12_07_04 ゼミ発表

Report
日本に
おける
自由意
志研究
の
Pioneer
『自由意志と向・反社会的行動の関係を
自己制御から検討』
1
社会心理学における自由意志
• 自由意志を信じることが人の認知、行動
にどのような影響を及ぼすかを検討する
ことが目標
⇒自由意志が実際に存在するかどうかは問
題にしていない
そのことを踏まえた上で以下では二つの先
行研究を示す
2
自由意志への不信が
不正行為に与える影響
The Value of Believing in Free Will:
Encouraging a Belief in Determinism
Increases Cheating
Vohs, K. D., & Schooler, J. W. (2008)
3
先行研究(1)
• 結果は努力ではなく、生得的な特性によると信
じた子どもは、そうでない子どもに比べてパ
フォーマンスを改善する努力をやめ、課題自体
も嫌いになった(Mueller & Dweck, 1998)
• 自分自身の行動やそれに伴う結果は自分の意志
判断とは無関係で変えることのできないものだ
と考える(つまり、自由意志の存在を否定し、
決定論を信じる)ことは、望ましくない行動を
喚起するのではないか?
4
実験1
• 仮説:自由意志信念が低下すると、カン
ニングが増加する
•
•
•
•
手続き
被験者を反自由意志群と統制群に配分
文章による自由意志信念操作
カンニングが可能なコンピュータ課題に
解答
5
実験1
• 結果
• カンニングの量は反自由意志条件>統制条件
• 反自由意志の文章を読むことで、自由意志信念
が低下し、カンニングが増加した
カ
ン
ニ
ン
グ
の
量
16
14
12
10
8
6
4
2
0
反自由意志条件
統制条件
6
実験2
• 別解釈の可能性:実験1におけるカンニング
は「答えが表示された画面をそのままにして
おく」という受動的なもの
• カンニングの増加は非道徳的な行動の増加で
はなく、受動的な行動の増加と解釈すること
ができる
• 実験2ではカンニングを能動的な行動を要す
るものに変更
• 同時に、自由意志信念を強める条件を追加
7
実験2
• 手続き
•
•
•
•
•
•
•
•
自由意志信念操作
自由意志条件:自由意志信念を強める文
決定論条件 :自由意志信念を弱める文
統制条件
:自由意志と関係のない文
読解、計算、論理・推論問題を解かせる
正答1問につき1ドルを報酬として与えると教示
解答後、自分で採点を行い、報酬を受け取るよう教示
実験者は退出(→カンニングが可能)
8
実験2
• 結果
• 報酬の量は決定論条件>自由意志条件≒統制条件
• 反自由意志の文章を読むことで、自由意志信念が低
下し、報酬の量(カンニングの量)が増加した
• 人はデフォルトで自由意志信念を持っている
12
10
報
酬
の
量
8
6
4
2
0
自由意志条件
統制条件
決定論条件
9
結論
• 自由意志信念が低下するとカンニングが
増加する
• 実験1では受動的なカンニング
• 実験2では能動的なカンニング
10
自由意志への不信が
攻撃性・援助行動に与える影響
Prosocial Benefits of Feeling Free:
Disbelief in Free Will Increases
Aggression and Reduces Helpfulness
Baumeister, R. F., Masicampo, E. J., &
DeWall, C. N.(2009)
11
研究目的
• Vohs & Schooler (2008)のさらなる一般化
• 別解釈:テストの不正は、見かけの能力向
上?
• より一般的に、自由意志信念が向社会的・反
社会的行動に関係することを推定
• 自由意志への不信が攻撃性を高め、援助行
動を減らすことを示す
12
理論的背景
• なぜ自由意志への不信が攻撃・援助に関係
するのか
• 向社会的な対人行動には自己コントロール
が必要。自己コントロールの欠如は、反社会
的な衝動を抑えられないことに繋がる
• 自由意志への信念が自己コントロールに重
要
13
実験1:援助行動
• 文章による自由意志信念操作
• 援助傾向の測定(シナリオ)
• 自由意志への不信で援助傾向が低下
援助傾向
自由意志
*
決定論
*
統制
4.5
5
5.5
6
6.5
* p<.05
14
実験2:援助行動
• 自由意志信念の測定(尺度)
• 援助傾向の測定(実在人物への援助意志)
• 自由意志への不信が、援助傾向の低さにつ
ながる
自由意志への不信
β=-.30*
援助時間
* p<.05 15
実験3:攻撃行動
• 文章による自由意志信念操作
• 攻撃性測定(サルサソース)
• 自由意志への不信は攻撃性を高める
攻撃性
自由意志
**
決定論
0
5
10
15
20
** p<.01
16
Add as much salsa as you want.
実験者
I hate spicy foods…
サクラ
攻撃性
自由意志
**
被験者
Eat this!!
決定論
0
5
10
15
17
20
結論
• 自由意志への不信が攻撃性を高め、援助行
動を減退させる
• 自由意志を信じることは向社会的行動を促
進、自由意志への不信は反社会的行動を促
進
18
序論① 日本における自由意志研究
 今までみてきた通り、昨今海外では自由意志信念
(自由意志を信じるか信じないか)についての研究が
進んでいる
 しかし、日本においては自由意志信念の研究は進ん
でいない。
↑また、自由意志信念を測定する尺度の日本語版も未
だ作成されていない。
19
序論② 自由意志信念研究や尺度化の重要性
①自由意志を信じるか否かが、人の認知や行動に影響を与
えるとするならば、社会心理学がその影響を看過すること
はいただけない。
②自由意志が哲学上の抽象的概念から、心理学の領域に、
尺度として定量的なものに引きずり落とすことができる。
20
序論③ 自由意志尺度について
そこで、本研究では、
 日本語版自由意志信念尺度を作成したうえで、
⇒Paulhus & Carey(2011)の作成した、『自由意志信
念尺度FAD-plus』の27項目の日本語訳を作成し、因
子構造や信頼性を確認
 先行研究で示唆された自由意志信念と向・反社会的
行動の関係について踏み込んだ研究を行った。
21
序論④ 先行研究の問題点
先行研究では、自由意志信念の低下により、
①向社会的な行動(援助行動)の抑制(Baumeister et al., 2009)
②攻撃行動の増加(Baumeister et al., 2009)
③反社会的行動の増加(Vohs & Schooler, 2008)
を示した。
☜自由意志信念の低下が、生存のために必要な労
力(制御資源)を消費する自己制御を抑制するため
⇒自由意志への不信が、わざわざ労力(制御資源)を必要とする自己制御
をする意欲を減退させ、労力を必要としない衝動的行動や自己中心的な行
動を促進する
22
序論⑤ 媒介変数としての自己制御
【自己制御・社会的行動・自由意志の関係】
≪自己制御≫
人間は行動を制御する際に、制御資源を使用する。
制御資源は人間が生存するために必要なグルコー
スが深く関わっており、行動や考えのコントロールは
資源を消耗するため、資源を節約したいという動機
は常に存在。
先行研究では、自己制御
の関連を自明のものとし
自己制御を測定している
わけではない!
≪向社会的行動≫
衝動的短絡的な行動を労力をかけて制御した賜物
≪反社会的行動≫
自らの欲求や自動的、衝動的反応を、労力をかけ
て制御することを怠りそのまま表出
⇒≪自由意志信念の不信≫
「自分が頑張ってもどうにもならない」というように自
己制御を抑制して資源を節約する方向に向かわせ
る。
23
Dr. Roy Baumeister
仮説 媒介変数としての自己制御
そこで、本研究では、
H1. 【自由意志信念を信じているほど、
「社会的な場面で自己を制御しよう」という動機づけが高まる】
H2. 【社会的自己制御が高まった結果、
援助行動が促進され、攻撃行動が抑制される】
という関係を示す(図1)
援助行動
自由意志
自己制御
攻撃行動
図1 各変数の関係。
赤字=正、青字=負の関係
24
方法
 手続き
質問紙調査を実施
参加者に質問紙を配布し、各尺度について
それぞれ5件法で評定させた
 参加者
大学生178名
男性86名, 女性91名, 不明1名 平均21.2歳
東大
男性63名, 女性32名, 不明1名
岐阜大 男性23名, 女性59名
25
方法
 材料
・自由意志の信念尺度 27項目
FAD-plus (Paulhus & Carey, 2011) を邦訳
ex)「人々は完全な自由意志を持っている」
・社会的自己制御尺度 29項目
(原田・吉沢・吉田, 2009)
ex)「困難なことでも、集中して取り組む」
・向社会的行動 6項目 (栗田, 2001)
ex)「ボランティア活動に参加する」
・攻撃行動 6項目 (磯辺・菱沼, 2007)
ex)「思わず暴力を振るってしまうことがある」
26
結果①<自由意志の尺度構成>
 邦訳版FAD-plus27項目について、因子分析を行っ
た(重み付けのない最小二乗法、プロマックス回転)
 固有値の減衰状況と解釈のしやすさから、3因子を
抽出
 「いずれかの因子に.30以上の因子負荷があり、そ
れ以外の因子には.30以上の因子負荷がない」とい
う基準を満たす17項目を選択し、再度因子分析を
行った(付録表1)
27
結果①<自由意志の尺度構成>
• 抽出された因子
因子1:自由意志
ex) 「人々は自分がした誤った選択に対して、すべての
責任を取らなければならない」
因子2:決定論
ex) 「すべての人には、運命によって未来図が用意され
ている」
因子3:予測不可能性
ex) 「人々の未来は予測することができない」
28
結果①<自由意志の尺度構成>
• 因子2、因子3の項目を反転項目とし、自由意志信
念尺度を構成
• α係数は、自由意志(尺度全体)でα = .50、自由意
志でα = .67、決定論でα = .67、予測不可能性でα
= .77であった
• 尺度全体、下位尺度それぞれの相関係数を算出
(付録表2)
→下位尺度では、自由意志と予測不可能性の
間 に有意な正の相関がみられた
(r = 0.177, p < .05)
29
考察①
 下位尺度の自由意志と決定論との間に相関はみられな
かった
→つまり、両者は併存しうることが示唆された
 自由意志と予測不可能性との間に相関がみられた
→何が起こるか分からないからこそ、自分の意志 で行
動すると考えられる
 「結果」より、信頼性が高いことが確認された
 先行研究で抽出された「科学的決定論」が抽出できず
30
以下の分析においては、ここで構成した
自由意志の信念尺度を用います
31
結果②
 それぞれの質問項目を単純加算し、社会的自己制御
尺度・向社会的行動尺度・攻撃行動尺度を構成
 α係数は、社会的自己制御でα = .82、向社会的行
動でα = .56、攻撃行動でα = .85であった
 上記尺度について相関係数を算出(付録表3)
32
表3.自 由 意志の信念、社会的自己制御、向社会的行動、攻撃行動間の相関係数
自由意志全体
自由意志全体
社会的自己制御
向社会的行動
社会的自己制御
1
向社会的行動
攻撃行動
.197**
-.011
-.047
1
.247**
-.206**
1
-.064
攻撃行動
N = 178
1
*p < .05,**p < .01
33
結果③ 構造方程式モデル
• 次に、
「自由意志の信念が、社会的場面における自
己制御を促進し、その結果として向社会的行
動が促進され、攻撃行動が抑制される」
という仮説モデルに関して、構造方程式モデ
ルを用いて分析をおこなった。
34
結果③ 構造方程式モデル
• その結果、「自由意志から社会的自己制御」
「社会的自己制御から向社会的行動・攻撃行
動」のパスの係数はそれぞれ有意であった。
自由意志
.20*
.25*
向社会的行動
-.21*
攻撃行動
社会的自己制御
適合度指標
• χ2 (2) = 0.73, p =.87
• GFI = .99, AGFI = .99
• RMSEA = .00
35
結果③
 H1. 【自由意志信念を信じているほど、「社会的な場面
で
自己を制御しよう」という動機づけが高まる】
H2. 【社会的自己制御が高まった結果、
援助行動が促進され、攻撃行動が抑制される】
→両仮説ともに支持された!
 自由意志の信念がもたらす内的なプロセスを自己
制御が媒介していることが示された
36
結果④
 ただし・・・自由意志の信念から向社会的行動・攻撃行
動への直接効果が見られなかった
37
全研究を通した考察
38
考察① 問題点
・先行研究で示された、自由意志信念から攻
撃・向社会的行動への直接効果が見られな
かった。
各々の行動について…
先行研究:実際の行動を測定
本研究:行動経験の自己報告のみ
→測定の妥当性の差異による?
39
考察② 今後の課題
・自由意志信念を実験的に操作した場合にも、
同様のプロセス(自己制御低下を媒介)が見ら
れるか?
・より制御資源に近接する認知レベルでの自己
制御能力に関する検討
ex. エフォートフルコントロールなど…
40
41
表2. 邦訳版 FAD-plus(邦訳版自由意志信念尺度、問 1)における相関係数
自由意志全体
自由意志全体
自由意志
1
0.524
自由意志
1
**
決 定論
-0.455
予測不可能性
**
-0.589 **
0.128
決 定論
0.177 *
1
0.068
予測不可能性
1
N = 178
*p < .05; **p < .01
表3.自 由 意志の信念、社会的自己制御、向社会的行動、攻撃行動間の相関係数
自由意志全体
自由意志全体
社会的自己制御
向社会的行動
社会的自己制御
1
向社会的行動
攻撃行動
.197**
-.011
-.047
1
.247**
-.206**
1
-.064
攻撃行動
N = 178
1
*p < .05,**p < .01
42

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