土木地質学 - 鹿児島大学

Report
地殻科学(2001.4.20)
実学ノススメ
わが国最古のクリノコンパス
鹿児島大学理学部地球環境科学科
岩松 暉
地質学は趣味の学問?
連想ゲーム:地質学=博物館の飾り(化石・鉱物)
近代地質学の誕生
←W. Smith
↓最古の地質
図(1812)

産業革命期の英国
 工業化の必須条件
 鉄と石炭の時代
 輸送→石炭運河
 いずれも地質学担う
• 博物学からの脱皮
 層序学の父W.
Smith
• 石炭運河の土木技師
• 学問発展の原動力=実
学(必要は発明の母)
国際地質学会議(IGC)

閏年に開催
 2000年リオIGCは
31回目
 シドニーオリンピッ
クは26回目
 国家元首が名誉総
裁勤める慣例
• 産業に多大の貢献

地図の鉱山の印
 IGCのロゴ
地質学の輸入
Coignet(仏)
1867薩摩へ
鉱山地質学
Lyman(米)
1872蝦夷へ
石炭地質学
生野鉱山学校
開拓使仮学校
日本鉱物資源に関する覚書
日本蝦夷地質要略之図
最初の日本人地質技師

朝倉盛明(1800-1888)
 薩摩藩渡欧留学生(1865)
 渡仏しMontblancのところで鉱
山学・鉱山地質学を学ぶ
 後に官営生野鉱山局長
E. NAUMANN


1875年来日,東大教
授・地質調査所創立
学・官の要衝押さえる




『日本列島の構成と生成』(1885)
首都東京に君臨
南北の実学は途絶える
以後,ドイツ流アカデミ
ズムが日本を支配
地質学科卒業生は鉱
山会社・石油会社へ

財閥就職,給料2倍
戦後復興と地質学
資源とエネルギー→鉱山地質学
食糧増産→水文地質学
高度成長と地質学

東京オリンピック
 もはや戦後ではない
 新幹線・東名高速

地質学を支えるインフラ
 資源産業→建設産業

応用地質学
 資源地質→土木地質

地質学バスに乗り遅れ
鹿大応用地質講座誕生

戦後復興期
 当時から理学部の
あった大学
• 応用地質=資源地質

高度成長期
 文理改組→理学部
 鹿大に温泉地質学の
露木教授
 唯一の応用地質講座
豊かな社会へ貢献

社会資本(インフラ)の整備に多大の貢献
 ダム・トンネル・道路・港湾・橋梁など
 公共事業に寄生する安易な姿勢も助長
人口爆発と社会資本

完全循環型社会はせいぜい江戸時代まで
 当時の人口=4,000万人

1億人に豊かで快適な生活を保障→社会
資本の充実しかない
 道路・港湾・鉄道・通信・電力・水道などの公
共諸施設,産業基盤,社会的共通資本
 学校・病院・公園・社会福祉施設など生活関
連諸施設も含めることがある

応用地質学→社会資本整備に貢献
災害軽減にも貢献
鹿児島豪雨災害
北松地すべり
阪神大震災
三宅島噴火
IT革命と地質学

コンピュータの発達
 高速演算
 データベース

情報地質学
 Geoinformatics
 論理地質学

ジオトモグラフィー
 地質計測の進歩

リモートセンシング
応用地質学とは

自然と人間との関わりの中で発生するさま
ざまの社会的な問題に対して,地質学の
立場から応える学問。したがって,その対
象とする課題は,社会的ニーズの変化と
共に常に変化していく。

明治の富国強兵時代から戦後復興期までは鉱山地
質学の代名詞であったし,高度成長期の列島改造時
代には土木地質学と同義語であった。これからの地
球環境時代には環境地質学的な側面が強くなってい
くであろう。
[岩松 暉・新版地学事典]
応用地質学の内容

土木地質学(地質工学,岩盤力学,土質力学)
…ダム・道路・トンネル・港湾・大規模建築物等の建設基礎
水文地質学(温泉地質学)…水資源・温泉・地熱・廃棄物
 災害地質学(防災地質学)…土砂災害・震災・火山災害
 環境地質学(地球環境学)

…地球環境・地域アメニティー・地質汚染・廃棄物処理
資源地質学…金属鉱物・石油・石炭・採石
 情報地質学(数理地質学)

…地質情報データベース・地質図自動作成・CAD・人工知能

リモートセンシング…鉱床探査・環境調査・活断層調査
地球環境問題に直面

生産力増大追求
 資源制約
 環境制約

人類生存の危機
 自然との共生
 富とパンから心
の豊かさへ

南極のオゾンホール
応用地質学も環
境地質学へ
発達を期待する科学技術分野
地球環境や自然環境の保全
65.1
エネルギーの開発や有効利用
63.0
資源の開発やリサイクル
59.0
廃棄物の処理・処分
56.8
土木・建築,交通・輸送,情報・通信
44.3
防災や安全対策
44.1
高齢者や身体障害者の生活の補助
38.4
健康の維持・増進
37.9
工場での生産活動
37
食料(農林水産物)の生産
31.7
家事の支援や衣食住の充実
20.9
わからない
4.1
特にない
複数回答(%)
1.4
その他
総理府世論調査(1998.10)
0.1
0
10
20
30
1位~6位地学関
係!!
40
50
60
70
21世紀の応用地質学
富国強兵時代
列島改造時代
地球時代
地球工学
資源地質学
土木地質学
環境地質学
sustainable development
「持続可能な開発」を支える地質学に
自然の摂理をわきまえた地球にも人間にも
優しい環境の創造にとって地質学は不可欠
環境地質学における環境とは

広義の「環境」
 あるもののとりまきの全ての事象
 鉱床生成時の環境→conditions

環境地質学の「環境」
 人間生活と環境とが相互作用している環境
 人間生活が環境に影響を与えるといった環境
• したがって,白亜紀の恐竜の時代の地質環境の研究は環境
地質学のテーマとはならない。もちろん地質学のテーマには
なり得る。
(高須・田崎,1993)
人間の寿命のオーダーの時間尺度が必要
課題1


21世紀は,環境と調和しながらいかに自然を利用
していくか,環境デザインが重要な課題となる。
単なる自然保護運動でもなく,また,公害たれ流し
の後始末としての「ppmの環境問題」でもなく,人
間が主体的に環境に関わっていく視点が重要



環境デザイン
工学:現在という一時点での最適適応
地質学の長所:ロングレンジの発想・グローバルな視野
このような地質学の武器を生かしつつ,環境デザ
インという課題に具体的に対応できるだけの学問
内容を創造し,技術革新していかなければならな
い。
アメニティ空間の創造

大型プロジェクト依存の時代は終焉
 社会資本はもうかなり充実→ストックの活用
 公共事業≠土木建設,今後は情報インフラへ
 土木建設はメンテナンスへ

心の豊かさの時代へ
 物質的豊かさ・快適・便利の代償大きい
• 兎小屋・通勤地獄・都市砂漠・環境破壊・心の荒廃
 地方の時代,在宅勤務,家庭の再構築

広域ローカル型(広域市町村程度)社会資本
 環境と調和したアメニティ空間の創造
土地利用計画と地質学

環境アセスメント
 地域の自然環境を科学的に把握する
 人文社会環境・地域の歴史も忘れない

防災(リスク)アセスメント
 ハザードマッピングと確率的評価

一面性を排し,最適解を見いだす
 ベストがなくてもベターを
 自然に逆らわない,環境に配慮したデザイン
 長い目で見て歴史の評価に耐えるデザインを
課題2

地球工学
マクロエンジニアリング
 在来型開発路線ではあるが当面続く
 ジオフロント・地層処分など

資源開発
 資源とエネルギーはいつの時代も必要
 札ビラで買える時代終わる→汗を流す
 骨材資源枯渇,希少金属資源(新材料社会)

地球環境問題の解決
 砂漠緑化など自然改造,その他
課題3

農の時代
100億の人口をどう養うか
 21世紀は食糧難
 国内での自給自足が原則
• 食糧輸入=他国の土壌収奪

農林地質学の復権
1000ha
8
7
6
5
4
3
2
1
0
1人当たりの陸地面積
2050年
100億人
1.5ha
中石器時代
532万人
800ha
10
8
6
4
 脇水鉄五郎と東大農林地質学講座
 戦後の食糧増産運動で水文地質学誕生
 水・土・木・空気は生物生存の根源
• 国際的→水資源,農地・林地保全,砂漠緑化
• 国内的→環境と調和した農業土木
2
0
万年前
課題4

世界水フォーラム
水の安全保障7つの挑戦
1.生活に必要な最低限の水の確保
5人に1人水不足,毎年300-400万人汚染水で死亡
2.持続可能な管理で生態系の保護
3.食糧供給の確保
4.水資源の共有
5.リスク管理
6.水を価格評価
7.水資源の適正管理
池田湖
(2000, ハーグ)
課題5
メンテナンス地質学
高度成長期の構造物一斉に寿命が来る
 建設のための地質学から安全性の地質
学・耐久性の地質学へ

 コンクリートは人工礫岩
 ナチュラルアナログ
• 割れ目と水,風化
 コンクリート工学でできない分野の開拓

メンテナンス地質学
 ex.
法面の保守・点検・管理
課題6

あとしまつ工学
破壊された環境の復元
 地質汚染調査だけでなく復元技術の開発も

廃棄物処理
 最終処分場→ダム地質のノウハウ役立つ

高レベル放射能の地層処分
 核のゴミ溜まる一方→自国内処分が原則
 深部地質の解明
 ナチュラルアナログ
 地下水挙動の長期予測
今後の地球科学に大きな
インパクトをもたらす変化
 人口の増大と都市化
 汚染と土地の劣化
 地球規模の気候変動
 “新材料社会”
世界地質調査所コンソーシアム(1994)における
カナダ地質調査所Babcock所長のキーノートスピーチ
Earth System Science for
the Future Needs of Society

We need new partnerships for the
management of the Earth. For most of the
great world problems we require integrated
teams of expert from many of the classical
disciplines. We must develop improved
systems of education for all people and we
require literacy, numeracy and sciency for all.
Multi-disciplinary geologistsの養成を(W.S.Fyfe,
1996)
[前IUGS会長]
The Role of the Earth Sciences
in a Sustainable World

Geology in the service of society
 Monitoring
of the Earth System’s processes
 Exploration, management and supply of mineral
resources
 Exploration, management and supply of energy
resources
 Conservation and management of agricultural soils
 Natural disasters reduction
Interdisciplinary approach必然
(U.G.Cordani,2000)
[元IUGS会長]
これからの地球科学

アメリカで成長しつつある若い学問分野
 水文学,水理地質学,ネオテクトニクス/地形学,
大陸縁海洋学,応用地質学,地質災害,環境科
学,表面化学/水の地球化学,物質科学

縮小傾向にある成熟した学問分野
 構造地質学,岩石学,鉱物学,古生物学,地域
地質学,層序学
W.G.Ernst (1997), 地学雑誌 106(5), 735-738.
Dept. Geol. Environment. Sci., Stanford Univ.
“Earth Systems”の構成
INTRODUCTION
THE EARTH AS A SYSTEM
NATURAL PROCESSES
THE GEOSPHERE, THE HYDROSPHERE,
THE ATOMOSPHERE, THE BIOSPHERE
SOCIETAL AND POLICY IMPLICATIONS
RESOURCE USE AND ENVIRONMENTAL TECHNOLOGY
SOCIETY, THE ENVIRONMENT, AND PUBLIC POLICY
SUMMARY
ERNST, W.G. ed. (2000): Earth Systems -- Processes and Issues --. Cambridge Univ. Press, 566pp.
応用地質学と純粋地質学
物理
化学
純粋地質学
学応
用
地
質
社 会
etc.
基
礎
科
学
るず葉根
こしな・
とてく幹
な幹,な
し成葉く
長繁し
すらて
応用地質学は社会から養分補給し
新領域開拓,純粋地質学は基礎科
学から最新知識を吸収し光合成
日本技術者教育認定機構
(JABEE)

WTO サービス貿易の
自由化勧告








分野別基準設定
必修科目増えそう
各大学の学科を審査

International Engineer
も日程にのぼる
認定された教育課程
修了が第一要件
日本でもJABEE発足

APECエンジニア
Washington Accord


技術者資格の国際相
互承認が不可欠

卒業生の最低レベルの
者でも国際水準をクリ
アしていること
答案チェックや面接も
下駄が発覚したら取消
JABEEコース特設か

ここの卒業が就職直結
学生時代に何をなすべきか

受身の勉強からの早く脱却し,自ら学ぶ姿勢を





地質調査ができるのが基本


地質図が描ける=日本語がしゃべれる
数学・物理・化学の基礎と語学を


「徒に生きる」から「学んで生きる」へ
昨日と同じ物を今日売ると明日はつぶれるのが企業
大卒は明日売れるものを考える幹部候補生
大量生産時代のリモコンロボット的人間はもう不要
国際的競争に不可欠,毛嫌いせずチャレンジを
広い視野と見識,それに高い倫理観を

独創性の源は幅広い読書
The End
私の講義はいつでも中断して構いません。ど
しどし質問してください。大いに議論しましょう。

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