デジタルコンテンツを用いたフランス語教育 ―豊かな学びを目指して― Rencontres Pédagogiques du Kansaï 2014 小松祐子(筑波大学) Sachiko Komatsu (Université de Tsukuba) [email protected] デジタル教材とは何か? 「教育目標の実現のためにデジタル化さ れた学習素材と学習過程を管理する情 報システムを統合したもの」 山中祐平編『デジタル教材の教育学』東京大学出版会 2010(序章p.1) デジタル教材50年の系譜 1. (1975-1985) CAI (山中、2010) Computer assisted instruction:コンピュータにより支援された教授活動 (背景に行動主義の学習観) コンピュータが質問を出し、学習者の応答の生後に応じて適切なフィードバックを行う → 学習者の個人差に対応する方法として注目、しかし構造的に記述できる問題し か取り扱えないためその後下火に 2. (1985-1995)マルチメディア教材 (背景に認知主義の学習観) PCの性能向上、画像・音声・映像が取り扱えるように。学習者が関心に応じて教材 データベースにアクセスしながら学習を進める → 新しい学習スタイルとして注目されたが、学習方略を持たない学習者は十分に使 いこなせないことから限られた利用にとどまった 3. (1995-2005) CSCL Computer supported collaborative learning:コンピュータ支援による協調学習 (背景に社会構成主義の学習観) 学習者のテキストベースによる議論活動(チャット)、ブログ、SNS → 思考や対話の過程に介入することが容易であり、ネットワーク技術の教育利用と して注目されたが、議論のテーマ設定や学習者のグルーピングに関するノウハウが ないと学習が成功しないという課題も明らかになった CALLの変遷(山中、2010) 「設定する学習目標と学習科学などの関連諸 分野に依拠した第2言語学習理論に基づいて デジタル教材は使用されるべきである。」 (山田政寛、山中編『デジタル教材の教育学』第 4章「第2言語習得での活用」p.75) CALLの変遷 (畑佐、2012) 1970-1980 大型コンピュータとターミナルをつかったシステム 構造主義を反映したオーディオリンガルメソッドに基づいたチュートリアル型 やドリル練習帳のコースウエア 1985-1995 コンピュータのマルチメディア化 音声・画像の利用 レーザーディスクの利用 1990年代 ウエブの登場 生教材を学習に取り入れることが容易に 母語話者と学習者が直接コンタクトをとることが容易に →CMC(Computer mediated communication) ビデオ会議などを使った遠隔学習 2000~ 「ゲーム」の教育利用 携帯電話やスマートフォン用アプリ • 「第二言語学習においては、はじめにテクノロジーあり きではなく、第二言語習得理論に基づいて、テクノロ ジーの利用を考えるべきだという立場は筋が通ってい るが、実社会では新しいテクノロジーの波は第二言語 習得理論とは無関係にやってくる。従って、我々は新 しいテクノロジーの有効な利用方法を模索していく立 場に立たされる。現場の教師たちも、新しいテクノロ ジーを使って授業をより効果的かつ効率的、そしてよ り魅力的なものにする方法を考えだそうと努力する。」 (畑佐一味、『第二言語習得研究と言語学習』 「第5部 テクノロジーと習得 総論」p.264) デジタル教材の魅力 • 時間・場所に制約されない学習(自学自習に 最適) • マルチメディア素材(操作性) • リソースの豊富さ、多様性 • 双方向性 • コミュニケーション機能 • 学習管理機能 デジタル教材で豊かな学びが可能に なるか? • 教材だけでは無理 • タブレット教材の検討結果 「今後はこれらの端末の高い携帯性・操作性を生 かし、教室でどのような授業活動を展開できるかを 検討することが重要となるだろう。ドリル的なものを 個人学習で行っているだけでは、「教育を変える」 とは言えないのではないか。便利な道具を使って、 いかに創造的な学習活動、協同学習活動を生み 出していくかは、教師の創意工夫、力量にかかっ ているのである。」 (小松, RPK2013) Social mediaと外国語学習 (小松, RPK2011) • 学習者中心 (CGM: Consumer Generated Media) • 行動中心主義 (タスクベース、プロブレム ベース、コンテクストベース) • 協調学習 (CMC : Computer-Mediated Communication • 社会構成主義の学び ( ヴィゴツキー「人は, 他者とはたらきかけあうなかで,自らの考え・ 知識を構成していく」 Social media と外国語学習 (小松, RPK2011) ソーシャルメディアを使った学習の課題 • 目標設定 • 継続性 • コミュニティーへの所属感 • 学習・認知プロセス支援をどうするか • フォーマルな教育システムにいかに取り入れる か • 学習者の発言や行為などをどのようにコントロー ルするのか • 評価をどうするか Lang-8を使った授業 • 筑波大学 フランス語上級 2011年度の授業 例 Lang-8とは? http://lang-8.com/ Exemple Lang-8を使った授業 授業形態 • あらかじめLang-8で日記を書く →授業に持ち寄る →ネイティブの添削を授業内で紹介し、話し合い →教師によるコメントとまとめ 学習の利点 • 学習者の主体的取り組み(予習が前提) • ネイティブに見てもらうという満足感 • 教室内にとどまらない開かれた学び • 教室内で発表し、他の学習者と共有 参考文献 • 畑佐一味他編著, 『第二言語習得研究と言語学習』 , く ろしお出版, 2012. • 山中祐平編, 『デジタル教材の教育学』 ,東京大学出版 会, 2010. • 小松祐子, 「タブレット端末がフランス語教育に与える可 能性」, 『関西フランス語教育研究会論文集 RENCONTRES』第27号, pp.98-102, 2013. • 小松祐子, 「ソーシャルメディアと外国語学習・教育-フ ランス語の新しい学びのために-」, 『関西フランス語教 育研究会論文集RENCONTRES』第25号, pp. 76-80, 2011.