日本の百貨店の海外進出-失敗分析と新たな戦略

Report
日本の百貨店の海外進出
-失敗分析と新たな戦略甲南大学経営学部4回生BLT長坂ゼミ
10951082
山形翔吾
2012/12/27
1
本発表の趣旨
• 問題意識
– グローバル化が進むなかなぜ日本の百貨店の
海外撤退が相次いだのか?
• 海外進出の歴史
• 日系百貨店海外店舗の問題点と失敗分析
• 発見
– 海外店舗が対象とする市場規模の縮小
• 提案
– これからの百貨店海外進出のありかた
2
日本の百貨店海外進出の歴史-戦前• 1906年三越京城店(現在のソウル)
• 1907年三越大連店
– どちらも当時日本が強い影響力を保有
• 1905年・・・韓国の保護国化、大連の租借権取得
– 現地の日本人市場、日本向け物資の買い付け(商
社機能。特に戦中)、日本軍向けの商売
• 大丸、高島屋、松坂屋、白木屋などが
中国大陸、朝鮮半島、東南アジア進出
• 終戦後に全て消滅
3
日本の百貨店海外進出の歴史
戦後~2012年
戦後の主な出店地域
• 北米・・・1958年高島屋ニューヨーク店
– 総出店数:7店舗 →現存:1店舗 ※ディズニーワール
ド日本館内
• ヨーロッパ・・・1971年三越パリ店
※内2店舗は
– 総出店数:20店舗 →現存:4店舗 免税カウンターのみ
• アジア・・・1960年大丸香港店
– 総出店数:106店舗 →現存:34店舗
注:地域名横はその地域での初進出店舗。総出店数は日本の百貨店全体の数
店舗閉鎖に至らなくても資本・業務提携を解消した場合は現存数に含まず
オーストラリアにも1991年大丸がメルボルンに出店。総出店数3だが現存は0
4
なぜ撤退したか?
-既存研究で挙げられている問題点-
• 対象顧客
今回はここに注目
– ターゲットの日本人旅行客の減少
• 現地外部環境の急激な変化
– 家賃の高騰、為替の不安定性
• 日本本社側の業績悪化
– 例:そごうの破綻、大丸の海外完全撤退
• 流通システムの問題
– 日本独自の問屋システムの不在
– 強力な現地財閥の流通システムを独占
5
対象顧客(1) –既存研究の整理と疑問• 多くの海外店舗の
ターゲットは日本人
その他
7%
– 日本人旅行客
– 日本人現地在住者
• 挙げられている問題点
2004年三越ロンドン店の
客層別売上高構成比
日本人
在住者
28%
日本人
旅行客
65%
– 日本人海外旅行客の減少
※川端基夫、「日系百貨店による海外ツーリスト市場戦略の
再評価 : 欧州における新しい変化」、『商学論究』、第58巻第
4号(2011年3月)、244 ページ図1を基に作成
疑問:本当に日本人旅行客は減少しているのか?
⇒その真偽と関連性を独自に検証
6
対象顧客(2) -日本人海外旅行客数推移百万人
日本人海外旅行客数推移(1990-2011年)
20
リーマンショック
同時多発テロ
18
16
90-99年
百貨店海外店舗の
戦後全閉店数の
14
12
※川端基夫、「日本
小売業の多国籍化
プロセス : 戦後にお
ける百貨店・スー
パーの海外進出史」、
『龍谷大学経営学論
集』、第45巻第3号
(2005年12月)より
62%が集中
新型インフル
※
SARS
10
8
6
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
出入国管理統計(法務省)の日本人出国者数を基に作成
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
年度
旅行客数は98年頃から伸びが鈍化。年によって大幅な減少も見られる が、
海外旅行客数の減少と閉店数の関連性は低いのでは?
7
対象顧客(3) -ヨーロッパ※
仏英独西への日本人旅行客数とその総買物額、百貨店閉店数の推移
旅行客数
十万円・人
3500000
4店閉店
7店閉店
総買物額
2店閉店
6店閉店
旅行客数:
2010年は1990年比で20.9%減
となっているが、
トータルで減少していない
90-99年に11の閉店があるため
関連性は弱いといえる。
3000000
2500000
2000000
1500000
1000000
93: 閉店2
94: 閉店1
※欧州総出店数24の内
21店がフランス、イギリ
ス、ドイツ、スペインの4
カ国に集中
98: 閉店4
99: 閉店1
500000
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
年度
旅行客数は「UNWTO(世界観光機関)資料」を基に集計
総買い物額は「JTB REPORT 91-12」記載の海外旅行者1人あたりの買い物額に、上記旅行者数を乗じて算出
百貨店閉店数は2005年までは「日本小売り業の多国籍化プロセス」より、06年以降は独自集計
総買物額: =市場規模
2010年は1990年比で
4分の1以下の80%減
90-93年の大幅減や95-99の
減少も閉店数に対応。
明らかな関連性が見られる!
つまり、旅行客数の減少よりも
市場規模の大幅縮小が閉店要因の1つとなったといえる
8
(参考)三越欧州店舗の
主な国での売上高と市場規模の関係
イギリス
市場規模
市場規模(万)
£25,000
売上高
売上高(万)
£20,000
フランス(2010年閉店)
市場規模(万)
売上高(万)
£2,500 € 70,000
€ 3,000
€ 60,000
€ 2,500
£2,000
€ 50,000
£15,000
£1,500 € 40,000
£10,000
£1,000 € 30,000
€ 2,000
€ 1,500
€ 1,000
€ 20,000
£5,000
£500
£-
£99
00
01
02
03
04
05
06
€ 70,000
€99
07 年度
ドイツ(2008-2009年にかけて閉店)
市場規模(万)
€ 500
€ 10,000
00
01
02
03
04
05
06
€07 年度
売上高(万)
€ 1,600
€ 1,400
€ 60,000
€ 1,200
€ 50,000
€ 1,000
€ 40,000
€ 800
€ 30,000
€ 600
€ 20,000
€ 400
€ 10,000
市場規模の大幅縮小が
売上高減少を招いた
と言える
€ 200
€-
€99
00
01
02
03
04
05
06
07 年度
9
対象顧客(4) –アジア※
アジアへの日本人旅行客数とその総買物額の推移
十万円・人
旅行客数
※香港、台湾、シンガポール、
タイ、マレーシア、インドネシア
総買物額
7000000
6000000
5000000
4000000
3000000
2000000
旅行客数は「UNWTO(世界観光
機関)資料」を基に集計
総買い物額は「JTB REPORT 9112」記載の海外旅行者1人あたり
の買い物額に、上記旅行者数を
乗じて算出
1000000
0
90
91 92
93
94 95
96
97 98
99
00 01
02
03 04
05
06 07
08
09 10
年度
アジアでも市場規模が大幅に縮小しており、
それが閉店の要因の1つとなったと推測できる
10
対象顧客(5) –検証後の自分の意見のまとめ• 日本人海外旅行客の減少が
日本の百貨店の海外店舗閉店の直接的な理由では無く
• 日本人海外旅行客の買物額減少により
市場規模が大幅に縮小していることが原因
ということは・・・
今後、日本人海外旅行客が増えたとしても
それだけでは過去のような市場規模に回復するとは
考えにくい
戦前から続く日本人需要頼りではダメ
現地住民をターゲットにした店舗運営が必要
11
• じゃあ、現地住民をターゲットに、日本の百貨店
であることを強みに日本ブランドを多くそろえて
売ればいいのでは?
一部のアジア出店で使われた戦略
最初は成功したが、その後・・・
• 市場に百貨店の数自体も増え、ハイパーマー
ケットなど多様な流通形態が力をつけ、
日系ブランドの商品がもはや珍しくなくなる中、
他店、他業態との違いが見えづらくなった。
(上海伊勢丹の例)
⇒さらなる差別化が必要
12
日本文化・流行情報発信基地化
統一阪急百貨台北店の例
• テナント- 日本ブランドの充実
– 日本ブランド店舗:全体の16.9%
日本関連店舗と合わせて22.7%
– 参考:近隣店舗新光三越信義新天地店
• 日本ブランド店舗:全体の7.2%
日本関連店舗と合わせて11.8%
• 新しい店舗テーマ
※各店舗HPのテナント一覧から独自に集計
「モノ」リテイラーから「情報」リテイラーへ
– 顧客参加型のイベント広場「コトコトステージ」等、
物販以外のスペースを多く設置し、
そこで生活シーンや使用価値を
提案し、商品を買ってもらう
⇒日本製品や日本の流行を
より深く現地顧客に知ってもらい
価値を実感してもらうことが可能
13
今後の海外店舗に必要な戦略
• 何でもそろう現地メガ百貨店との対抗
(参考) 売場面積 上海第一八百伴 :10.8万㎡
上海伊勢丹
:1.5万㎡
– 市場が成熟につれて消費者嗜好の多様化が始まる
• オンリーワンブランドでの来店動機の向上
• 店舗コンセプトをさらに絞った店舗
⇒規模は小さくてもブランド力や個性の強い百貨店
であれば海外展開が可能に
• 日本と現地の流行をミックスした独自のスタイル
の提案
– 脱“日本依存”のスタート
14
最後に・・・海外進出の必要性
• 国内市場減退の中での
新たな市場開拓
• 訪日外国人客の誘導
– 百貨店売上高は減少傾向の中、
外国人売上高は増加傾向にある。
– 日本政府は2010年現在訪日外国人数861万人を
2016年までに1800万人、将来的に3000万人に
増やす方針 ・・・これからも売上増加が見込める
⇒ブランド力を海外現地でも高め、
訪日時の来店動機を高める
時事通信社 時事ドットコム
「 【図解・経済】百貨店売上高の推移」より
15
参考資料(1) -文献•
川端基夫、「戦前・戦中期における百貨店の海外進出とその要因」、『龍谷大学経
営学論集』、第49巻第1号(2009年6月)、1-22ページ
•
川端基夫、「日本小売業の多国籍化プロセス : 戦後における百貨店・スーパーの
海外進出史」、『龍谷大学経営学論集』、第45巻第3号(2005年12月)
•
川端基夫、「日系百貨店による海外ツーリスト市場戦略の再評価 : 欧州における
新しい変化」、『商学論究』、第58巻第4号(2011年3月)
•
林廣茂、「京城の五大百貨店の隆盛と、それを支えた大衆消費社会の検証 ~主と
して昭和初期から同15年前後まで~」、『日韓歴史共同研究報告書』、上巻(2005
年11月)、129-166ページ
•
上村淳三、「大型小売業の海外進出」、『流通現代史:日本型経済風土と企業家精
神』日本経済新聞社、1993年4月
•
『JTB REPORT 91-12』JTB総合研究所、(1991-2012)
•
UNWTO(世界観光機関)資料 (「世界観光統計資料集:海外主要目的地別アウトバ
ウンド旅行者数」、アジア太平洋観光交流センター、(1996,1997,2000-2010)
16
参考資料(2) -インターネット•
株式会社三越伊勢丹ホールディングスHP IR情報
http://www.imhds.co.jp/ir/
– 株式会社三越決算説明資料、平成12-19年度
– 株式会社伊勢丹決算説明資料、平成15年3月期-平成20年3月期
•
•
•
•
•
出入国管理統計(法務省)
http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_nyukan.html
BiZpresso.net 「伊勢丹(中国)投資 – 得意商品分野に絞り込み」 2010/09/22
http://bizpresso.net/special/article/279.html
統一阪急百貨台北店HP
http://www.uni-hankyu.com.tw/taipei/index.asp
新光三越百貨信義新天地店HP
http://www.skm.com.tw/10/index.asp
株式会社エイチ・ツー・オー リテイリングニュースリリース
「阪急うめだ本店 2012年11月下旬グランドオープン」について」
•
•
•
•
日本貿易振興機構(JETRO)
「市場・トレンド情報 2011年上海百貨店(単店)販売額トップ20」
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/fashion/trends/1202001.html
時事通信社、時事ドットコム「 【図解・経済】百貨店売上高の推移」2012/01/19
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_eco_retail-departmentstore-sales
日本百貨店協会HP
http://www.depart.or.jp/
国土交通省観光庁「訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業) 」
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/vjc.html
以上すべて2012/12/26チェック済
17
ご清聴ありがとうございました。
質問・意見等があれば遠慮無くお願いします。
18

similar documents