筒井紀子 - 日本禁煙推進医師歯科医師連盟

Report
日本歯科大学新潟短期大学新入生に対する
禁煙教育の効果
○筒井紀子 大森みさき 山口 晃
中村直樹 佐野公人 関本恒夫
日本歯科大学新潟キャンパス禁煙実行作業部会
目 的
②WHO国際結核胸部疾患予防連合「喫煙と健康」委員会の質問紙(歯科用に一部改変)
日本歯科大学新潟キャンパスは2007年4月から敷地内全面禁煙としている。そして毎年新学 以下、結果に示すのは講義実施前後で比較できる項目とした。(問9~問16)
講義前 ・・・
前
講義後 ・・・
後
期に、新入生に対して喫煙防止と禁煙を支援する医療従事者となる自覚を促すため、喫煙の
為害性や禁煙支援に関する特別講義を行っている。今回我々は、講義の前後で学生の喫煙と
健康に関する意識の変化を調査し、教育効果および今後の禁煙教育の内容を検討するため、
短期大学新入生に対して質問紙による調査を行った。
問9.今から5年の後、あなたの喫煙習慣はどのようになっていると予想しますか。
ほぼ確実に毎日吸っていると思う
おそらく吸っていると思う
吸っていることはあり得ないと思う
無回答
対象および方法
0%
後
76%
0%
12%
0%
81%
20%
40%
6%
60%
80%
100%
問10.ご自分の禁煙の動機、または喫煙しない理由として、次のようなことがらをどの程度重視しますか。それぞれの
ことがらについて、どの程度重視するかをお答え下さい(該当する欄に○を記入。現在喫煙している場合にも、「もし
禁煙するとしたら」という仮定でお答え下さい)。
非常に重要
多少重要
余り重要でない
無意味
無回答
計116名全員から回答を得た。
① 加濃式社会的ニコチン依存度質問票(KTSND)
講義前
講義後
1.タバコを吸うこと自体が病気である
1.1±1.0
0.7±0.9*
2.喫煙には文化がある
0.8±1.0
1.0±1.1
3.タバコは嗜好品(味や刺激を楽しむ品)である
1.5±1.2
1.2±1.1*
4.喫煙する生活様式も尊重されてよい
0.7±0.9
0.6±0.9
5.喫煙によって人生が豊かになる人もいる
0.9±1.1
0.7±0.9
6.タバコには体や精神に良い作用がある
0.3±0.6
0.3±0.7
7.タバコにはストレスを解消する作用がある
1.5±1.0
1.1±1.1*
8.タバコは喫煙者の頭の働きを高める
0.2±0.6
0.3±0.7
9.医者はタバコの害を騒ぎすぎる
0.3±0.6
0.4±0.7
10.灰皿が置かれている場所は喫煙できる場所である
1.9±1.0
1.3±1.1**
9.2±5.1
7.9±5.9**
総 合 点
2%
21%
1%
結 果
質 問
2%
前
対 象 :日本歯科大学新潟短期大学116名
(2008年度生57名、2009年度生59名、全員女性)
調査時期:1年次の5月
方 法 :禁煙支援に関する講義の前後に質問紙による調査を実施
質問紙 :① 加濃式社会的ニコチン依存度質問票(KTSND)
② WHO国際結核胸部疾患予防連合
「喫煙と健康」委員会の質問紙(歯科用に一部改変)
おそらく吸っていないと思う
Mann-Whitney’s U test( * P < 0.05 , ** P < 0.01)
A.何らかの症状
が現れる
B.病気の予防
前
66%
後
78%
前
11%
72%
後
3%3%
18%
0%
3% 4%
12%
82%
6%
0%
C.お金の節約
D.自制心を養う
前
55%
59%
後
前
後
E.医学界の禁煙志向 前
に協調する
後
0%
16%
18%
39%
54%
24%
17%
36%
20%
9%
31%
15%
57%
20%
22%
40%
14%
7%
60%
9%
10%
0%
9%
10%
2%
6% 9%
5% 10%
8%
9%
9%
11%
9%
9%
7% 3% 11%
80%
100%
非常に重要
F.周囲の人々に
不快感を与えない
多少重要
前
余り重要でない
無意味
61%
76%
後
問13.喫煙が以下の病気の原因としてどの程度影響していると思いますか
(該当する欄に○を記入)。
無回答
8% 3% 9%
11% 3% 10%
20%
0%
G.患者に対して
良い手本になる
H.医療従事者として
良い手本になる
前
50%
72%
後
前
25%
52%
後
11% 5% 9%
3% 3% 10%
13%
25%
8%
72%
7%
9%
主原因
A.膀胱がん
前
後
B.冠動脈
疾患
前
後
C.肺がん
3% 10%
14%
2%
I.子供に対して良い
手本になる
前
63%
77%
後
18%
5% 5% 9%
3% 10%
9%
2%
前
J.その他知人友人に
対して良い手本になる 後
36%
28%
16%
61%
0%
20%
22%
20%
40%
60%
80%
100%
問11.あなたの健康に対して喫煙は有害だと思いますか(喫煙しない人も、もし吸っていると
仮定して)。
確実に有害だと思う
おそらく有害ではないと思う
なんともいえない
おそらく有害だと思う
有害のはずがない
無回答
2%
前
87%
11%
0%
0%
1%
87%
後
2%
10%
0%
0%
20%
40%
60%
80%
0%
100%
問12.周囲の人々の健康に対して喫煙は有害だと思いますか。
確実に有害だと思う
おそらく有害だと思う
なんともいえない
おそらく有害ではないと思う
有害のはずがない
無回答
2%
89%
前
9%
95%
後
0%
20%
40%
0%
1%
2%
0%
60%
80%
13%
31%
13%
24%
10%
17%
22%
35%
知らない
無関係
53%
5%
23%
23%
3%
87%
E.口腔がん
前
後
53%
F.肺気腫
前
後
64%
G.喉頭がん
前
後
61%
57%
64%
22%
25%
72%
19%
73%
17%
78%
2%
H.末梢血管
疾患
前
後
I.口腔粘膜
白板症
前
後
J.胃十二指
腸潰瘍
前
後
K.新生児の
心身異常
前
後
L.歯周病
前
後
17%
28%
19%
27%
37%
21%
25%
84%
前
後
2%
3%
52%
20%
前
後
無回答
2%
3%
3%
16%
1%
4% 6%
5%
4% 6% 2%
0%
1%
15%
19%
2%
14%
13%
8% 2%
0%
1%
17%
18%
2%
14%
9%
3%
0%
1%
14%
17%
10%
9%
6%
2%
1%
15%
20%
9%
9%
3%
0%
47%
3%
18%
2%
15%
2%
0%
1%
1%
1%
1%
1%
1%
1%
23%
24%
28%
15%
48%
13%
15%
26%
18%
29%
38%
20%
11%
3%
48%
4%
25%
2%
2%
13%
3%
3%
21%
1%
46%
25%
54%
26%
19%
29%
32%
31%
65%
0%
18%
4%
21%
20%
40%
60%
18%
0%
6% 2%
1%
19%
1%
9%
3% 2%
80%
100%
0%
問14.将来、あなたが歯科衛生士として担当した患者が次に該当する場合、あなたはその患者に喫煙
に関する指導(禁煙のすすめ)や助言を、どの程度行いますか(該当する欄に○を記入)。
必ずする
A.患者が喫煙関連疾患だと診
断されたり、その症状を訴えて
いる場合
場合によってはする
余りしない
全くしない
無回答
1%
0%
80%
前
19%
91%
後
0%
7%
2%
0% 0%
0%
3%
14%
関連あり
D.慢性気管
支炎
9%
4% 3% 11%
部分的原因
0%
100%
B.患者自身がたばこについて
質問をした場合
56%
前
78%
後
C.患者が喫煙はしているが症状
もなく、喫煙関連疾患もなく、か 前
つ特に喫煙について質問しない
後
場合
0%
2%
2%
40%
21%
1%
1%
0% 0%
13%
57%
38%
20%
24%
50%
40%
60%
5%
9%
80%
1%
3%
0%
100%
問15.以下の意見についてあなたの考えをお示し下さい(該当する欄に○を記入)。
全くそのとおりだ
そうではない
まあそうだろう
無回答
A.人々に禁煙を説得するのは医療従事者 前
の責務である
後
問16.公の喫煙対策として色々な措置が行われたり、また意見が出ています。既に実現さ
れているものも含めて、以下のような意見に対してどのように考えますか(該当する欄に○
を記入)。
どちらともいえない
28%
55%
13%
60%
36%
前
21%
22%
後
41%
C.たばこを吸っている人のそばにいるのは 前
不愉快である
後
D.医療従事者たるものは喫煙しない手本
を人々に示すべきである
34%
22%
61%
78%
前
41%
10%
9%
10%
7% 3%
0%
1%
4% 0%
7% 1%
18%
22%
70%
0%
1%
13%
19%
37%
後
24%
22%
0%
E.たいていの人は主治医が禁煙を勧めて
もたばこを止めようとしない
F.医療従事者はもっと熱心に患者に対して
喫煙の説明をすべきである
前
16%
53%
31%
後
前
27%
29%
31%
28%
44%
後
G.医療従事者が真に有効な禁煙指導法を
前
知っていたならば今よりもっと活発に患者
後
の禁煙指導をするはずだ
40%
71%
20%
3% 8%
24%
17%
20%
9%
1%
0%
24%
強く反対
無回答
0%
A.たばこの有害性に関する包装表示を行 前
うべきである
後
53%
35%
73%
B.たばこの広告は全面的に禁止すべきで 前
ある
後
28%
21%
28%
36%
58%
4%
27%
12%
27%
36%
22%
29%
66%
0%
20%
22%
40%
60%
80%
1%
41%
30%
1%
1%
27%
69%
18%
62%
9%
29%
80%
0%
2%
1%
3%
0%
1%
D.密閉された公共の場所での喫煙は制限 前
すべきである
後
1%
2%
2%
1%
7%
5%
14%
0%
1%
0%
E.列車などの禁煙車両をもっと増やすべき 前
である
後
56%
25%
69%
14%
21%
0%
0%
3% 2%
6%
42%
22%
30%
1%
2%2%
61%
4%
20%
16%
G.子供に対するたばこの販売は完全に禁 前
止すべきである
後
67%
19%
7%
10%
2%
0%
1%
1%
0%
1%
68%
22%
74%
8%
20%
0%
1%
100%
J.医療専門家は禁煙を希望する人々に対 前
する支援の方法のきちんとした訓練を受け 後
るべきである
考 察
自分の禁煙の動機、または喫煙しない理由として「患者に対して良い手本となる」、「医療従事者として
良い手本となる」の項目で『非常に重要』と答えた者が講義後に20%以上増加したのは、講義の中で喫
煙の有害性や患者の禁煙支援の方法および歯科衛生士の役割について聴講したことにより、医療従事
者としての心構えを持つきっかけになったと考えられる。
特定疾患に対する喫煙の病因的寄与についての質問では、喫煙が歯周病の主原因であると回答した
者が講義後に40%増加した。これは講義を聴講したことで喫煙が歯周病のリスクファクターの1つである
という知識を習得し、今後歯科衛生士として特に理解しておくべき内容であるため関心が向いたと考えら
れる。
歯科衛生士として患者に対して喫煙関連の指導や助言を行うことについて、『必ずする』と回答した者
が講義後11%~22%増加した。また、「医療従事者はもっと熱心に患者に対して喫煙の説明をすべきで
ある」、「医療専門家は禁煙を希望する人々に対する支援の方法のきちんとした訓練を受けるべきであ
る」の項目では『全くそのとおりだ』、『強く賛成』と回答した者が約35%増加した。これらについては、ニコ
チン依存についての知識や全身疾患と喫煙との関連についての知識が、職業としての禁煙支援に関わ
るという認識を変容させた結果と考えられた。
0%
45%
35%
66%
4%
18%
9%
23%
0%
2%
1%
1%
0%
1%
1%
3%
13%
13%
6%
80%
H.病院での喫煙は、屋外の特定の喫煙場 前
所に限定すべきである
後
I.政府は喫煙抑制政策を積極的に推進す 前
べきだ
後
0%
2%
0%
0%
2%
I.患者に接する際には、不自然にならない
前
限り、医療従事者はいつでも患者に禁煙
後
を勧めるべきである
0%
0%
1%
C.たばこの自動販売機の設置はもっと制 前
限すべきだ
後
0%
12%
5%
0%
F.たばこ製品の価格は大幅に引き上げる 前
べきである
後
0%
65%
34%
1%
6% 3%
0% 1%
0%
H.禁煙を希望する患者の相談にのるもの 前
として、あなたの喫煙に関する知識は十分 後
である
反 対
0%
26%
40%
どちらでもよい
0%
5%
8%
2%
26%
65%
賛 成
1%
0%
B.たいていの人はその気になりさえすれ
ば禁煙できる
強く賛成
0%
3%
3%
2%
1%
0%
0%
41%
43%
70%
20%
40%
0%
0%
0%
1%
16%
23%
60%
0%
0%
80%
6%
0%
0%
100%
結 論
短期大学新入生に対する禁煙支援に関する講義の実施前後にKTSNDと喫煙行動と健康に関する意
識について質問紙による調査を行い、以上の結論を得た。
1.KTSND得点の著明な減少が確認され、講義によるタバコ(ニコチン)の害と依存について意識の改善
が見られた。
2.入学後間もない時期にニコチン依存についての知識や全身疾患と喫煙との関連、禁煙支援における
歯科衛生士の役割についての講義を実施することは、将来歯科衛生士として患者の禁煙行動をサポー
トするという認識を持つことに大変有用であることが分かった。
3.患者の健康をサポートする歯科衛生士となるために、口腔の疾患を予防するという認識を持続させる
には、歯周疾患予防の1つとして禁煙支援することの重要性を伝え、禁煙支援に関する講義や演習を組
み込み、継続した教育が必要であると考えられる。

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