日 本 語 文 法 第三章 体言 上海外国語大学 日本文化経済学院 講 座 体言というのは 活用をせず、主語になれる自立語 体言 名詞 日本語、学校、東京 代名詞 彼、そこ、あいつ 数量詞 一人、2冊、3匹 名詞の特徴 人やものや出来事を指し表す語で、活用をせ ず、格助詞を後ろに続けることができるとい う特徴を持っています。 普通名詞と固有名詞 名詞の下位分類 形式名詞と実質名詞 有情名詞と無情名詞 普通名詞と固有名詞 人名や地名など、ある人や場所などに個別に与 えられた名称は固有名詞と呼ばれる。そうでない のは普通名詞であり、「海」「時計」など具体的 に指し示せるものは具体名詞、「理想」「アイデ ンティティー」など抽象的なものは抽象名詞と呼 ばれている。 普通名詞:日本語、学校、先生 固有名詞:東京、富士山、渡辺 形式名詞と実質名詞 形式名詞は実質的な意味を持たず、次のような文型 の下線部に入ることができない。それ以外の名詞は実 質名詞と呼ばれ、下線部に入ることができる。 これは×もの/×こと/○富士山/○石鹸です。 しかし、「前日、後ろ」なども単独では使えないが、 その理由が違う。 私は×後ろ/○彼の後ろに座っている。 私は、×前日/○先生のご帰国の前日に結婚した。 これらは「何かの」「後ろ、前日」を表すため、 「相対性を持つ名詞」と呼ばれる。 有情名詞と無情名詞 有情名詞は意志を持つもので、人間を含む動 物が該当する。無情名詞は意志を持たないもの であり、植物および無生物が該当する。 部屋の中に男の子が×ある/○いる。 部屋に植木が○ある/×いると、明るくなる。 名詞修飾の種類と特徴 <内の関係> 昨日ローマから帰ってきた田中さんは本を 買ってきた。 田中さんが先週行っているローマは今日も晴 れです。 <外の関係> 隣の部屋からテレビを見て笑っている声が聞 こえる。 田中さんが昨日休んだ理由を聞いた。 内の関係と外の関係 田中さんが食堂でラーメンを食べている。 <文の一部要素を修飾するもの> 食堂でラーメンを食べている田中さん 田中さんがラーメンを食べている食堂 田中さんが食堂で食べているラーメン <文の要素以外を修飾するもの> 田中さんが食堂でラーメンを食べている話 田中さんが食堂でラーメンを食べている原因 共通の特徴 ①主題を表す「は」は使えない。 田中さん○が/×はラーメンを食べている食堂 しかし、対比を表す「は」は使える。 田中さんは利用するが、小林さんは利用しない食堂 ②命令形や終助詞は入れない。 こっちへ×来てもらった×来い田中さん ③ガ・ノ交替が可能な場合がある。 太郎○が/○の書いた手紙 太郎○が/×の夏休みに心をこめて書いた手紙 代名詞 ものや人を直接指すのではなく、間接的に何かを指 す言葉を代名詞という。 自称 人称代名詞 代名詞 対称 近称 他称 中称 不定称 遠称 近称 指示代名詞 中称 反照代名詞 遠称 不定称 対話における文脈指示一 ① A:昨日田中に会ったんだけど、{ ○ あいつ/ × そ いつ}相変わらず元気だったよ。 B: { ○ あいつ/ × そいつ}は本当に元気だね。 ② A:昨日田中という男に会ったんだけど、{ × あいつ / ○ そいつ}は面白い男なんですよ。 B: { × あの人/ ○ その人}はどんな仕事をして いるんですか。 結論:話し手と聞き手がともに直接知っているものはア で指し、そうでないものはソで指す。 対話における文脈指示二 ① 「独り言」 { ○ あのレストラン/ × そのレストラン}の料理 はうまかったなあ。 ②話し手が直接知っていて聞き手は知らない場合 友人に田中という男がいるんですが、 ○ こいつ は面白い男なんですよ。 ③会話中に名前を度忘れしたとき。 今度の会議の× これ/ ○ あれだけど、明日ま でに作っといて。 文章における文脈指示一 「これ」VS「それ」 ① 原因・理由を詳しく述べる場合 A社の下請け会社のB社が倒産した。{ ○ これは / × それは}円高の影響でA社の輸出が減少し たためである。 ②名詞句の一部だけを受ける場合 男性の平均寿命は女性の{ × これ/ ○ それ}よ り短い。 ③先行詞が「こと、もの」などで終わり、その直後で指 すものを受ける場合。 私が大学で学びたいこと、{ ? これ/ ○ それ}は 人生の目標だ。 文章における文脈指示二 「この」VS「その」(1) ① 全体で指すものの内容を繰り返す場合 子供のこと祖母に一冊の絵本を買ってもらった。 私は{ ○ この/ ○ その}本が大好きで、何度も 読み返したものだ。 ②指すものが前の文の内容そのものである場合 「天は人の上に人を作らず。」{ ○ この/ × そ の}言葉は福沢諭吉のものである。 ③指すものを言い換えて受ける場合。 私はコーヒーが好きだ。{ ○ この/ × その}飲 み物はいつも疲れを癒してくれる。 文章における文脈指示三 「この」VS「その」(2) ④ 文の内容が逆接的・対比的である場合 田中さんは小学生のとき、まったく泳げなかった。 { × この/ ○ その}田中さんが今度水泳でオリ ンピック選手となった。 ⑤相対性を持つ名詞がつく場合 この薬はまだ開発されたばかりなので、{ × この / ○ その}効果はまだ十分にはわかっていない。 ⑥文相当の内容を指し、名詞が「結果、理由、原因」 である場合 大阪府の知事に大田氏が当選した。{ × この/ ○ その}結果全国で初めての女性知事が誕生した。 文章における文脈指示四 「こんな」VS「こういう」 ① 文を受ける場合 近所の女が怪我をした猫を拾って大事に育ててい る。殺伐とした事件の多い中{ ○ こんな/ ○ こう いう}話を聞くとほっとする。 ②指すものを否定的に捉える場合 母:今日はこの服を着ていきなさい。 { ○ こんな/ × こういう}服、いやよ。 ③相手の発言内容を受けて肯定する場合。 社長:今日、手形が不渡りになった。 社員:会社が倒産したということですか。 社長:{ × そんな/ ○ そういう}ことだ。 形式体言 形式体言つまり形式名詞は実質的な意味を持たず、 連体修飾節を受けることなしには、使えない名詞の ことである。 形式名詞には、「こと」、「もの」、「ところ」 など名詞から転生してきたものもあれば、「の」の ような助詞から転用されたものもある。そのなか、 「ものだ」、「ことだ」のような「体言+だ」とい う構造をする文末表現はすでに融合していて、助動 詞になったといえそうなものもある。 学生はよく勉強するものだ。 (過労で倒れた人に)とにかくゆっくり休養することだ。 ことだ 何らかの目的や問題解決のために最も重要な行為を表す。 文章がうまくなりたいのなら、いい文章をたくさん読むこと だ。 「ないことだ」は目的のためにはその行為をしないことが最 も重要であることを述べる。「ことだ」自体の否定にはならな い。 A:肌が荒れて困っているんです。 B:夜更かしをしないことだよ。 「ことだ」自体の否定は「ことではない」ではなく、「ことはな い」である。 背が低いからといって、悩む{×ことではない/○ことは ない}。 ものだ(1) ① 「XはYものだ」という形で、Xの本性・本質について 述べる。 人の運命はわからないものだ。 ②「XはYものだ」という形で、一般的な主体・対象・状 況などについて社会通念上必要だ、本来そうあるべ きだと考えられることをYとして述べる。 { ○ 学生/ × 太郎}はまじめに勉強するものだ。 (総称的) { ○ 包丁/ × この包丁}はよく研いで使うものだ。 (総称的) ものだ(2) 否定の形は「ものではない」と「ないものだ」の二 通りが可能です。 人の悪口は{○言うものではない/○言わない ものだ}。 ただし、前者は社会通念に反することを述べる のに対し、後者は社会通念にかなうことを述べる。 そのため、相手をとがめるような場合には、前者 のほうが使いやすいといえる。 (花をむしっている子供に)そんなことを{○する もんじゃない/?しないものだ}よ。 ものだ(3) ③過去のことを回想する。 小学生のころ、毎日この広場で遊んだものだ。 ④感嘆・詠嘆を表す。 人に迷惑をかけておいて、よく平気な顔をしていら れるものだ。 ⑤すでに実現した事態について、その原因や背景を 解説する。 今年から来るまでのチャイルドシートの使用が義務 付けられた。子供の自動車事故による死亡率が上昇 していることから法制化が決まったものだ。 のだ(1)-理由・推量 ① 理由を表す。 昨日は学校を休みました。頭が痛かった○のだ /○ からだ。 ②推量を表す。 (デパートで泣いている子供を見て)きっと迷子 になった ○ のだ/× からだ。 田中君の部屋の明かりが消えている。出かけ た ○のだろう/○のかもしれない/○ のにちが いない/× のはずだ/× のようだ/× らしい。 のだ(2)-言い換え・発見 ③言い換えを表す。 明日は入社式だ。明日からは社会人なのだ。 彼は16歳から18歳までカナダにいた。そこで勉強し たのだ。 ④発見を表す。 (それまでわからなかった機械の使い方がわかった 時)そうか。このボタンを押せばいいのだ。 具体的なものを発見した時には「のだ」を使わない のが普通である。 へえ、こんな本がある{×∮/○のだ}。 あっ、机の上に本がある{○∮/×のだ}。 のだ(3) ⑤先触れを表す。 先生、お話があるんです。お部屋に伺ってもよ ろしいでしょうか。 A:実は山田さんと結婚するんです。 B:それはおめでとう。 A:それで、仲人をしていただきたいんですが。 のだ(4) ⑥前置きを表す。 それでは、質問を{ ○ しますが/ × するんで すが}、日本の初代首相は誰でしょう。(質問) 田中さんの奥さんは外国の方{ ○ ですが/× なんですが}、どちらで知り合われたんですか。 (聞き手が知っていることを述べる) 駅前で個展を{ × やってますが、○ やってるん ですが}、よかったら見に来てください。(依頼) のだ(5) ⑦命令、認識強要を表す。 さっさと帰るんだ。 君は大学生なんだ。もっと勉強しなさい。 「のだった」の機能 ①再認識を表す。 {会社を出ようとしたら雨だった}今日は夕方雨 が降るのだった。 この道はよく渋滞するんだった。 ②反事実を表す。 雨が降り出す前に会社を出るんだった。 「の」と「こと」ー埋め込み表現(1) ① 彼はおいしいものを食べる{ ○ こと/ ○ の}が 趣味です。 あのホテルのサービスがいい{○ こと/ ○ の} は有名です。 ② 田中君の妹が女優な{× こと/ ○ の}はみん な知っています。 田中君の妹が女優である{ ○ こと/ × の}は みんな知っています。 「の」と「こと」ー埋め込み表現(2) ③ ゼミに出られない{ ○ こと/ × の}を先生に伝える。 ご病気が早くよくなる{ ○ こと/ × の}を祈っている。 ④ 私の趣味は映画を見る{ ○ こと/ × の}です。 ⑤ この会社を辞める{ ○ こと/ × の}を考えている。 ⑥ 外国で暮らした{ ○ こと/ × の}はない。 「の」と「こと」ー埋め込み表現(3) ⑦ 公園で子供が走っている{ × こと/ ○ の}を見ていた。 隣の家で誰かが叫ぶ{ × こと/ ○ の}が聞こえる。 ⑧ 子供が寝る{ × こと/ ○ の}を待って、電話をかけた。 パソコンを運ぶ{ × こと/ ○ の}を手伝ってください。 ⑨ 雨なので、花見に行く{ × こと/ ○ の}をやめた。 「の」と「こと」ー埋め込み表現(4) ①私の趣味は走る( こと )だ。 ②走るときは、朝早く海岸を走る( の )がいい。 ③ここに来る( こと )は二度とないだろう。 ④事故現場で君が見た ( こと )を話してくれ。 ⑤家を出るとき、鍵をかける( の )を忘れた。 ⑥家を出るとき、鍵をかける( こと/の )を忘れないように。 「の」と「こと」ー埋め込み表現(5) ⑦私があなたを愛しているという( こと )を忘れないでほ しい。 ⑧私はきょうあった ( こと )を日記に書いた。 ⑨私は太郎が歩いている( の )を見た。 ⑩犬が吠えている( の )が聞こえた。 ⑪私は花子が荷物を運ぶ ( の )を手伝った。 ⑫犯人を捕まえた ( の )は私です。 ⑬当面の課題は、原油価格の動向を見極める( こと )だ。 接続機能を果たす「次第」 ① でき上がり次第、お届け{ ○ します/ × しました}。 見つかり次第、お知らせ{ ○ します/ × しました}。 ② { ○ できあがり/ × つくり}次第、お届けします。 { ○ 見つかり/ × 見つけ}次第、お知らせします。 彼が ○ 帰り次第、お電話をさせます。 ⑨ でき上がり次第、 { ○お届け/× お届き}します。 見つかり次第、{○ お知らせ/ × お知り}します。