複雑地表面上の大気境界層における乱流と物質輸送

Report
ドップラーライダーによる宇宙からの風観測に関する講演会
東京大学本郷キャンパス理学部小柴ホール,2011年9月30日
複雑地表面上の大気境界層にお
ける乱流と物質輸送:
観測とモデルの融合研究へ
竹見哲也
京都大学防災研究所
境界層と物質輸送
• 地表面‐対流圏インターフェースとしての大気境界層
– 乱流輸送:地表面から自由対流圏へ
– 積雲対流:境界層対流からの発達
熱帯積雲
⇒物質輸送:乱流・対流・移流
• 輸送現象
– 黄砂、ダストストーム
– 大気汚染
京都での黄砂
ゴビ砂漠
砂嵐
境界層と物質輸送:黄砂発生源域を例に
• 強い地表面加熱による乾燥対流
– 深い対流境界層の発達
– 微細規模組織構造
– 積乱雲への発達
• 物質輸送における境界層過程の役割
– 鉛直輸送から水平輸送へ
† 地表面から自由対流圏へ
ゴビ砂漠でのエアロゾル濃度の日変化
(Yasui et al. 2005)
境界層・物質輸送モデル研究の立場では
• 風の変動が定量的にどの程度表現されているか知りたい
– 気象擾乱(低気圧・台風・積乱雲)による変動
– 地表面形態(地形の起伏・地表面粗度)による変動
† 数値計算の結果の妥当性を検証する実測値が不足
している
• 乱流特性がどの程度表現されているか知りたい
– 短周期・局所規模での微細変動
– 乱流粘性、乱流拡散の大きさ
† 地形・地表面粗度・気象条件に応じて特徴は変化
† モデルでパラメタライズされた情報がどの程度妥
当なものであるか検証する実測値が不足している
話題:モデル研究の結果から
• 境界層発達の日変化と物質輸送のLES
– 砂漠域での深い対流境界層の発達とダスト輸送
† 大気安定度に対する依存性
• 複雑地表面(地形・粗度)と気流の関係についての高解
像度での数値シミュレーション
– 冬季低気圧通過時の日本海沿岸地域での突風事例
– 低気圧通過に伴う東京都心での突風事例
安定度が境界層発達と物質輸送を決める
数値実験
• 簡略化した大気条件:水平一様な基本場・地表面特性
– ゴビ砂漠を想定した条件
• 計算領域:40 km (x; 主流方向) x 10 km (y) x 11 km (z)
• 格子幅:Dx=100 m, Dz=20-240 m (85層)
初期の温位プロファイル
• EXP1:
– 境界層は強い安定成層
• EXP2:
– 接地層のみ強い安定成層・
上部に中立成層
大気の鉛直構造の日変化
仮温位および(雲水+雲氷)混合比の鉛直分布の日変化
EXP1
EXP2
積乱雲
境界層
境界層
日の出
日の入
日の出
日の入
鉛直流の水平分布:EXP1
0900 LT
z=200 m
z=2 km
z=6 km
1500 LT
鉛直流の空間構造:EXP2
0900 LT
z=200 m
z=2 km
z=6 km
1500 LT
物質輸送の安定度への依存性
EXP1
EXP2
カラー:上向きフラックス (mg/m2/s)
実線コンター:ダスト濃度(mg/m3)
点線:雲の境界
ダストコラム量(領域平均)の比較
• シビアストームの場合:12.5 g/m2
• 晴天時の場合(EXP1):1.2 mg/m2
• 晴天時の場合(EXP2):0.63 g/m2
微細規模地形と気流の関係
• 解析対象1:冬季低気圧通過時の日本海沿岸地域(庄内
平野)での突風
– 2008年/2009年冬季の突風事例(計8事例)
† 日最大瞬間風速25.0 m/s以上
– 水平格子幅:100 m
• 解析対象2:低気圧通過に伴う関東平野南部での突風
– 2004年12月5日東京で最大瞬間風速40.2 m/sを記録し
た事例
– 気象モデルから建物解像CFDモデルへのダウンス
ケールによるLES(60 m格子から20 m格子へ)
日本海沿岸域突風の100 m格子計算
標高
土地利用
酒田市街地
40
km
鶴岡市街地
40 km
事例別の地上風速分布
期間平均風速
2008年12月28日
日最大瞬間風速:
27.5 m/s
2009年2月21日
日最大瞬間風速:
28.9 m/s
期間最大風速
2008/2009年冬季の強風マッピング
期間平均風速
地上高10 m
20 m
50 m
全8事例の合成図
期間最大風速
気象モデル/CFDモデルダウンスケーリング
60 m格子
WRFモデル
領域1
スケール:1800km
格子幅:7.5km
建物解像
CFDモデル
20 m格子
領域2
スケール:300km
格子幅:1.5km
南西
領域3
スケール:100km
格子幅:300m
領域4
スケール:33km
格子幅:60m
北東
気象庁
50m
0m
領域5
スケール:6.5×1.3 km
格子幅:20m
気象計算による風速特性の空間分布
強風時(2004年12月5日4-7 JST;卓越風向:南南西)の
地上風の格子点別時系列の平均風速・最大風速
平均風速
最大風速
建物解像モデル計算領域
• 側面境界は周期条件
• 流出境界は移流型条件
• 上部境界は
u
v
 0,
 0, w  0
z
y
• 流入境界でWRF出力(水平風速成分)を時間・空間に補間
(WRF時間ステップ0.2秒,LES時間ステップ0.05秒)
流入面
解像度:20 m×20 m×2.5 m~64 m
格子数:300×63×80
(主流方向×スパン方向×鉛直方向)
1.5km
6.5km
1.26km
風速時系列(観測 vs WRF vs LES)
観測値:東京管区気象台による地上高約75 mでの観測
計算値:地上高10 m, 20 m, 50 m, 100 mでの格子点値
まとめ
• 複雑地形や都市での風の情報の重要性
– 防災:風災害の防止と軽減
– 環境:大気汚染、ビル風、都市ヒートアイランド
– エネルギー:風力発電
• 地形の起伏や都市の凹凸による風の変動を高解像度シ
ミュレーションにより算出は可能
– 起伏による風速の大小コントラスト、粗度長の違い
による風速の違い、都市域での乱流変動
観測研究とモデル研究とを相補的に進め、砂漠
や都市、平野部や山岳域、様々な気象条件で、
境界層の風と物質輸送の研究を深化

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