項に関する対応リストを作成して
その解決を任せ、その改善状況をチェックし
ていく代わりに、工場における作業環境の問
題に関する根本的原因を把握するために、
工場の経営層や従業員とさらに密接に協力
している。この新しい取り組みによって、従業
員はこのプロセスの中心に位置することと
なった。今では、従業員やその代表者たちは
サプライヤー評価のオープニング会議やク
ロージング会議に招待されることとなり、評
価プロセスの一環として従業員に対するグ
ループインタビューも行われている。さらに、
従業員の行動規範委員会が設置され、行動
規範の維持発展のための教育と継続的な関
与がなされている。
調達専門担当者に
とってのサプライ
チェーンの持続可
能性の妥当性
「調達管理における決
定は、事業の業績と持
続可能性に直接的な
影響を持つ。したがっ
て、調達専門担当者は、
関連するステークホル
ダーとともに組織のな
かで、企業の持続可能
性に関する取り組みを
進展させるための論点
を提起する責任を負う
ことになる。これには、
持続可能性に関する
戦略、サプライチェーン
全体を通じて採用され
ている種々の企業のイ
ニシアティブや、組織と
サプライヤー企業群と
の間で交わされる正式
な方針の確立も含まれ
ている。」
-サプライ・ロジスティ
クス・マネジメント協会
48サプライチェーンの持続可能性
持続可能性考慮事項の統合化
企業は、持続可能性を統合し、持続可能
性とビジネスの推進力の間で表面化した緊
張状態を乗り越えることにおいて、調達専門
担当者を支援することのできる多くの手段を
講ずることができる。多くの企業においては、
リスク、品質、コストといった他のビジネスの
要素と明確な関連付けを行いながら、人権
や環境への影響といった持続可能性に関す
る論点に関して助言を行うことを始めている。
また、統合的な意思決定をサポートするため
に、サプライヤーの事業業績とともに持続可
能性に関するパフォーマンスについての情
報を表すサプライヤー・スコアカード(得点
表)を用いた試みも実施している。さらにリー
ディング・カンパニーにおいては、サプライ
ヤーに矛盾する情報を与えないように、調達
部門内に持続可能性に関する担当社員を
配置している。
例:スターバックス社(Starbucks)においては、
購入担当者はサプライチェーンの持続可能
性に関する問題とそれに対する方法につい
て教育され、さらにスターバックス社に対して
報告されたサプライヤーの持続可能性に関
するすべての評価報告書にアクセスすること
ができる。サプライヤーとの全てのコミュニ
ケーションは、購買担当者によって行われる。
同社の持続可能性サプライチェーンの専門
集団であるスターバックスの倫理的調達
チームは、サプライヤーの評価と改善方法
に関して、購買担当者との定期的な情報交
流を実施している。トレーニング、情報アクセ
ス、コミュニケーションの全体が、サプライ
ヤー持続可能性を購入の意思決定に組み
込ませるための手段として調整され、購入担
当者に対して提供されている。
フォルクスワーゲン・グループ(Volkswagen
Group)では、4つのキー項目を持つ「サプラ
イヤーとの関係における持続可能性」プログ
ラムが設定された。これらのキー項目とは、
標準要求事項、リスクの早期発見、調達業
務の一元化とモニタリング、サプライヤーの
能力開発である。このプログラムを通して、
すべての調達担当スタッフは、サプライヤー
の欠点、改善の可能性についての概要説明
を受け、それらに対して敏感になる。さらに、
サプライヤーは、要求事項に対応するため
の指導や直接的な支援を提供される。サプ
ライヤーは、Eメールアドレスにコンタクトす
るか、自己評価調査票への書き込みを行っ
たりすると、環境保護、人的資源管理、健康
と安全、購買の部門に加えて品質保証部門
からなる「特別専門チーム」によって支援が
提供される。また、調達プロセスにおける標
準的な措置として、サプライヤーによる情報
の利用も可能となっている。
新しい兆し
サプライヤーの基礎の最適化
サプライチェーン最適化を達成すると
いうことは、調達・物流プロセスにおける
廃棄物、重複作業や非効率部分の排除
を含む多くの目的を達成させるための
基本的なビジネス・マネジメントのツー
ルを持つことを意味する。持続可能な調
達において今後期待されることは、持続
可能性に対する考慮を意思決定プロセ
スの一部に統合するということである。
このような統合化が完了すると、企業の
サプライヤーは、社会、環境に関する問
題に対してより良好なパフォーマンスを
示すこととなる。
「トークス・レストラン(Restaurantes
Toks)においては、顧客の期待事項に
添い、さらにそれを超える商品と
サービスを提供するだけでなく、自
分たちの事業、社会、さらには地球
全体の利益のための持続可能なサプ
ライチェーンの発展に寄与すること
にコミットしている。成功を共有す
ることは、長期間の持続可能性と成
長を保証するために絶対に必要なこ
とである。」
フェデリコ・ベルナルド・デ・キロス
(Federico Bernaldo de Quiros)
トークス・レストラン
最高経営責任者
50 サプライチェーンの持続可能性
51
第7章 産業界の協働とマルチ・ステークホル
ダー・パートナーシップ
産業界の協働とマルチ・ステークホル
ダー・パートナーシップは、特に単独で取
り組むにはあまりにハードルが高く複雑で
ある問題に対して、自社のサプライチェー
ンの持続可能性の目的を達成するための
重要なツールである。そのうえ、協働は、
企業の範囲を広げて、経営資源を共同で
利用し、重複を減らし、矛盾するメッセージ
を避けることによって、自社のサプライ
チェーンの持続可能性への取り組みの影
響を増大し全体的な効率を上げることが
できる。
産業界の協働の意味するところ
多くのリーディング・カンパニーは、協働
を持続可能性における諸課題の根本原因
を克服する重要な要素として見るように
なってきている。加えて、協働による取り
組みは、小規模の企業がより少ない経営
資源でサプライチェーンにおける持続可能
性を展開するために行動し貢献する手段
となる。産業界における協働の2つの主な
タイプは次の通りである。
1. ベスト・プラクティスの分かち合い。 こ
れらの産業界における協働は、一つの産
業に絞られる場合と複数の産業界にまた
がる場合があるが、企業がそれぞれのサ
プライチェーンの持続可能性プログラムに
おいて成功するために見出したアプロー
チやツールに関する知識を分かち合うこと
に焦点を絞っている。これらの企業群は、
しばしばそのプログラムの方向性を反映し
たツールを共に作りあげるが、一般的に
は、このタイプの協働への参画企業は、そ
のツールを使うことや、参加企業に対する
基準のようなものに準拠を求められること
はない。
2. 共同基準とその実行。これらの協働は、
典型的には一つの産業界の中で行われ
るとともに、各企業の期待事項とサプライ
チェーンにおける持続可能性プログラムを
一致させることを目的としている。第5章に
おいて簡単に触れた、サプライヤー・モニ
タリングへのコンプライアンスにベースを
おいたアプローチは、しばしば、企業間に
おいて不一致、重複、非効率性があると
見られている。それぞれ、独自の行動規
範とモニタリング・是正のやり方を持つ複
数の顧客を有するサプライヤーにとって、
異なる複数のサプライチェーン持続可能
性プログラムが存在することは、コンプラ
イアンスと継続的改善の取り組みにとって
大いなる負荷と経営資源の分散をもたら
す。
この理由から、多くのグループは参加企
業が受け入れても受け入れなくてもよい共
通行動規範を共同で作成するようになっ
てきており、共同アセスメントや監査を通じ
てサプライヤーを共通の規範に関わらせ
ようとしている。これらのグループの多くは、
サプライヤーに対して共同してキャパシ
ティ・ビルディングをも実施している。
例:ギャップ社(Gap Inc)は、世界的な織物
サプライチェーンの水使用と廃水排出の
管理にコミットする企業のパートナーシッ
プである「持続可能な水グループ」を通じ、
デニムのクリーニング店の廃水排出をモ
ニターし、「持続可能な水質ガイドライン」
を満たすことを彼らに要求する「きれいな
水プログラム」を確立した。このプロジェク
トによって、ギャップ社は、同業者に類似
の廃水手順を採用するよう奨励できるよう
になった。
52 サプライチェーンの持続可能性
産業界における協働に関する機会とリ
スク
産業界における協働はサプライヤーと企
業に大きな効率性をもたらすが、一定のリ
スクももたらす。自社では他社と協働を望
むかどうかと、プログラムのどの要素につ
いて協働を望むかの両方の意思決定を考
慮するべきである。
機会
以上で議論をしたような産業界における
協業がサプライヤーに生み出すことのでき
る利益に加え、企業にとっての好機は非常
に大きい。
サプライヤーに対する梃入れ効果。サプ
ライチェーンにおける同業者との連携は自
社の直接のサプライヤーと同様に二次サ
プライヤーに対する梃入れ効果を生み出
すことができる。同業者との協業によって
企業の期待事項やサプライヤーとの関係
構築へのアプローチがより整合されるばか
りではなく、自社の直接的及び二次サプラ
イヤーに対する意見は彼らにとってより意
味を持つであろう。
ステイクホルダーに対する信頼性。産業
界における協働に参加することで、自社の
サプライチェーンの持続可能性における課
題に対する意識の高さを示すことができ、
さらに外部のステークホルダーに対して自
社の信頼性を高める助けともなる。産業界
における協業は自社が単独ではやりとりし
たくはない外部のステークホルダーとの論
争となるような話題について議論する機会
をも提供することができる。
経営資源の分かち合い。このガイドに示
されているプロセスはすべて、経営資源の
投入を必要とし、これは比較的小さい企業
や最近コミットメントした企業にとって特に
当てはまる。サプライチェーンの持続可能
性に関する強力なプログラムに必要な時
間やお金は、極めて大きな障壁となりうる。
産業界における協働は、企業がその経営
資源をプールし、サプライヤーへの期待事
項を確立するため、及び、サプライヤーと
の関係構築のために費やす費用を分かち
合う手助けとなる。
リスク
業界の協働において企業が考慮すべき
リスクがいくつかある。
組織内部のコミットメント。産業界におけ
る協働はある企業にとっては課題となりう
るとともに、サプライチェーンにおける持続
可能性に対する内部コミットメントを確保す
ることを難しくするかもしれない。特に産業
界における協業を行う潜在的パートナーが
競合企業であったり、サプライチェーンにお
ける持続可能性で著しく異なる段階にある
場合には、そのようなことになる。支持を確
実にするために、自社は、どの企業をパー
トナーとするか、それらの企業の期待事項
は何かについて明確に理解しなければな
らない。
経営資源の流失。産業界における協働
は、参加企業にコストと時間の効率性を生
み出す潜在力を有する一方で、常に成果
を生み出すという保証がない中で投資を要
請することになる。例えば、パートナーとの
協働を開始し共通の期待事項に同意し
様々なプロセスに調整をつけることは時間
を費やすことであり、これらの取り組みは、
成熟し一定の効果が出るまでに多大な時
間を費やすことを求められるのである。
コース変更への抵抗。協働に向けてなさ
れる様々な取り組みに対して、自社との協
働に参加する他社が連携するためにアプ
ローチを変えることを否むという可能性が
存在する。
例:ルクセンブルグに基点を置くダイヤモン
ド会社であるデビアス社(De Beers)は、紛
争ダイヤモンド、商業上の透明性の欠如、
及びインドのスラットのような主要な切削研
磨工場における劣悪な労働条件を含む、
広範な歴史的課題に対処するため、同業
他社と協働している。
「キンバリー・プロセス認証スキーム」や
「世界ダイヤモンド会議保証システム」が、
紛争ダイヤモンド問題に対処するため2003
年に開始されたにも関わらず、ダイヤモン
ドの供給経路の全体を通して社会、労働、
事業、健康、安全及び環境の課題に対す
る倫理的取り組みを完全に検証するような
単一の基準は存在していなかった。
デビアス社は、ダイヤモンド採掘業界内
においてだけではなく、切削、研磨、宝石
製造の供給経路全体を通じてベスト・プラ
クティスへのベンチマークを確立するため
に、ダイヤモンドの供給経路における指導
的地位を梃子として用いる機会を見出した。
この目的のため、デビアスは「ベスト・プラ
クティス原則(BPP)保証プログラム」を2005
年に開始し、デビアス社の顧客への供給
契約条件の基準とデビアスグループ内の
全ての企業への要求事項においてこれを
遵守させることにした。
53
産業界における協働の部分的リスト
AIM-PROGRESS
AIM-PROGRESSは、責任ある原材料調達と持続可能な生産システムを可能としこれを推進してゆくために集
まった、消費者向け商品の企業のフォーラムである。これは、国際的なイニシアティブであり、欧州ブランド協会
(AIM:Association des Industries de Marque)と北米の食料雑貨製造業協会 (GMA)がスポンサーとなって支援し
ている。この主たる目的には、責任ある原材料調達に関する意見を交換するためのフォーラムの開催や重複監
査を減少させるための共通評価方式の開発が含まれている。
アパレル・加工業・雑貨商のワーキンググループ(Apparel, Mills and Sundries Working Group)
加工業や雑貨商のサプライヤーレベルの上流の持続可能性に関する課題に対処するために協働するアパレ
ル、小売業とサプライヤーのワーキンググループである。このグループはサプライヤーの評価やトレーニングを
通じての共同行動規範の実施に焦点を当てている。
ビジネス社会的遵守イニシアティブ(BSCI)
BSCIは世界に広がるサプライチェーンにおける労働条件の改善に貢献しようという小売商、ブランド企業、輸出
入業のためのプラットフォームである。この組織は行動規範を作り、外部モニタリングと協働によるキャパシティ・
ビルディングを通してBSCI行動規範を実行している。
ビヨンド・モニタリング・ワーキンググループ(Beyond Monitoring Working Group)
BSRのビヨンド・モニタリング・ワーキンググループは、組織内連携、サプライヤーの当事者意識、労働者のエン
パワーメントや公共政策へのエンゲージメントに関心をもつ、サプライチェーンの持続可能性のビジョンを受け入
れた多くの業界のリーディング・カンパニーの協働体である。これらの企業は一緒になって、各社のプログラムを
改善しこの分野における前進を促すための、次世代サプライチェーン方策を調査研究している。
電子業界CSRアライアンス(Electronics Industry Citizenship Coalition:EICC)
EICCは、グローバルな電子部品のサプライチェーンにおける労働と環境条件を改善するための業界の行動規
範や実行のための経営資源の共有を進めている。EICCは、共同監査を行い、行動規範のコンプライアンス監査
ツールを提供し、調達とサプライヤーの訓練のための経営資源を提供し、企業の進捗報告を支援している。
EICCのメンバーは、電子機器製造業、ソフトウエア企業、ICT企業に加え、契約によって電子製品の設計、生産、
商品供給を受け持つ生産受託企業を含む製造サービス企業が参加可能であり、電子機器のサプライチェーン
の大多数をカバーしている。
倫理的取引イニシアティブ(Ethical Trading Initiative)
ETIは、モニタリングや行動規範へのコンプライアンスの確認を含む、労働規範の実行におけるグッド・プラク
ティスを特定し推進するための協働にコミットした、企業と労働団体とNGOの同盟体である。
グローバル・eサステイナビリティ・イニシアティブ(The Global e-Sustainability Initiative:GeSI)
GeSIは、通信サービスプロバイダーや製造業や関連産業団体を含む先進的な情報通信技術(ICT)企業と、技
術革新を通して持続可能性の目的を達成しようとしているNGOをつないでいる。
グローバル・ソーシャル・コンプライアンス・プログラム(Global Social Compliance Programme:GSCP)
GSCPは、グローバルなサプライチェーンにおける様々な業種業態にまたがる労働及び環境条件の継続的な改
善に対する共有されたグローバルな持続可能なアプローチを提供するために、既存の様々な取り組みを協調さ
せようというビジョンを持った企業のための企業主導のプログラムである。GSCPは、現存のシステムの間に比較
可能性と透明性を形成するために情報交換とベスト・プラクティスを推進するグローバルなプラットフォームを提
供する。
公正労働協会(Fair Labour Association)
FLAは全世界の工場における労働条件の改善を目的とする、メンバーによる協働の取り組みである。参加企業
は、FLAの行動規範にコミットし、このグループは、諸基準を達成するために、実務的なモニタリング、是正、認証
のプロセスを開発した。
ICTIケア(ICTI-Care)
ICTIケアは全世界の玩具産業の労働者に対し安全で思いやりのある労働環境を確かにすることを狙いとした
玩具業界における倫理的な生産プログラムである。この目標達成のために、このグループは玩具工場に対し、
教育訓練と統合されたモニタリング・プログラムを提供している。
社会的アカウンタビリティ・インターナショナル(SAI)
SAIは、全世界において労働者の人権を推し進めることを役割とする事業者、労働団体及びNGOによる、マル
チ・ステークホルダー、多国籍、業界横断的な業界組織である。この組織は、訓練とキャパシティ・ビルディング
及びILOと国連の条約を基盤においた労働現場における標準SA8000によって、これを実施している。
54 サプライチェーンの持続可能性
マルチ・ステークホルダーとのパートナー
シップ
同業者との協働に加えて、多くの企業は、
より広い範囲のステークホルダーと協働す
ることの価値を認識している。第2章では、
自社のサプライチェーンにおける持続可能
性戦略にインプットを与えることができる、
国と地方政府、労働者と経営者の団体、
NGO、アドボカシーと活動家の団体、学術
界、専門家及び地域社会グループを包括し
た、一連のステークホルダーグループにつ
いて記述した。
近年、より多くのステークホルダーのグ
ループが企業のパートナーになりたいという
意向を示すようになってきている。これらの
ステークホルダーグループの多くは持続可
能性に関する知識が豊富で、単に見解や
助言を分かち合うばかりではなくサプライ
チェーンにおける課題に対し緊密に取り組
む上で有益なパートナーである。彼らは、持
続可能性問題の文脈についての理解を支
援し、効果的な対応の企画と地域での実行
パートナーとして活動することに役立つ。そ
のうえ、彼らはサプライチェーンの持続可能
性の取り組みに経営資源と正当性をもたら
し得る。
ビジネスは、ビジネスがサプライチェーン
で経験する持続可能性の課題の根本原因
に対処するため、地域の取り組みを支援し、
能力を向上させるために地方自治体と協働
することもできる。
例:多くの企業は、そのサプライチェーンで
労働者の事故と病気を減らし全体的な健康
を増進する取り組みを行うことによって、コ
スト効率性を達成した。アメリカに拠点を置
くアパレル企業のリーバイ・ストラウス社
(Levi Strauss & Co)は、市民社会組織と協
働し、サプライヤーの工場でいくつかの労
働者の権利と責任及び健康教育訓練のプ
ログラムを実行した。その目的は、労働者
の福祉を改善し、労働者の権利を尊重し、
生産性の上昇と欠勤の減少によって節約を
成し遂げるためである。同社は、労働者と
工場により幅広いサービスを提供するため
のこうした市民社会組織の能力を構築する
ことに重点を置いている。
ベター・ワーク(Better Work)は、評価、改善
と工場内のトレーニング・ツールのための包
括的なプロセスによって開発途上国での貧
困を減らし、国際化のための公正なフレー
ムワークを提供することを目的とした国際労
働機関(ILO)と国際金融公社(IFC)間の特徴
のあるパートナーシップである。企業は、サ
プライヤーのコンプライアンスに関する情報
を得るとともに、問題を解決する取り組みを
監視するために、効率的で費用対効果がよ
いプロセスにアクセスする。「ベター・ワーク
購買者フォーラム」は、国際レベルと国内レ
ベルで開催される。これらのフォーラムは、
購買者がベター・ワークの拡大計画とツー
ルに対しフィードバックを提供し、また、中央
政府、組合とメーカーの協会を含む関連し
たステークホルダーとの建設的対話を行う
機会となる。活発な国内のフォーラムが、カ
ンボジア、ヨルダンとベトナムにあり、インド
ネシア、モロッコ、ニカラグア、ハイチとレソト
では検討中である。
55
56 サプライチェーンの持続可能性
グローバル・コンパクトの地域ネットワーク
80以上のグローバル・コンパクトの地域ネットワークは、世界中のグローバル・コンパクト
の署名者に対し現場での支援を提供する。ネットワークは、このために様々な活動を行って
いる。例えば、責任あるビジネス行動に関する地域の優先課題を特定したり、地域の持続
可能性の課題やチャンスについての認識を高めたり、学習と対話のイベントを組織したり、
集団での活動の取り組みに動員したり、より広範な持続可能な開発の目標に貢献するため
の企業と地域のステークホルダーとのパートナーシップを奨励したりしている。ネットワーク
は、企業が毎年の進捗報告(Communication on Progress;COP)を準備することに対して支
援している。
企業は、サプライチェーンの持続可能性を進めるために、かなりの数のサプライヤーが存
在する地域での地域ネットワークを通じて活動することができる。企業は、例えばサプライ
ヤーが彼ら自身の持続可能性パフォーマンスを向上させるためにグローバル・コンパクトに
加わり、地域ネットワークのイベントに活発に参加することを奨励することができる。企業は、
知識と専門知識を共有し、地域ネットワーク活動に財政援助を提供することによって、地域
ネットワークを支援することもできる。
多くの地域ネットワークは、サプライチェーンの持続可能性を進めるために、以下を含む活
動に従事した:
グローバル・コンパクト・スペイン・ネットワークは、サプライチェーンで広範囲に10原則の実
行に取り組んだ。このネットワークは、様々なセクターからの企業がサプライチェーンのグッ
ド・プラクティスについて情報交換することができる学習フォーラムを組織した。また、同ネッ
トワークは、リスクマネジメントに焦点を当てて、責任ある商習慣を改善するためにサプライ
ヤーとの長期関係を築く、ガイド「サプライチェーンの責任あるマネジメント」を出版した。
http://www.pactomundial.org/recursos/doc/Publicaciones/ASEPAM/23526_3133132009182520.pdf
グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワークは、様々なセクターからの12社以上の日本企
業が参加する「サプライチェーン分科会」を組織した。ジャパン・ネットワークは日本企業の
倫理的調達に関連する問題を分析して、グッド・プラクティスを明らかにした。これらの課題
の一つは、企業がどのようにして、より効果的にサプライヤーとの関係を構築し、買い手、
サプライヤー、社会の3者にとって共に利益となる持続可能なサプライチェーン・マネジメン
トの潜在力を引き出すことができるかである。
「テレノール社(Telenor)では、ビジネスを
行う上で「企業の責任」を不可欠なものとす
ることを目指している。また、我々の社会へ
の影響は、我々のサプライヤーやビジネス・
パートナーにも及んでいることを認識してい
る。したがって、責任あるビジネス行動を実
現するためのサプライチェーンのマネジメン
トは、テレノール社内では厳守すべき重要な
ものである。我々は、社内で優れた労働条件
と環境マネジメントを示さなければならない
だけでなく、我々のすべてのサプライヤーが
我々の「サプライヤーの行動原則」で規定さ
れる基準を満たすことを要求している。我々
は、我々のサプライヤーとの組織的なエン
ゲージメントによって継続的な改善を進め、
我々の目標を目指して努力する。」
ジョン・フレドリック・バクサス
(Jon Fredrik Baksaas)
テレノール
社長兼CEO
58 サプライチェーンの持続可能性
59
第8章
目標設定・パフォーマンス監視・情報発信
企業の主要部門に関し明瞭な役割を確立す
ることが重要であるが、包括的なパフォーマン
スの目標を決めることは等しく重要である。サ
プライチェーンの持続可能性のための明確な
目標をもつことは、個々人の仕事に方向性を
提供し、自社がそのプログラムの影響と成功
を評価するのにも役立つ。
目標設定のプロセス
目標設定のプロセスは、設定される目標を
達成することに責任を持つことになると考えら
れる各部門のリーダーが参加する共同のプロ
セスとすべきである。また、持続可能なサプラ
イチェーンの目標は、ビジネス・ニーズに合う
ものとすることも、重要である。企業は、その
事業戦略と目標をレビューし、自社が定めた
サプライチェーンの目標が自社の全体的なビ
ジネス目標の達成にどのような役に立つかを
明らかにするべきである。サプライチェーンの
各目標は、少なくとも1つのビジネス目標の達
成の役にたつべきであり、そして、自社の執行
役員はその目標を承認すべきである。
目標に対するパフォーマンスは、計測可能
なビジネス目標の一部として毎年監視する必
要がある。これは当たり前なように見えるが、
このことによって、企業は、多くの場合、何が
望ましくて現実的な目標なのか、また、その目
標をいつどのようにして達成するか、というこ
とを決定するための難しいプロセスを経ること
になる。目標の進捗を監視することは、目標を
達成するために行った作業の価値を示すこと
である。
目標は通常はビジネス全体の高いレベルで
決定されるが、これらの目標は、すべての分
野の管理職が統合され首尾一貫した方法で
実行できるように翻訳する必要がある。これを
行うことによってのみ、目標に向けた行動が
企業内で進む。例えば、持続可能性に関する
研修に出席するサプライヤー数の目標は、サ
プライヤー関係を管理する各購買グループの
個々の調達専門担当者の目標として翻訳す
ることが可能である。同様に、ミクロレベルの
目標を束ねることによって、目標に対するパ
フォーマンスの全体像を知ることができる。
影響に関する目標
ビジネス影響に関する目標は、サプライ
チェーンの持続可能性に対する自社のビジョ
ンに基づいたものとし、かなり明確なものとす
ることが望ましい。これらの目標としては、顧
客とその他のステークホルダーの期待事項に
応じること、コストの削減、新しい市場への進
出などがある。自社のサプライチェーンの持
続可能性に取り組むことによって生じる社会
的・環境的影響に関する目標を確立すること
も重要である。一部のステークホルダーは、企
業がサプライチェーンの持続可能性へのコミッ
トメントをどのように実現するかを理解するこ
とに関心をもつが、多くのステークホルダーは
どのような価値が創出されるかについて、より
強い関心をいだいている。サプライヤーも、責
任ある調達の要求事項を満たすことを通して、
彼らのビジネスにとってどのような価値が創出
されるのかを理解しようとする。企業は、サプ
ライヤーが彼ら自身の持続可能性マネジメン
トシステムを確立すること、サプライヤーの温
室効果ガス排出や廃棄物などの環境への影
響や労働者とコミュニティに対する影響などに
関連した目標を設定することを場合によって
は検討することができる。これらの目標には、
業務上疾病傷害率、支払われる総賃金、ト
レーニングと開発される技能、コミュニティと地
域開発への影響(例えば創出される仕事の数、
増加する所得や開発されるインフラ)を含める
ことができる。
例:トークス・レストラン社(Restaurantes Toks)
は、メキシコの20都市で84店のレストランを運
営し、6,500人以上の仕事を提供して、毎年
2,100万人以上の消費者にサービスを提供し
ている。貧しい地方のコミュニティをそのサプ
ライチェーンに組み入れる取り組みとして、同
社は中部メキシコのサンタローザ・デ・リマ社
(Santa Rosa de Lima)で13人の女性によって
設立され運営されているイチゴ・マーマレード
生産グループと協働するプロジェクトを始めた。
2005年には、サンタローザ・デ・リマ社の一人
あたりの所得は1ヵ月60 米ドル未満であり、そ
して、町の人口は、男性のアメリカ合衆国への
違法な移民が高率となっているために、不均
衡に女性が多かった。トークス・レストラン社
は、サンタローザ・デ・リマ社によって供給され
るイチゴ・マーマレードをメニューに取り入れ、
それによって、うまくそのコミュニティを同社の
サプライチェーンに組み込んだ。サンタロー
ザ・デ・リマ社は、トークス・レストラン社に売り
始める前では、コミュニティに対し1家族あたり
1,000米ドルの所得を提供していた。サンタ
ローザ・デ・リマ社は、現在、毎年、トークス・レ
ストラン社へ461,000米ドル以上のイチゴ・マー
マレードを売っており、コミュニティの一人あた
りの所得を急速に増やしている。さらにまた、
トークス・レストラン社は、サンタローザ・デ・リ
マ社がさらに新たな市場に参入することを可
能にするため、生産能力を増やすよう同社と
協働している。
60 サプライチェーンの持続可能性
このモデルが人権と経済的権利の保護
と促進に与える影響が明白に示されたた
め、トークス・レストラン社は、他のコミュニ
ティ・フードや手工芸品を生産する10グ
ループに対し同じアプローチを実施した。
例:ブラジルの化粧品企業であるナチュラ
社(Natura)は、2000年から、その製品の
基礎資材として、ブラジル原産の植物から
抽出される原料を使う戦略を実行し始め
た。この戦略は、既存の社会的ネットワー
クを基礎として構築し、非木材森林製品の
持続可能な抽出によって成り立つ持続可
能な生計に貢献するビジネス・モデルを創
出し育てるという企業の目標をサポートし
た。ナチュラ社は3つの貧しいコミュニティ
との協力関係を樹立し、同社の化粧品の
香り成分であるプリプリオカを生産する契
約を2003年に締結した。ブラジルの植物
原料の抽出が厳しい社会・環境基準に
従って行われることを確実とするために、
ナチュラ社は、活性成分認証プログラムを
開発した。この認証プロセスには、3つの
段階があった:それは、①認証可能なサプ
ライヤーの地域を特定すること、②認証戦
略を考案すること、③認証検査を行うこと
である。2006年までにこのプログラムに
よって約15の成分が認証された。このよう
な抽出製品の認証に加えて、このプログラ
ムでは、サプライヤー・コミュニティにおけ
る協会と協同組合の形成を奨励し、このこ
とによって商業的なチャンスへのアクセス
を可能にした。5
サプライヤーのパフォーマンスに関する目
標
第5章で論じられるように、個々のサプラ
イヤーのパフォーマンスを監視し、サプラ
イヤーの当事者意識を奨励するために使
うことができる多くのメカニズムがある。し
かし、企業が全体的なサプライヤーのパ
フォーマンスに関する目標を設定し、それ
がサプライヤーの意見によって後日修正
可能であるようにするのは重要である。
多くの社員からのコミットメントと現実的
な目標を確実にするために、サプライヤー
に関する目標は、すべての分野の管理職、
特に調達部門の管理職の意見を得て作
成すべきである。それらの目標では、自社
が設定する期待事項に対して、全体的な
サプライヤーのパフォーマンスに関する目
標を確立すべきである。例えば、企業は、
多くの場合、監査(第5章を参照)後に是正
行動計画を完了したサプライヤー数に関
する目標を設定している。企業は、特定の
領域(例えば人権、労働、環境、倫理とサ
プライヤー・マネジメントシステム)につい
てのパフォーマンス目標も設定すべきであ
る。
内部パフォーマンスに関する目標
前の章で述べたように、企業が自らの影
響に関する目標を達成するとともに、サプ
ライヤーのパフォーマンス目標を達成する
ために彼らを支援する際に直面する最大
の障害は、調達専門担当者の商業的な目
標と、公正な労働条件と環境にやさしい行
動を確実にしたいという希望との間の解消
しがたい葛藤である。調達専門担当者の
持続可能性問題に対する努力を継続させ
るためには、サプライ管理と他の部門の
管理職とが協議し、サプライチェーンの持
続可能性の内部的な実施に関する目標を
設定するべきである。
組織内部のパフォーマンスの目標では、
サプライ管理の決定において持続可能性
がどのように考慮されるかについてのガイ
ドを規定すべきである。例えば、ある企業
は、最高のパフォーマンスを達成している
サプライヤーに対しては特定のパーセン
テージの購入金額(又は量)を与えること
を目標としている。他の企業では、サプラ
イについての決定をする際の主要な要素
として、商業的・技術的な基準とともに、持
続可能性を用いるような目標を設定してい
る。もうひとつの目標の例は、持続可能性
問題に関するトレーニングを受けている調
達専門担当者のパーセンテージであろう。
例:イタリアの代表的な金融機関であるモ
ンテパスキ・グループ(Montepaschi Group)
は、2009年に、自社の全体的なCSR戦略
の重要な構成要素として、持続可能なサ
プライチェーン・プログラムを開始した。グ
ループの主要な目標のうちの1つは、その
標準的な調達プロセスの中に原則を埋め
込むことである。特定の目標は以下を含
む:
生産とサプライ・プロセスにおいて、環境
的・社会的・経済的影響をより良く管理し
ているサプライヤーを優遇すること
ナチュラ社のエコス:香水エッセンスはブラジルでの持続可能な発展をもたらす:発展する包括的な
市場の事例研究
5
61
商品とサービスの調達の選択と評価の主要
な要素として、持続可能性指標を使用するこ
と。
人権、労働、環境又は一般的な規制を遵守
していない行動を取っているサプライヤーを避
けること。
サプライヤーとの公平でオープンなコミュニ
ケーションを行うこと。
グループ方針の文脈でサプライヤーのパ
フォーマンスを定期的にモニタリングし、ス
テークホルダーに対しその状況と行動を報告
すること。
測定のプロセスと実施
自社のサプライチェーンの持続可能性に関
する目標に対し、パフォーマンスを評価するた
めには、時系列でパフォーマンス・データを集
めて、監視する必要があるであろう。このデー
タの多くとそれに関連するプロセスと実施は、
このガイドですでに記述されている自社のサ
プライチェーンの持続可能性プログラムの側
面の実現にもきわめて重大である。
どのようなデータを集めるのか?
企業は、サプライヤーと調達専門担当者の
パフォーマンスの両方に関するデータを集め
る必要があるであろう。パフォーマンスの達成
度評価基準は、目標に対する企業の進捗を
明確に評価できるように設計する必要がある。
このデータの多くは、おそらく、調達専門担当
者が行うサプライヤー評価の一部として集め
るものや、他の部門(例えば、環境、健康と安
全性)が収集するものとも重複するであろう。
企業は、既存のすべての達成度評価基準と
データの範囲と質を分析することから始める
べきである。次のステップとして、企業の異な
る部門が同じテーマで情報を集めているので
あれば、それが統一された方法で収集される
よう、達成度評価基準を統一することに若干
の時間を費やす必要があるだろう。
データを収集する方法
データ収集は、自社が評価するサプライ
ヤーの数が膨大であり、また、データの起源と
なる源の数からすると、大きな課題となるであ
ろう。そのうえ、二重の帳簿をつけたり、監査
の際に労働者インタビューに嘘で応じるよう労
働者を指導したり、検査官に贈賄したりするこ
と等によって企業の本当の状況を隠そうとす
るサプライヤーの例が多くある。このことに
よって、データの完全性を保障する方法が意
思決定にとってきわめて重要なものとなってい
る。
サプライヤー・データベース
公正工場情報センター(Fair Factories Clearinghouse: FFC):
FFCは、工場監査とコンプライアンスデータを共有するためにオ
ンラインの世界的なデータベースを構築するために、米国の履
物・衣類企業であるリーボック・インターナショナル社(Reebok
International Ltd)、全国小売連合(NRF)、カナダ小売評議会
(RCC)と世界モニター(WM)によって開始されたものである。非
営利団体であるFFCは、費用対効果がよく、十分な情報を得た
上での倫理的な商取引や改善した仕事場を地球規模で実現
するために、メンバーにオンライン監査マネジメントシステムと
共有プラットホームを提供している。
サプライヤー倫理データ交換所(Supplier Ethical Data
exchange: Sedex):マークス&スペンサー社(Marks & Spencer
plc)、セーフウェイ社(Safeway plc)やテスコ社(Tesco plc)を含
むいくつかの英国の食品企業は、彼らのサプライチェーン監査
情報を統合して共有するためにオンライン・データベースを構
築すべく、英国の倫理的な取引のコンサルタント企業であるイ
ンパクト社(Impactt)と提携した。ウェブ・ベースのデータベース
は、監査の情報、例えば労働時間、給与、労働条件、組合結
成の自由、児童労働などをまとめている。
エコヴァディス(EcoVadis) :エコ・ヴァディスは、21の指標と
150の支出カテゴリをカバーしているサプライヤーCSR格付へア
クセスできる、オンラインの協働プラットホームを運営している。
「世界の500社」企業の25社が、80カ国の何千ものサプライ
ヤーのCSRマネジメントシステムを評価し、開発するために、エ
コ・ヴァディスを使っている。
そのうえ、部門間や組織境界を超えたサプ
ライヤー情報の透明性はしばしば限定的であ
ることから、企業は、交換する必要がある情報
に関して、企業とサプライヤーの間での効果
的コミュニケーションや理解が不足してしばし
ば苦労をしている。多くの企業は、包括的な
データの収集とマネジメントを可能にする情報
技術プラットフォームを探究している。部門を
またぐ経営管理者は、内部のシステムとプロ
セスを統合するのに役立つであろう。サプライ
ヤーは、自社のプログラムを形づくることに影
響力を持つと感じれば、データを入力するで
あろうし、自社のプログラムにより関与したい
と思うであろうから、サプライヤーとの協働は
有益であろう。
持続可能性パフォーマンスについてのサプ
ライヤー情報を集めて管理することを支援す
るいくつかのデータ共有プラットフォームがあ
る。これらには、サプライヤー倫理データ交換
所(Sedex)、エコヴァディス(EcoVadis)、サプラ
イヤー監査情報システム(e-Tasc)、公正工場
情報センター(FFC)などがある。同様にこの種
の資源を提供する多くの情報技術企業もある。
62 サプライチェーンの持続可能性
グローバル・レポー
ティング・イニシア
ティブ(GRI)
GRIは、世界で最も
広く使われている持
続可能性報告のフ
レームワークである。
GRIは、組織が彼ら
の経済的・環境的・
社会的なパフォーマ
ンスを計測し、報告
するために用いるこ
とができる原則と指
標を定めている。
GRIは、グローバル・
コンパクト参加企業
が、グローバル・コ
ンパクト原則の実施
の進展をステークホ
ルダーに伝達する
にあたり、推奨され
た報告言語でもある。
GRIは、マルチ・ス
テークホルダーによ
る専門調査委員会
を設置し、GRI持続
可能性報告ガイドラ
インを利用していか
にサプライチェーン
のパフォーマンス報
告の質を改善する
か提言を行っている。
詳細は、
www.globalreportin
g.org
currentPriorities/Su
pplyChainを参照さ
れたい。
いかにデータを用いるか
最後に、いかにデータを用いるかについて、
計画を立てる必要がある。データは時間の経
過とともに集められるので、自社の役員は進
展に関して定期的な情報更新を受け取るべ
きである。特に調達専門担当者は、第3章で
述べた意思決定において、サプライヤーのパ
フォーマンスに関するデータの多くを使うであ
ろう。
イクルされ、有機で、再生可能な材料の使用
を増やすプロセスを選ぶことができる。ティン
バーランド社のすべての履物の分野(2011年
末までに生産ラインの100%が格付けされる)
でグリーン指標格付けとラベルを使用するこ
とは、同社が製品の環境パフォーマンスを向
上させる目標を設定する方法の一つである。
進展を伝えて報告すること
例:アメリカの計装企業であるジョンソン・コン
トロールズ社(Johnson Controls Inc.)は、同社
の倫理方針に記載された期待事項に合致し
ているかどうかについてサプライヤーを評価
しランク付けするために、サプライヤー持続
可能性評価システムを確立した。サプライ
ヤーは、彼らの環境、人権、社会及びガバナ
ンスのプログラムの状態を伝えるために、
ウェブベースの自己評価システムを使う。ア
ンケートは、すべてのサプライヤーが容易に
アクセスするように完全に電子化され、公共
ウェブサイトにおかれているが、人権、労働
条件、労働安全とエネルギー・マネジメントに
関連した質問が含まれている。エネルギー効
率と温室効果ガス排出のマネジメントは、ジョ
ンソン・コントロールズ社の事業の重要な一
部であるので、アンケートでは、サプライヤー
がその温室効果ガス排出を公開しているか
どうか、特にサプライヤーが「カーボン・ディス
クロージャ・プロジェクト(Carbon Disclosure
Project, CDP)」に報告しているかどうかを質問
している。一旦サプライヤーがアンケートに記
入すると、調達専門担当者はその結果を受
け取り、サプライヤーのランキングを決定し、
そして必要に応じて、サプライヤーが期待事
項に完全に合致していることを確実とするた
めに、サプライヤーに働きかける。
例:アメリカの履物企業であるティンバーラン
ド社(Timberland)は、製品設計と消費者選択
に情報を提供するために、単純なフォーマッ
トで環境パフォーマンスの重要な面を測定し、
伝える環境格付けシステム「グリーン指標」を
作成した。グリーン指標による格付けシステ
ムによって、製品設計・開発はティンバーラン
ド社の環境戦略と連携するようになる。同社
は、3つの幅広い分野、すなわち、気候、化学
物質の使用、資源消費による影響を減らすこ
とを目標としている。製品開発チームは、これ
らの分野で明瞭な環境対策を提供することに
よって、より有害でない化学製品を用いるとと
もに、よりカーボン集約型でない材料やリサ
報告の公表は、サプライチェーンで持続可
能性と透明度を刺激し、強化するためのツー
ルとなる。また、それは、サプライチェーンで
の環境的・社会的影響の管理と、良好なガバ
ナンスの保証を、内外のステークホルダーに
示すことになる。グローバル・コンパクトの署
名者は、10の原則の実施の進捗を毎年ス
テークホルダーに公表することが求められて
いる。この毎年の報告又は進捗報告(COP)
は、企業のグローバル・コンパクトとその原則
へのコミットメントを示す重要なものである。
進捗報告(COP)以外では、持続可能性報
告は、ステークホルダーに進展を通知するた
めの最も一般的な方法である。報告の実施
は、独立型レポート、オンライン報告、持続可
能性・財務統合報告に進展しているが、目標
は持続可能な開発の目標への組織のパ
フォーマンスを測定し、公表することである。
持続可能性報告は、サプライチェーンの持続
可能性アプローチを実行した後の論理的な
最後のステップであり、そのプロセスは、目標
に対する進展を考慮し、内外のステークホル
ダーに対し透明であることを企業に要求する
ことから、サプライチェーンの持続可能性を継
続的に改善することに役立つであろう。
報告書は、とりわけ以下の目的のために使
いることができる:
他社を奮起させ、持続可能性パフォーマン
スの分析に基準点を提供するベスト・プラク
ティスの源泉とすること
サプライチェーンを含む原則を実施するプ
ロセスでの自己評価と継続的改善。
法律、規準、規範、パフォーマンス標準と自
発的なイニシアティブに関する持続可能性パ
フォーマンスを、ベンチマーキングし、評価す
ること
組織が持続可能な発展に対してどのように
影響を与え、また、それに関する期待事項に
よってどのように影響されるかを示すこと;
組織内で、あるいは異なる組織間でのパ
フォーマンスを時系列的に 比較すること
63
64 サプライチェーンの持続可能性
謝辞
このガイドの作成を通じ、グローバル・コンパクト署名者、グローバル・コンパクト・ロー
カル・ネットワーク事務局、国連機関、専門家、市民社会とBSRの「ビヨンド・モニタリン
グ・ワーキング・グループ」のメンバーなど広範囲にわたるステークホルダーと協議した。
我々は、以下の人々に対し、このガイドの原案をレビューし、コメントする時間をとってい
ただいたことに御礼を申し上げたい:
トーマス・バークマルク(Thomas Berkmark)氏(ベルグマルク・サステイナビリティ社CEO
(前イケア持続可能性ディレクター);ヂリパジ(K. Dilipraj)氏(BYD社CSRマネジャー);リッ
キー・ホー(Ricky Ho)氏(CTPS社取締役・総支配人);ピエール・フランソア・ターラー
(Pierre- Francois Thaler)氏(Ecovadis社専務理事;倫理貿易イニシアティブ(ETI)、ノル
ウェー);
タバタ・ヴィラレス(Tabata Villares)氏及びジュリア・ズアネラ・フェルナンデス(Julia
Zuanella Fernandes)氏(エソス研究所・グローバル・コンパクト・ブラジル・ネットワーク事
務局;グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワークメンバー) ;リン・ラ・タン(Lin Lah
Tan)氏(グローバル・コンパクト・マレーシアネットワーク事務局); バレンティナ・パペリ
アス・デ・モーショベン(Valentine Papeians de Morchoven)氏(グローバル・コンパクト・ス
ペイン・ネットワークの人権と労働基準のアナリストであり担当者); ユリヤ・ペトリシン
(Iuliia Petryshyn)氏(グローバル・コンパクト・オフィス助手); スネ・スカデガード・トレンソ
ン(Sune Skadegaard Thoresen)氏(グローバルCSRパートナー・理事); バスティアン・バッ
ク(Bastian Buck)氏(GRI技術開発コーディネーター); エイジャ・サロ(Eija Salo)氏 (リンテオ
ンモバイル /ペルロス社取締役人材開発担当、グローバル人材管理); マーク・シン
ダーマン(Mark Snyderman)氏(LRN社上級知識リーダー、国連グローバル・コンパクト10
原則作業委員会メンバー); リーナ・ウェントラント(Lene Wendland)氏(国連人権高等弁
務官事務所ビジネスと人権アドバザー); マリアム・ラム(Mariam Ram)氏(TNQブック&
ジャーナル社常務取締役); スーザン・コート・フリーマン(Susan Cote-Freeman)氏(トラン
スペアレンシー・インターナショナル民間部門プログラム・マネジャー);キャスパー・ソ
ネッソン(Casper Sonesson)氏(国連開発計画(UNDP)民間部門次長) ;ギャレット・クラー
ク(Garette Clark)氏(国連環境計画(UNEP)プログラムオフィサー);ナターシャ・ウイサー
ト(Natasha Weisert)氏(国連工業開発機構(UNIDO)産業開発オフィサー)
65
PHOTO CREDITS:
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Page 58 Ⓒ istockphoto
Page 63 Ⓒ Hard Rain Picture Library/
Mark Edwards
国連グローバル・コンパクト10原則
原則1
原則2
原則3
原則4
原則5
原則6
原則7
原則8
原則9
原則10
人権
企業はその影響の及ぶ範囲内で国際的に宣言され
ている人権の擁護を支持し、尊重する。
人権侵害に加担しない。
労働
組合結成の自由と団体交渉の権利を実効あるものに
する。
あらゆる形態の強制労働を排除する。
児童労働を実効的に廃止する。
雇用と職業に関する差別を撤廃する。
環境
環境問題の予防的なアプローチを支持する。
環境に関して一層の責任を担うためのイニシアチブ
をとる。
環境にやさしい技術の開発と普及を促進する。
腐敗防止
強要と贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗を防止する
ために取り組む。
Published by the UN Global Compact Office
Contact: [email protected]
June 2010 | 1.5M

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